新型インフル 超党派で予防接種法改正を 舛添厚労相
26日夕刻、厚生労働省で『新型インフルエンザワクチンに関する厚生労働大臣と有識者との意見交換会』が開かれた。特に何かが決まったということではないが、後で記すように舛添要一厚生労働大臣が趣旨として説明した「議論の内容を皆に伝える」ことに私も意義があると思うので、簡単に再現する。(川口恭)
舛添
「8月20日にインフルエンザワクチンに関する意見交換会が開かれ、明日も開かれる。今日は直接私が皆さんから話をうかがいたい。5300万人分用意したいと言ってきたのだが、ウイルスの増殖能力が予想以上に小さい。現段階では1300~1700万人がやっと。輸入のワクチンに頼らざるを得ない状況だが、副作用の問題とか、補償の問題とか、アジュバンドの問題とかある。そこで今日うかがいたいのは数の確保に関すること、ワクチン接種の優先順位に関すること、副作用の補償に関すること、打つリスクと打たないリスク、とにかく早く優先順位は決めたい」
発言は名簿順ということになって最初は岩田健太郎・神戸大教授
「ワクチンの効果と副作用との比較が分かるようになるには何年かかかる。正しいワクチン接種のあり方という科学的なものはない。求めるのは、科学的な正しさではなく、ある程度の納得というかコンセンサスでしかない。優先的に打つ対象として、小児とか妊婦とか透析患者とか医療従事者とか挙がっているけれど、どれが科学的に正しいかではない。5300万人という数字にしても何かの根拠があるわけではない。イギリスでは全国民にワクチン提供することを目標にしており、何を目標にするのかの議論が先だ。
ここで私は予防接種の運用のありかたについて提言したい。これはリスクを考えれば任意摂取のケースだろう。一方でこのワクチンは無料にすべき。日本では定期摂取は無料、任意摂取は有料という棲み分けがされているが、これは世界的にみると稀有なこと。
広報の問題も申し上げたい。任意摂取にすると勝手にしろという感じで広報がなくなるが、そうではなく、我々はテレビやラジオで新型インフルエンザワクチンに関する広告を見たことがない。地デジの広告の方が多い。国民に徹底的に知らせて、どんどん情報公開することが大切。自己責任・自己決定というのも前提は情報公開。それから季節性インフルエンザワクチンとの同時摂取がやりづらいのも改善し勧奨することが大切だろう。
この新型に関しては高齢者はリスクがあまり高いという話にはなってないが、しかし放っておいてよいかと言えばそんなことはなくて、肺炎球菌ワクチンの接種推奨を提案したい。この心は、冬の高齢者の肺炎入院を減らすことによって、新型インフルエンザ患者を収容する病床確保策として有効だと考える。今日の報道では207億円使って新しく病床をつくるという話もあるらしいが、病床をつくったところで、その担当をする医者がいないので今ある病床を有効に使うべき。肺炎球菌ワクチンに関して先般、結核感染症課長が副作用が強いというような発言をしたけれど、これは明白な誤り。
いろいろと問題はあるが考えようによっては今はチャンス。見つめ直すことで日本のワクチン政策の誤りを正していける」
続いて小林信秋・NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク専務理事
「私どもは52団体の参加しているネットワーク。3つ述べたい。ワクチンを優先的に小児の慢性疾患患者、難病患者、重度の障害者に接種してほしい。これらの子どもたちは合併症が重度化する懸念が高い。また、その家族や接する人たちに加えて、教育関係者、学校の先生方も優先すべきでないか。治療にステロイドを使っている人も、免疫賦活剤を使ってる人もいる。キメ細かい配慮とキメ細かい指導が必要だ。
次に私の子供ははしかからSSPEになった。ワクチン接種前にかかってしまって、かかったら治療のしようがなくてすぐ亡くなってしまう。私の子どもももう亡くなっているが、ワクチンの効果をもっともっと言ってほしい。ワクチンを打ってSSPEになるのは100万人に1人。何もせず、はしかからSSPEになるのは7万人に1人。明らかにワクチンの方がいい。
3番目に治験なしで輸入するというような報道があったが、それに疑問を感じた。私は難病の治療薬7つの治験・承認に関わったことがある。オーファンだからとても患者数が少なくて、場合によっては数人で治験が終了ということもあった。インフルエンザは長期間する必要はないはず。治験できるんじゃないか。この辺は素人考えなので、専門家の先生のご意見もうかがいたい」