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ニュース〜医療の今がわかる

なぜ、医師を増やすの?

■ 「現在のOECD平均3.1人を超える時代が来る」 ─ 黒岩委員


[黒岩義之委員(全国医学部長病院長会議会長、横浜市立大学医学部長)]
 全国医学部長病院長会議の黒岩でございます。この検討会におきます重要なテーマとして2つあると思います。
 1つは、地域の医療崩壊に対してどういう対策を立てられるかという問題。もう1つは、医学部の入学定員の適正数はどこら辺にあるかという、この2点かと思います。

 まず、医療崩壊の問題は特に地域の公的病院を中心とした医師不足、それをいかに解消するかという問題。これについては、医師の数の問題だけではなくて、コメディカルの問題、地域格差の問題、あるいは診療科間の格差の問題、あるいは勤務医の労働環境の問題など、そういうものを総合的に考えて、広い視野に立った総合的な対策が必要ではないかと考えております。

 それから、適正な入学定員のことに関しましては、入学する学生の質の問題、それから医師数がどれだけになるかという問題、それから地域にどれだけ定着するかという問題があるかと思います。 

 まず医師数の問題については、人口千人当たり2.1人でございますが、2008年以降の1221名の定員増によりまして、人口千人当たりの医師数は(人口減少が深刻化する)2032年には3人、2040年には3.4人、2050年には3.9人になると推定されております。

 現在のOECD加盟国の平均値3.1人を超える時代が来るであろうということ。これについては、慎重な検討が必要かと思います。

 ▼ ごもっともな意見に聞こえるが......。

 それから、医師の質に関してでございますが、1960年代は医師が3000人で18歳人口が200万人でございましたので、18歳人口500人ないし700人に1人が医学部に入ってきたわけでございますが、2010年現在で18歳人口が122万人、入学定員が8846人ですので、18歳人口138人に1人が医師になるという時代になってきています。

 今後も18歳人口が減少していきますので、いずれは18歳人口100人に1人が医学部に入学するということになりますので、学生の質の確保と言いますか、それが......。

 ▼ この検討会の趣旨に逆行する意見だからか、他の委員らは雑談している。

 先ほど、鈴木寛副大臣も言われましたように、WHOで世界最高水準と自負していい、そういう医療水準を持っているわけですが、国民の利益、安心、安全ということを考えますと、医師の数だけではなくて、質の確保ということが非常に重要であるということ。

 ▼ 医師も色々......、大学も色々あるわけで......。弁護士の増員をめぐる議論に似ている。

 そういうことで、今後、将来、現在の入学定員8846人をそのまま維持できるのか。場合によっては3000人以下に大幅に削減する必要があるような、そういう時代が来るかもしれないという観点に立って、総合的な視野に立って考えていくべきと思っております。

 ▼ やや控えめな発言。今年2月、大学医学部で作る全国医学部長病院長会議(当時の会長=小川彰・岩手医大学長)は医学部の新設に反対する請願を民主党や関係省庁に提出した。30-40歳代の病院勤務医が教員になると、病院の医師不足が加速することなどを理由に挙げている。黒岩委員の発言を聴く限り、医学部新設に反対するというよりも、医師の増員それ自体に反対しているように聞こえる。

[安西祐一郎座長(慶應義塾学事顧問)]
 どうもありがとうございました。桑江委員、お願いします。


【目次】
 P2 → 「日本が医療分野で世界に貢献し名誉ある地位を」 ─ 鈴木副大臣
 P3 → 「世界最高水準の医療を続けていくために」 ─ 安西座長
 P4 → 「医師数は年々増えている」 ─ 厚労省医政局
 P5 → 「医師が何人働いているんですか?」 ─ 山本委員
 P6 → 「現在の医学部定員は限界に達している」 ─ 矢崎委員
 P7 → 「地域医療が崩壊している」 ─ 中川委員
 P8 → 「新たな医学部を立ち上げた方が早い」 ─ 今井委員
 P9 → 「医師のアロケーションの問題が大きい」 ─ 片峰委員
 P10 → 「今の医療資源をどう有効活用できるか」 ─ 栗原副座長
 P11 → 「現在のOECD平均3.1人を超える時代が来る」 ─ 黒岩委員
 P12 → 「福祉的な面の医療が不足している」 ─ 桑江委員
 P13 → 「すぐ医師を増やすか医療全体から考えて」 ─ 坂本委員
 P14 → 「基礎研究に入ってこられる環境づくりが大事」 ─ 妙中委員
 P15 → 「医薬品の研究開発に医師が必要」 ─ 竹中委員
 P16 → 「様々な病院を循環できる制度づくりを」 ─ 丹生委員
 P17 → 「医師の業務拡大という広い意味で考えて」 ─ 永井委員
 P18 → 「医学部の新設は到底あり得ない」 ─ 中川委員
 P19 → 「既存の医学部を強化していく」 ─ 中村委員
 P20 → 「精度の高い調査を目指すことが必要」 ─ 西村委員
 P21 → 「粗製濫造、青天井の医師養成になってしまう」 ─ 濱口副座長
 P22 → 「周辺領域と合わせて定員の議論を」 ─ 平井委員
 P23 → 「モデル事業として新しい構想の医学部創設も」 ─ 矢崎委員
 P24 → 「若手の研究者が非常に少なくなっている」 ─ 山本委員
 P25 → 「ジグゾーパズルを全部はめ込んで絵にする」 ─ 安西座長
 P26 → 「アジアの若者を日本が育成する視点を」 ─ 鈴木副大臣

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