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医療機器また欠品 腹水静脈シャント 先月から

 末期がんや肝硬変などで難治性腹水症を起こした患者の、腹腔内に溜まった腹水を静脈経由で全身に戻す医療機器の『デンバーシャント』が、メーカーの事情により先月から欠品を起こしていることが分かった。全く同じように使える代替品は国内にないという。昨年末の骨髄フィルターに続き、またも医療機器に欠品騒動が発生したことになる。背景にある日本固有の高コスト構造を是正しない限り、今後も次々に欠品が生じるだろうと見る関係者もいる。(川口恭)

 『デンバーシャント』の輸入販売元であるミハマメディカルによると、9月初旬に製造元の米ケアフュージョン社で製造工程中のポンピング試験を行なったところ亀裂の入る不具合が見つかり、製造を中止して素材メーカーと共同で原因追及を行なうことになったという。今後、原因追及と安全性評価、生産再開という手順を踏むため、出荷再開まで4~6ヵ月が見込まれる。欠品が解消するのは早くても年内ギリギリという。

 難治性腹水患者のQOL改善にはデンバーシャントを使う治療の他に、アルブミンを投与して排液(ドレナージ)する方法や、腹水を濾過濃縮して静脈に再注射する方法、肝静脈と頚静脈を短絡させる方法などがあるが、アルブミン制限のある場合や退院目的の場合などにはデンバーシャントが使われているという。現在国内に流通している製品は、経皮的に使用できるケアフュージョン社製と外科的措置を必要とする国産品の2通りがあり、前者の方が圧倒的に多い。ケアヒュージョン社製シャントを使用するのは年間600~800人ほど、うち20%程度の患者は使用しているうちにシャントが詰まって交換が必要になるという。

 この問題に関して、厚生労働省がミハマメディカルから報告を受けたのは9月7日。ミハマメディカルが各病院などに対して欠品の通告をしたのが14日。その間に厚生労働省では、米国の医療機器メーカーの業界団体『advanced medical technology association(AdvaMed)』に対して、代替品はないか問い合わせたが、現時点では見つかっていない。厚生労働省経済課の担当者は「ケース・バイ・ケースで、できる限りの対応をするようにしている。骨髄フィルターの際には米国内に代替品が存在して対応できたので今回も問い合わせてみた。もし代替品が存在したならば、速やかな承認申請を働きかけることになる」と話している。

 ただし業界関係者によれば、医療機器は1件ごとの販売数が限られている一方で、承認審査には1件1千万円以上かかることも珍しくないため、単に代替品として扱われるメーカーにその負担込みで国内参入を求めても拒否される可能性が高いという。
 
 また、この問題の根本的な背景として、先進医療機器のほとんどを輸入に頼っている現実がある。その中心が米国に拠点を置くメーカーということになるが、オバマ大統領の医療保険改革の財源として狙い撃ちされているために不採算部門整理の流れが強まっていること、円高の進行で日本に市場としての旨みが薄れていることなどから、今後日本市場から撤退する動きが続出し、欠品も相次ぐのでないかと懸念されている。

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