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ニュース〜医療の今がわかる

なぜ、医師を増やすの?

■ 「既存の医学部を強化していく」 ─ 中村委員


[中村孝志委員(京都大学医学部附属病院長)]
 私の立場は国立大学の病院長としてここに出席させていただいていると思いますが、1つ、いくつかデータを見せてもらって、それから資料を少し見たんですけれども......。

 まず全般的な話として、大学の医学部の使命というのは基本的には医師を養成することと、もう1つは新しい医療をつくっていくことですね。そして地域に安全で高度な医療をするという3つの使命があるのが基本だと思うんですね。

 今、一番言われているライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)という戦略をとっていくには、新しい医療をつくるという、そのエネルギーがなければたぶん非常に......、行かないだろう。

 その一方で医師が偏在しているということで、起こってくる状況というのは、非常に難しい状況に来ている。

 それで、僕が今回見ていて、やはり(地元出身者らを特別枠で選抜する)「地域枠」、あれだけつくっていて、今回やはり地域に定着する人が生まれてきているということは、国立大学が非常に頑張って努力しているということだと思うんですね。

 それだけ増えたときに、1人の医者に1名の教官がいるという状況に対して、とてもじゃないけど補えないような状況で、ある意味では既存の定員を増やさないで頑張って医師を確保しているというのが、医師をつくっているのが国立大学。

 その中で、国際的な競争をしながらイノベーションに勝っていくということが非常に課題になってくる。僕が言いたいのは、一般的なデータで大学院生が何人増えたという話ではなくて、この5年間で、例えば一流誌に出している内科の論文が日本からどのぐらい出ているか。

 それから、特に韓国と中国からどのぐらい出ていて、日本はどの位置に来ているか。大学のランキングの中で、日本の大学はどこも落とされている。「評価の仕方に問題がある」と批判しているんですけれども、医療に関する限り、非常に戦略的にやられている。

 そういう中で、医師不足ということで、20名とか10名増やしたらいいという中で、僕は地域の現状に関してはキャリアプランニングで若手の医師が自分がどんな医師になっていくか見えなければ、みんな都会で安全で人が多い場所に集まるのは当然で......。

 地域に行って、そこで自分が次のキャリアとして、例えば専門医を地域に行っても取っていけるようなシステムを見せてあげて、「地域枠」として採ってきて、自分が生まれた所で医者をしていきたいという、モチベーションが働くような形のプランをつくらない限り、そこに行かない。

 滋賀医大などを見ていると少しそういう芽が出てきていて、その辺の、既存の医学部が地道に育てることがやっぱり一番早いことではないかと思っております。

 先ほど、中川委員(日医副会長)がライフ・イノベーションと切り離すという見方......。それは確かに1つの見方として必要だと思うんですが、今の大学が置かれている環境の難しさというのは、医師養成と、新しく医療をつくっていく研究的な課題と、両方を解決しなければ、片方だけ解決したら日本の将来が良くなるということはない。

 そういう意味で、今の大学が置かれている状況が分かるようなデータが欲しいということと......。

 この10年、15年間に新しい講座ができているんですが、ほとんどの国立大学は人を増やさないで回している。それから、自分の所で雇うという形でやってきている。それで諸外国に対抗しながらやっていく。

 それで規模としては大きくなれないから臨床治験、特に臨床試験をするためには大学の規模が小さいので、非常に金が掛かる。(国際)共同治験ができないような状況。そういう意味で、非常に今、置かれている状況が難しい。

 そういうことを横に置いておいて、今の置かれている状況をトータルに見て、国立大学、私学も当然ですが、既存の医学部を強化していくことで学生の定員をもう少し増やしていくことも考えていく。

 一番重要なのは、若い人たちがキャリアプランを見えるようにしてあげないと、やはり地域には行かないだろうと思っています。それは大学病院と地域の病院とのネットワーク、地域のネットワークをつくっていく。
 地域と大学が連携しながら、イノベーションを含めてアトラクティブにしていくことが重要なのではないかなと思います。

[安西祐一郎座長(慶應義塾学事顧問)]
 ありがとうございます。それでは西村委員。


【目次】
 P2 → 「日本が医療分野で世界に貢献し名誉ある地位を」 ─ 鈴木副大臣
 P3 → 「世界最高水準の医療を続けていくために」 ─ 安西座長
 P4 → 「医師数は年々増えている」 ─ 厚労省医政局
 P5 → 「医師が何人働いているんですか?」 ─ 山本委員
 P6 → 「現在の医学部定員は限界に達している」 ─ 矢崎委員
 P7 → 「地域医療が崩壊している」 ─ 中川委員
 P8 → 「新たな医学部を立ち上げた方が早い」 ─ 今井委員
 P9 → 「医師のアロケーションの問題が大きい」 ─ 片峰委員
 P10 → 「今の医療資源をどう有効活用できるか」 ─ 栗原副座長
 P11 → 「現在のOECD平均3.1人を超える時代が来る」 ─ 黒岩委員
 P12 → 「福祉的な面の医療が不足している」 ─ 桑江委員
 P13 → 「すぐ医師を増やすか医療全体から考えて」 ─ 坂本委員
 P14 → 「基礎研究に入ってこられる環境づくりが大事」 ─ 妙中委員
 P15 → 「医薬品の研究開発に医師が必要」 ─ 竹中委員
 P16 → 「様々な病院を循環できる制度づくりを」 ─ 丹生委員
 P17 → 「医師の業務拡大という広い意味で考えて」 ─ 永井委員
 P18 → 「医学部の新設は到底あり得ない」 ─ 中川委員
 P19 → 「既存の医学部を強化していく」 ─ 中村委員
 P20 → 「精度の高い調査を目指すことが必要」 ─ 西村委員
 P21 → 「粗製濫造、青天井の医師養成になってしまう」 ─ 濱口副座長
 P22 → 「周辺領域と合わせて定員の議論を」 ─ 平井委員
 P23 → 「モデル事業として新しい構想の医学部創設も」 ─ 矢崎委員
 P24 → 「若手の研究者が非常に少なくなっている」 ─ 山本委員
 P25 → 「ジグゾーパズルを全部はめ込んで絵にする」 ─ 安西座長
 P26 → 「アジアの若者を日本が育成する視点を」 ─ 鈴木副大臣


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