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〔裏・自律する医療④〕揉めた理由は請求書の書式

 出産育児一時金騒動を振り返るシリーズの4回目。(1回目2回目3回目

 前回、分娩取扱が実質的に混合診療になっていて、厚生労働省にとって目障りな存在だということを説明した。隙があれば統制下に組み込みたいと考えており、産科医の側もそれは十分に承知しているので用心してきたという歴史がある。といっても、用心してきたのは、もっぱら産科開業医だ。

 なぜ保険診療に組み込まれたくないかというと、産科開業は他科の開業に比べて初期投資がケタ違いに大きいからだ。必ずベッドが必要になるし、その分のスタッフも雇わないといけない。当然、巨額の借金を抱えてのスタートになる。借金返済の前提は、自ら価格決定できることだ。自分の意思と関係なく価格を決められてしまうことになると、怖くて開業などできなくなる。

 だったら開業なんかしなければいいと言えるかというと、現状ではとても言えない。

 日本のお産の半分は零細診療所で取り扱われている。産科医1人あたりの分娩取扱数は診療所の方が多いはずだ。開業医は個人事業主だから、労働基準法など関係なく自らの意思で24時間365日働くことも厭わない。ただし働いたことに対して見返りの報酬を得られる。同じ働き方を勤務医に求めるとどうなるか。産科医だけ他科の医師の何倍も給料をもらうというのが許されない以上、逃げ出したくなるのが人情。だから産科勤務医が全国的に不足してしまったわけだ。開業の逃げ道を塞いだ場合、産科勤務医を続けるのではなく婦人科などに転科してしまって、ますます産科医が足りなくなる。

 さて、今回の出産育児一時金が騒ぎになった原因は、資金繰りの問題もさることながら、その請求書の書式が、まるで保険診療のレセプトのように明細を細々と記載しなければならないようになっていたことも大きかった。そう、厚生労働省は分娩取扱に関する費用データを集める気満々だった。既にデータベースシステムを発注済みだったとの説もある。

 意図したか否かは別にして、産婦人科医会の幹部たちは、あれほど警戒していたはずの保険化の一里塚を越えてしまったのだ。

つづく

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