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ニュース〜医療の今がわかる

「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (1)

■ 明確な医療ビジョンが特になかった
 

 なぜ、そのようになったのか。「そのように」と申しますと、国民所得の伸び率と医療費の伸び率との間の乖離を縮小するような政策が採られたというと、1つ考えられることは、明確な医療ビジョンというものが特になかったからだと思うんですね。あったとしても、医療費の伸びを経済成長の伸びにある程度リンクさせるということを1つの目的としたような形の理屈になっているために、適正な医療費のビジョンというものを描けずに、それに伴う医療費というものがいくら掛かるかということがなかなか予測できなかった。
 あるいは提示することができなかった。であるが故に、結局のところは支払い能力に合わせて、身の丈に合わせて医療費の伸び率も縮めていくというのが社会的合意になっていった感じがするわけです。

 ただし、そのことは必ずしも一般国民が合意したかどうかというのは微妙なところでありまして、そもそも医療にはお金が掛かる。そのためには、自己負担であれ保険料であれ、あるいは公費負担であるにせよ、負担をしなければいけないわけですが、その負担とサービスの質やアクセスとの関係というものが、医療の場合ははっきりしていないというところがある。今後は。その辺が非常に重要になってくるだろう。

 なぜかと言うと、恐らく国民所得の伸び率や経済成長の伸び率は、いろいろな考え方があるでしょうが、「今後の限界成長率は1%台だ」という意見が多いです。つまり、「さほど国民所得は伸びていかないだろう」という中で、まして少子高齢化が進んでいく中で、医療費の負担というものをどうすればいいのか。1%台は少ない、ならばそれを増やすためにはどういう財源確保をするのかということを広く議論しなければいけないわけであります。

 と同時に、どういう医療体制が望ましいのかということをしっかり議論する必要があるわけです。昨今、行われました国民......、えー......、失礼......、社会......医療会議ですね。
 あそこ(社会保障国民会議)で(08年11月4日に)出された(最終報告の)概算などは、やや私は少なめだなと思っておりますが、あれは1つのあるべき(医療提供)体制を求めて、それに掛かる費用はこれぐらいだということを算定したので、発想の転換としてはよろしい。ただ、内容については、まだまだ議論があるだろうと思っております。時間の関係もありますので、その問題については、飛ばしたいと思います。


【目次】
 P2 → 国民所得と医療費の伸び率をリンケージさせる政策は限界
 P3 → 明確な医療ビジョンが特になかった
 P4 → 社会保障費の配分という点からも、医療は割を食っている
 P5 → 医療費の負担について明確な議論が十分されてこなかった

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