なぜ、医師を増やすの?
■ 「新たな医学部を立ち上げた方が早い」 ─ 今井委員
[今井浩三委員(東京大学医科学研究所附属病院長)]
私は、どういうポイントで話を進めるかということが非常に重要だと思います。地域医療が直ちに壊れていくという現状を十分認識した上で、全体の枠組みについても少し発言させていただきたい。
まず、地域医療を担う医者が重要であることはもう......、現場の医者ですから間違いないんですが、その他に、今後の医療を担うような、研究をするような方も非常に重要であると考えております。
ここ(文科省の資料)にはちょっとしか出ていなかったですが、非常に、我が国では(研究者が)枯渇しつつあるという現状がございます。これを考慮に入れないで議論できないと思います。
それからもう1つ、行政に携わる方とかですね、そういう、ちょっと、一見、(地域医療の現場に)関係ないように見えるけれども、我が国の医療を考える場合に非常に重要な役割を担っている方のことも十分に考慮に入れながら考えていく必要がある。
▼ 再生医療などの基礎研究に携わる医師のほか、死因究明に必要な病理医や法医学者の不足も問題になっている。
なかんずくですね、現場で困っている地域医療について、全体のプロポーションを見ながらですね、しかも成熟した、ある程度成熟した国としての医療の体制をきちんと整えていくためには、やはり展望を持ちながら、地域医療に従事する人たちを......。
今、とても足りないので、十分に増やしていくことが大事だろうと思います。
今、既存の医学部に何人かずつ増やしていますけれども、これは先ほど矢崎委員(国立病院機構理事長)からも出ましたが、教員も増えていなければ施設もないという状況の中でですね、そこを現場に強いるというのはやはり限界があると思います。
▼ 教員を増やすために近隣の病院から即戦力の医師が引っ張られると、地域医療の崩壊がますます加速するという批判がある。
先ほど、私が申し上げたような観点に立てばですね、新たな、むしろ新たな医学部として立ち上げていく方がずっと早いのではないかと考えております。以上です。
▼ 医学部の新設について、ネット上では「早稲田か」「青山学院はどうか」などと様々な憶測が飛び交っている。国内の私大に医学部を新設する場合、学生数が多く、かつブランド力のある病院が選ばれることになるだろう。
ところで、なぜ早稲田に医学部がないのか。日本医師会の会長として強い政治力を持っていた故武見太郎氏が慶應出身だったからという説もある。その真偽はさておき、既存の大学に医学部を創設する場合には、「何大学の傘下に入るのか」という問題がつきまとう。
そのせいか、新たに大学をつくってしまえ、あるいは海外の有名大学を誘致してしまえ、という考え方も一部にある。今年8月、マレーシアの英字紙「ニュー・ストレーツ・ タイムズ」が伝えたところによると、医療分野の教育や研究で有名な米ジョンズ・ホプキンス大学がマレーシアにキャンパスを開設するらしい。
日本でも、医師不足が深刻な自治体が独自に「エール大学○○分校」などを誘致するという大胆な構想もあり得るが、この検討会でそこまで話が展開するかはまだ見えない。
いずれにしても、医師を増やす目的として、医師の偏在解消や病院勤務医の負担軽減を中心に考えるのか、それとも研究者らの増員による「ライフ・イノベーション」(医療・介護分野革新)の推進や国際競争力の強化に重点を置くのか、議論の焦点を絞る必要があるだろう。少なくとも、医学部の定員増や新設で喫緊の課題に対応できると思っている委員はいないはず。
[安西祐一郎座長(慶應義塾学事顧問)]
ありがとうございます。それでは片峰委員、どうぞ。
【目次】
P2 → 「日本が医療分野で世界に貢献し名誉ある地位を」 ─ 鈴木副大臣
P3 → 「世界最高水準の医療を続けていくために」 ─ 安西座長
P4 → 「医師数は年々増えている」 ─ 厚労省医政局
P5 → 「医師が何人働いているんですか?」 ─ 山本委員
P6 → 「現在の医学部定員は限界に達している」 ─ 矢崎委員
P7 → 「地域医療が崩壊している」 ─ 中川委員
P8 → 「新たな医学部を立ち上げた方が早い」 ─ 今井委員
P9 → 「医師のアロケーションの問題が大きい」 ─ 片峰委員
P10 → 「今の医療資源をどう有効活用できるか」 ─ 栗原副座長
P11 → 「現在のOECD平均3.1人を超える時代が来る」 ─ 黒岩委員
P12 → 「福祉的な面の医療が不足している」 ─ 桑江委員
P13 → 「すぐ医師を増やすか医療全体から考えて」 ─ 坂本委員
P14 → 「基礎研究に入ってこられる環境づくりが大事」 ─ 妙中委員
P15 → 「医薬品の研究開発に医師が必要」 ─ 竹中委員
P16 → 「様々な病院を循環できる制度づくりを」 ─ 丹生委員
P17 → 「医師の業務拡大という広い意味で考えて」 ─ 永井委員
P18 → 「医学部の新設は到底あり得ない」 ─ 中川委員
P19 → 「既存の医学部を強化していく」 ─ 中村委員
P20 → 「精度の高い調査を目指すことが必要」 ─ 西村委員
P21 → 「粗製濫造、青天井の医師養成になってしまう」 ─ 濱口副座長
P22 → 「周辺領域と合わせて定員の議論を」 ─ 平井委員
P23 → 「モデル事業として新しい構想の医学部創設も」 ─ 矢崎委員
P24 → 「若手の研究者が非常に少なくなっている」 ─ 山本委員
P25 → 「ジグゾーパズルを全部はめ込んで絵にする」 ─ 安西座長
P26 → 「アジアの若者を日本が育成する視点を」 ─ 鈴木副大臣
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