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ニュース〜医療の今がわかる

「医療は医師や患者の勝手になるものではない」 ─ 医療基本法シンポ

■ 医療は医師や患者の勝手になるものではない
 

 現在、日本は自由標榜制です。医師の免許さえ持っていれば、どこで何科の医者をやってもいいということですが、これを前提にしている限り、医師の適正配置は実現できない。なので、見直す必要があるだろう。その根本的な考え方としては、医療というのは、医師や患者の勝手になるものではなくて、「公共財なのだ」という視点で考える必要があると思っています。

 ▼ 民間病院の医師は国家公務員ではないが......。

 今、医師の自由を、やはりある程度制限しなければいけないのではないかという話なんですが、今度は患者の側にも問題があると思う。それは、救急医療で非常にたくさんの患者が押し寄せるために、救急が危機に陥っている。外来の受診回数は日本では14回ぐらい。アメリカやイギリスの3倍ぐらい多く、患者が病院を受診しているということがあります。

 ▼ 保険制度が違う他国と単純比較している。ところで、社会保障を「医療機関VS患者」という"ミンミンの関係"で考えていいものだろうか。つまり、「車を売ります」「買います」という売買契約のように、「国民VS国民」という"ミンミンの関係"でとらえることは妥当か。社会保障とは本来、「国VS国民」という関係ではなかったか。時折、「国」の責任はそっちのけで、「医療機関VS患者」という二者関係にすり替えられることがあるので注意が必要だ。
 例えば、未収金の問題。診療費(一部負担金)の未払いがあった場合、患者は医療機関に対して支払い義務を負うのだから、「債権者たる医療機関が回収の努力をせよ」と言う。医療事故の民事訴訟もそう。医師が診療ミスをしたかどうかが不明で、医療機関の「不法行為責任」や「債務不履行責任」などが争われる場合には、「医師と患者との関係」あるいは「医療機関と患者との関係」になる。
 ところが、医師の応召義務(医師法19条)の場合は違う。医師免許がある者だけに医療行為が認められているのだから、そのような医業独占の"反射的効果"として診療を拒否できないなどと説明される。つまり、医師免許を根拠にして、医師は「公的な存在」になる。ある時は「民VS民の関係」で、ある時は「公VS民の関係」に置き換えられてしまう。「公VS民の関係」でとらえると、医師の義務を導きやすい。つまり、「強制配置」を肯定する論理を組み立てやすい。
 一方、「民VS民の関係」でとらえると、医師の義務はもちろん、患者の義務を引き出すことができる。「患者も医療を壊さない努力をしよう!」という運動は、一見すると「確かにそうだ」と思いがちだが、しかし、それは社会保障の考え方ではない。国の施策や努力によって、国民が一方的に利益を享受できるのが社会保障。例えば、自衛隊に所属していない市民は、国の安全保障のために射撃の訓練を義務付けられることはない。「国民参加型の防衛」とは言わない。
 医師の労働環境を整備すること、患者の受診の機会を確保すること、その両方について「国が義務を負担する」というのが社会保障。ただ、「受益」の側面をあまり強調しすぎると、"左車線"から路肩に外れてしまう。「働けるのに怠けて働かない奴を食わしてやる必要があるのか」という反論が出る。「民VS民の関係」で考えるからだろう。「それでも国は保障すべき」というところまで、社会の意識は成熟していない気がする。日本という国は、人生で一度つまずいたら立ち直るのが難しい国かもしれない。

 で、その......、軽症の場合には、その......、保険で診ることはやめてはどうかということを私は検討いたしました。普通の自動車保険などではですね、免責というシステムがある。
 ただ、医療の場合はですね、本当に患者自身が軽症かどうかを判断できるとは限らないとか、自己負担になるのを恐れて受診いないで手遅れになる恐れもあるというので、今回の制限には盛り込まなかったんですけれども、しかし、実際には医療現場はそのような動きを始めています。

 時間外に来た患者には、「時間外加算」というのを徴収する。最大で8400円取っている病院もあります。その8400円というのは、山形大学病院なんですが、そこでは「時間外の患者が3割減った」という効果も出ています。

 ▼ ここで山形大学病院を出すところが......。詳しくは、【山形大病院は、「国策に反している国立大学」? ─ DPCヒアリング】を参照。

 最後に財源問題ですが、医療現場の疲弊の原因は、医療への投資や支出を怠ってきたことが原因ではないかと考えます。

 ▼ 私もそう思います。

 これは、各国別の医療費ですけども、日本は非常に、先進諸国の中でも少ない。一方、公共事業では、日本は非常に多く進んでいます。英米の2倍から3倍以上、ダムや橋に支出している。これを社会保障に振り向けるべきではないかという提案です。

 ▼ それはちょっと違うと思うぞ。橋や道路が整備されていたほうが、救急車の到着は早いのではないだろうか。公共工事に便乗して不当な利益を得ることが問題視されていると理解していたが......。ところで偶然かもしれないが、このシンポジウムが開催された10月18日の東京新聞朝刊に、「天下り官僚 高額報酬 独法役員 平均1664万円」という見出しが踊っていた。81の独立行政法人に常勤役員で天下りしている198人の官僚OBうち、2000万円を超えた役員が12人いたらしい。最高は日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長(元中小企業庁長官)で、2231万円とか。こういう無駄を削らずに、「給付と負担」などと言うから国民は怒るのではなかろうか。

 要するに、診療報酬をもっと引き上げるべきだ。中でも、病院に手厚くする必要があるという主張をしています。えー......、以上です!

 ▼ ............。
 
  
 
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【目次】
 P2 → 救急の"たらい回し"などが不況の原因
 P3 → 研修先や診療先を自由選択に任せずに計画配置
 P4 → 医療は医師や患者の勝手になるものではない

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