文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

10年度改定の「主要課題」を示す ─ 中医協会長

09年医療経済フォーラム主要課題.jpg 中央社会保険医療協議会(中医協)の遠藤久夫会長は10月10日、東京都内で「わが国の医療費の水準と診療報酬」と題して基調講演し、来年4月の診療報酬改定に向けた新たな課題として、「新薬の薬価維持特例制度」と「DPC対象病院の機能係数」の2点を挙げた。薬価を含めて医療費の配分を見直す考え方に対しては、病院団体の幹部から疑問の声が上がった。(新井裕充)

 診療報酬の決定プロセスを見直す「中医協改革」をマニフェスト(政権公約)に掲げた民主党が8月の総選挙で単独過半数を獲得したものの、今後の方向性が見えてこない。10月1日で任期切れとなった中医協委員の新しい人事案も決まらず、7日に予定されていた中医協は中止になった。
 こうした中で迎えた3連休の初日、医療経済フォーラム・ジャパンが主催した公開シンポジウム「診療報酬改定の方向性」に約300人の医療、薬事関係者が詰め掛けた。

 遠藤会長はまず、これまでの医療費抑制策に言及。国民所得の低下と国民医療費の増加との乖離を縮小することは、「身の丈に合ったものにするために必要だった」として、1980年代以降の医療費コントロールを評価した。
 しかし、2000年以降の抑制策については、「1%台の国民医療費の成長率で、国民の要求する医療を提供できるのか。私はもう無理だと思う。国民所得の伸び率と医療費の伸び率をリンケージさせる政策は、もはや限界にきていると思わざるを得ない」と述べ、医療サービスと負担との関係を国民全体で広く議論する必要があるとした。医療費の国際比較を示し、「医療の過少が問題」と断じた。

 医療費の配分については、病院と診療所との配分の見直しが次期改定でも「議論になることは間違いない」とした上で、医師や看護師、入院薬剤費など医療資源の投入量から、「診療所に有利な資源配分がされている」との認識を示した。
 また、1980年以降の病院・診療所・薬局それぞれの医療費の推移を示した上で、「医薬分業の進展に伴い、薬局が取る医療費が増えたので、その分だけ診療所と病院から流れた。実は本来、こういう薬局の影響を議論しないといけないのかもしれない」とした。

 最後に、中医協の仕組みを簡単に説明した上で、「H22年度改定の主要課題」として、「新たな課題」と「従来からの課題」を示した。
 「新たな課題」は、▽新薬の薬価維持特例制度 ▽DPC対象病院の機能係数─の2点。「従来からの課題」としては、▽勤務医の負担軽減 ▽周産期・救急医療 ▽療養病床 ▽基本診療料(再診料、入院基本料) ▽リハビリ・外科 ▽その他─を挙げた。

 この中で注目されるのは、新薬の価格を一定期間引き下げない「薬価維持特例制度」を挙げたこと。同制度の導入は、医療保険の一部が新薬の開発資金に回ることを意味する。このため、次期改定で診療所への配分を削られることを懸念する日本医師会が同制度の導入に強く反対している。

 医療費の配分について、シンポジストとして参加した日本病院会の山本修三会長は「2003年から07年にかけて、病院は1兆1000億円、診療所はわずか7000億円しか伸びていない。ところが調剤薬局は1兆7000億円という最も大きな(医療)費用が充てられている。これをどう考えるか」と遠藤会長にかみ付いた。
 これに遠藤会長は、「調剤部門のアウトソーシングが進んだ。医薬分業について確固たる意見は持っていない」などと言葉を濁したが、竹嶋副会長が「医療経済学者として財源(配分)をどう思われるか」と詰め寄る場面もあった。

1 |  2 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス