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「医療は医師や患者の勝手になるものではない」 ─ 医療基本法シンポ

■ 研修先や診療先を自由選択に任せずに計画配置
 

 これ(スライド)は、海外と日本の医師数および病床数を比較したものですが、日本では人口1000人当たりの医師数が2.1人、一番多いイタリアでは3.7人。一方、病床数は、日本は人口1000人当たり14床ありまして、アメリカ(3.2床)、イギリス(3.6人)の4倍から5倍あります。ということは、日本は病床当たりの医師数が欧米の数分の1しかいないということです。

 で、医師不足対策として、(舛添要一前厚労相が設置した)厚生労働省の検討会や民主党は、「医学部の定員を1.5倍に増やす」ということを言っています。しかし、これは果たして実現できるのかという問題があります。
 というのは、医師の養成には10年ほどかかりますし、医師の数全体を増やしただけでは、現在、非常に勤務が過酷と言われている産科や小児科、救急、外科などの診療科が敬遠されて、そういうふうな医師不足が解消されないのではないか。

 それから......、そういうことを解決するためにはまず、その医師全体を増やすだけではなくて、診療科ごと、あるいは地域ごとの医師の偏在や不均衡を直していく必要があるというふうに考えます。
 そのために、研修先や診療先を現在のような自由選択に任せるのではなくて、計画的に配置すべきだということを(読売新聞社は)提案したわけです。

 これ、具体的にどういうふうにするかと言いますと、まず、後期研修医を対象にします。診療科や地域ごとに医師の定員を設けて、計画的に配置します。
 これまでは、大学の医局が配置を行っていたのですが、それに代わる公的機関を設ける。その公的機関は自治体や医師会、大学病院、基幹病院などが参加して、都道府県に「地域医療対策協議会」というものがあるんですけど、これを母体に設立してはどうかという提案です。

 これ(スライド)が(医師配置の)イメージ図なんですけど......、これまではですね、大学の教授が「君はあっちの病院に行きなさい」「こっちの病院に行きなさい」と言っていたのですけども、それに代わって、大学や地域の病院や、あるいは自治体、医師会が共同で第三者機関をつくって医師の配置を行うというイメージです。

 これ(医師の計画配置)には反対もあります。というのは、現在、医師が自由に診療先や研修先を選べるわけですけれども、「職業選択の自由を侵害するのではないか」「強制的に配置するのはけしからん」というようなものです。

 しかし、既に欧米では医師の計画配置というのが実施されています。どのようにしているかと言いますと、例えばフランスではですね、国が地域や診療科ごとに必要な医師数を調査して、病院ごとに受け入れる研修医の数を決定しています。医学生は競争試験を受けて、成績上位の学生から順番に、希望する診療科や地域で研修を受けるというシステムです。
 ドイツでは、州の医療圏ごとにですね、人口当たりの医師の定数を設けて、定数の110%を超える地域では保険医として開業することができない。


【目次】
 P2 → 救急の"たらい回し"などが不況の原因
 P3 → 研修先や診療先を自由選択に任せずに計画配置
 P4 → 医療は医師や患者の勝手になるものではない

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