なぜ、医師を増やすの?
■ 「今の医療資源をどう有効活用できるか」 ─ 栗原副座長
[栗原敏副座長(日本私立医科大学協会副会長、東京慈恵会医科大理事長・学長)]
私は、今までのご議論の中で出てきたことですけれども、数だけの問題ではなく、やはり医師数の問題は医療制度全体にも関わってくる問題だと思うんですね。
医師の数が今まで削減されてきた経緯の中では、「医療費が非常に高騰するから」という......、その中で人口対千人1.5人ということで来たわけですけれども、診療科が細分化され、医師の偏在が問題になり、医師数が足りないということですので、この問題は単に数だけの問題ではない。
もう1つ、どういう質の医師を育成するかということも重要であると思います。これは医学教育の質ということになると思います。間口を広げて、多くの人を育成するために質の高い教員を手当てして、施設あるいは設備等が必要であるという点についても十分に配慮しなければいけない。
ですから、経済的な問題もですね。医師を1人育成するためには、(日本)私立医科大学協会の調べですと、1年間で約1700万円掛かっているんです。公費も投入されています。
▼ 6年間で1億円......。
ですから、今の医療資源をどうやって有効に活用できるかということについても十分配慮した上で、この問題を私は考えたいと思っています。
▼ 中医協の支払側や患者代表から出るような意見。医師以外の人たちに最も近い考え方かもしれない。医師の給与水準を維持したまま医師を増やせば医療費は膨らむ。
一方、医師を増やしても医療費の総枠を大きく広げないとすれば、医師の給与水準は下がる。そのため、「ワーキングプア」などと言われる歯科医を例に挙げて大幅な医師増に反対する医師もいる。医師の総数を増やすべきかは医療界内部でも意見が分かれる問題と言える。
[安西祐一郎座長(慶應義塾学事顧問)]
ありがとうございました。では黒岩委員。
【目次】
P2 → 「日本が医療分野で世界に貢献し名誉ある地位を」 ─ 鈴木副大臣
P3 → 「世界最高水準の医療を続けていくために」 ─ 安西座長
P4 → 「医師数は年々増えている」 ─ 厚労省医政局
P5 → 「医師が何人働いているんですか?」 ─ 山本委員
P6 → 「現在の医学部定員は限界に達している」 ─ 矢崎委員
P7 → 「地域医療が崩壊している」 ─ 中川委員
P8 → 「新たな医学部を立ち上げた方が早い」 ─ 今井委員
P9 → 「医師のアロケーションの問題が大きい」 ─ 片峰委員
P10 → 「今の医療資源をどう有効活用できるか」 ─ 栗原副座長
P11 → 「現在のOECD平均3.1人を超える時代が来る」 ─ 黒岩委員
P12 → 「福祉的な面の医療が不足している」 ─ 桑江委員
P13 → 「すぐ医師を増やすか医療全体から考えて」 ─ 坂本委員
P14 → 「基礎研究に入ってこられる環境づくりが大事」 ─ 妙中委員
P15 → 「医薬品の研究開発に医師が必要」 ─ 竹中委員
P16 → 「様々な病院を循環できる制度づくりを」 ─ 丹生委員
P17 → 「医師の業務拡大という広い意味で考えて」 ─ 永井委員
P18 → 「医学部の新設は到底あり得ない」 ─ 中川委員
P19 → 「既存の医学部を強化していく」 ─ 中村委員
P20 → 「精度の高い調査を目指すことが必要」 ─ 西村委員
P21 → 「粗製濫造、青天井の医師養成になってしまう」 ─ 濱口副座長
P22 → 「周辺領域と合わせて定員の議論を」 ─ 平井委員
P23 → 「モデル事業として新しい構想の医学部創設も」 ─ 矢崎委員
P24 → 「若手の研究者が非常に少なくなっている」 ─ 山本委員
P25 → 「ジグゾーパズルを全部はめ込んで絵にする」 ─ 安西座長
P26 → 「アジアの若者を日本が育成する視点を」 ─ 鈴木副大臣
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