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ニュース〜医療の今がわかる

『遅れた日本の予防接種制度の現状とその対策』 医療構想・千葉シンポから


はしかや水ぼうそうなどのVPDの被害の実情
 まず無料(原則)で接種できる定期接種ワクチンのハシカ(麻疹)について話します。表1のように日本では2007年でも小生の推定では約10万人がかかっておりますが、米国では43人だけです。しかしフィンランドでは1994年からほぼゼロです。いかにフィンランドでは政府や社会が子どもたちを愛して、守っているかが分かります。学力テスト世界一も,結果としてついてきたものと思います。かかる人がいなければ死亡者は出ませんが、当然日本では死亡や脳炎の被害が続いております。

 こんな状況ですから、有料の任意接種ワクチンで防ぐおたふくかぜや水痘などでも米国とは比較にならない被害が出ているのです。話題のヒブによる細菌性髄膜炎などは、日本では年間6-800人がかかっております。かかると約5%は死亡して、約25%の人は後遺症が残り、軽く済んだように見えても、大きくなると知能低下が見られることもあるとされます。米国の子どもはこれにかかりやすく,以前は約2万人もいたのです。しかし20年前からヒブワクチンを接種しているので、2007年では22人(不明例を除く:入れても約200人)だけです。いずれにしましても、いくら医学が進歩しても、かかってからでは有効な治療法がないので、苦労してワクチンが開発されてきたのです。

子育て支援と予防接種
 子育て支援で大切なものは多くありますが、究極は子どもの命と健康と心を守るための支援体制です。この中で予防接種制度の拡充は欠かせないものです。日本では、私が望む、ご希望されるママ全員が1歳までは赤ちゃんのそばにいられる制度もありません。そのため多くのママは出産後に働かざるを得なかったり、種々の理由で社会に出ます。しかし保育所は足りません。そして生後3か月から保育所に入れると、カゼなどを感染症にかかります。カゼ程度なら良いのですが、細菌性髄膜炎の2大原因菌のヒブ菌と肺炎球菌の感染の機会も少し増えます。しかしそれを防ぐためのヒブワクチンと近い将来発売の小児用肺炎球菌のワクチンは任意接種です。接種費用も二つを合計して約7万円かかるものと思います。経済不況が進むと、任意接種を受ける人がなお減る可能性もあるのです。

 預けたお子さんが病気になると、カゼなどでもママが仕事を休む必要性が出ます。一般には年に10日くらい休むのが現状とのことです。まして伝染するハシカや水ぼうそうですと、たとえ合併症が無くても7日くらいは休まざるを得ないのです。するといくら乳児医療券で医療費が無料になっても欠勤のための収入減だけでなく、外食代など多くの間接医療費と呼ばれる費用がかさむのです。まして後遺症が出れば医療費以外に多額のお金(これも間接医療費)がかかるのです。これを一挙に解決するのが任意接種ワクチンの定期接種化(無料化)です。ご存じないでしょうが、これらのVPDは、ワクチン代の方が、接種せずにかかったときの総医療費よりも安いのです。これを費用対効果が良いと言います。子どもの健康が守られて、ご両親の支出だけでなく、日本全体の総医療費も減るのです。米国では大統領が、「予防接種を推進したおかげで、貴重な健康と命が守られて、直接医療費のみならず、間接医療費も大幅に削減できた。」と演説するのです。

 また定期接種化を前提として,短期間は健康保険で任意接種を認めると言うことも考えられます。

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