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ニュース〜医療の今がわかる

臨床研修検討会6その2

議事録的抜粋再現。

塩谷文部科学大臣(よく聴き取れず)
「文部科学省としては卒然の教育について、これからしっかり自治体や大学病院とも連携しながら、能力・志をしっかり持った医師を育てていきたい。と同時に地域医療の最後の砦である大学病院のあり方を改めてしっかり確立して参りたい」

舛添厚生労働大臣
「私自身、医療関係とか病院関係の人に会う度に新しい臨床研修制度をどう思うか尋ねている。この前の日曜日も和歌山の県立医大に行って来た。あそこは頑張っていて研修医も多く残っているようだ。そういう所で話を聴いた結論として、制度のいい所は残していく、広くいろいろ学ぶのは悪いことではない、ただ逆に最初から行く所が決まっている場合には、どうしても熱心さに欠ける。いい面は残しつつ、しかし様々なご要望に対して現実的なのは、どこまで弾力的にできるのかが一つの問題と思っている。塩谷大臣からもご案内あった通り、与党内でも一つ検討会ができている。私どものビジョンでも今年は700人養成数を増やす政策転換を行った。長期的にはそれでいいにしても、短期的なものをどうするのか、そういう中で臨床研修制度も問題があるのでないかというご意見が出ている。直ちに2年を1年にして一気に8千人増えるから素晴らしいとはならない。私どもが何を考えているのか、誤解は誤解と伝え、お伝えする責務があると思っている。今回は大きな方向性について取りまとめをいただいて、今後さらに細かに具体的に詰めていくことになる。その大きな方向性の中で、今日は何か出るとは思うが、それをさらに良くするために遠慮なくご意見をいただければ」

ということで議論開始。
福井
「選択必修が1~2となっているが、最低1なのか2を強く勧めるのか。非常に曖昧な書き方だ。状況認識の(2)で1カ月単位の研修が続くことが研修医のモチベーションを損なったりと書いてあるが、それが正しいのなら地域医療の期間が1カ月でいいというのは論理矛盾だ。選択必修の期間が指定されていないのもおかしい。それからP5の上から3つ目の○。診療科の偏在と書いてある点。最初の会議でも申し上げたが、専門医の必要数を算定する所から始めないと何が偏在か分からない。必要な専門医数の算定に基づいてという文言を入れていただけないか」

高久
「地域医療は1カ月以上となっている」

福井
「しかし、それでは1カ月を許すということになる」

高久
「その通り」


大熊
「プログラムの弾力化のところ。選択必修の1~2は数として少なすぎる。小児科は救急で取れるというが、一般に救急には小児は来ない。少なくとも2以上とすべきでないか。小さい子供が肉をイヤ、野菜をイヤというのをよしよしと聞いていたら良い子に育たない。それと同じだ。
それから精神科は無理に入院患者を受け持たせるより外来の方が後で役に立つ。
地域医療研修は言い方があいまいだ。地域医療だけだと皆さん思い描いているイメージが異なる。単に過疎地の小さな医療機関へ行ったらよいのかといったら違う。在宅医療を担う医療機関と入れていただきたい。
第三者評価を誰がやるのか問題。実は地域厚生局には臨床研修専門官という人が存在する」

高久
「第三者的な評価は、今は臨床研修評価機構はやっているだろう」

大熊
「フィードバックという文言があったので」

永井
「私自身スーパーローテートの臨床研修を経験して良かったと思っている。私の病院の研修医も良かったと言っている。しかし何事にも光と影があり、地域にある県立病院には医師不足の現状がある。そこで、今回の改革は誰のため何のためなのか確認しておきたい。その意味でP5に、大学病院等による医師派遣機能を地域の関係者の意向が十分反映された開かれた、という文言が加わったことは非常に良かった。地域に開かれたという中には大学だけで決めないで、行政とか地域の方々の意見も聴くんだという意味で理解した」

高久
「まさにその通り」


嘉山
「資料を出したので、それを見ながら。我々が考えなければいけないのは病院の利権だとか、ある団体としての思惑ではなくて、患者さん中心の教育をしなければいけないということ、それが大きな原動力だ。今回の卒後研修制度は多分ある理念で作った。良かった面はある。しかしその結果、大熊先生の言うように日本の医者全員が在宅医療しかできなくてよいのかというような問題があったので今の問題がいろいろ出てきている。今回の制度で何が一番問題かと言えば、プライマリケアだけを全員に強制してしまったために科の偏在とか地方の医師不足が顕在化してしまった。この制度のために、同時に医学研究も崩壊している。プライマリケアをどこかでやらければならないことは間違いないが、ある面からだけ見ると、とんでもない影が出ちゃう。影が出ないように色々な方向からやっていかないといけない。在宅医療だけしかできない医者が集まっちゃっても困る。
NEJMというのは、そこに論文が載ると明日から医療のスタンダードが変わるような雑誌だが、06年は日本からの採択がゼロだ。多面的に見ないと他のものを壊してしまう。高度医療について、難易度が高い医療はほとんど大学でやっている。これは事実だ。大学のエゴではなく、たしかに在宅医療も必要ではあるが、その一方で難易度の高いものも必要。隠れたものを何とか直さないと。
医師の派遣というが、大学は派遣はしていない。適正配置と言ってほしい。派遣だと逮捕されちゃう。国民のため、ある病院のエゴではなく、患者さんのため。あえて全ての利権を考えず、医学教育と日本の医療の質を向上させて適正に医師を配置する、そういうことがないので、そこを修正するようなことをやっていかなければならない。このままでいくと日本の医療は難しいことを全くできなくなる。
私の提案は、プライマリケアは学部でやってしまう。こういう方向でこの委員会をまとめていただければ。
今は両大臣もいるので、ここから先は与党、国にお願いしたい。医療と教育にもっと抜本的にお金を使っていただきたい。奨学金も欧米と違って日本はローン。返さないといけない。そういうのを勘案しながらディスカッションしないと、ただ単にプライマリケアが大事だけでは、日本の医療はよくならない。医療が発展すれば雇用が生まれ、国民が安心安全を実感すれば内需の拡大にもつながる。その観点からもう医療と教育にしっかりお金をつけてほしい。
福井先生は1カ月ではモチベーションが上がらないと言うが、行く気がない所を1カ月交代だからやる気が出ないだけで、行く気がある所なら1カ月でも十分に研修効果は上がる。その辺の文言はこのままでよいのでは」

西澤
「研究者数が平成16年から減っているのは他の要因もあるんでないか。誤解があるようだが、2年間でプライマリケア医療をする医師を育てようとしているわけではない。専門医になるとしても、2年間はやっておいた方がよいだろうということで、地方へ行く医師を育てようとしているわけではない。スーパーローテートは成果を上げているのだから、病院の裁量でスーパーローテートを残してもよいという書き方ではなくて、スーパーローテートが原則なんだけれど柔軟に組んでもよいというように順序を入れ替えてもらった方がよい」

高久
「地域医療研修をちゃんとやっている所と保健所へ行って適当に済ませている所がある問題は、矢崎先生が地域医療研究会を立ち上げているので、またその結果を教えてほしい」


齋藤
「制度見直しに当たっての考え方の医師の地域偏在への対応だが、これは後期研修まで視野に入れないと直らない。現在の専門医研修・後期研修を受ける病院は大都市に集中している。幸いここには全国医学部長病院長会議の重要メンバーがそろっている。研修医の2年間を地域に張り付けても、その後で東京とか大阪とかへ行ってしまったら具合がよくない。大学間で調整して1つの大学が後期研修医を取り過ぎないようにしてもらいたい」

武藤
「細かい話だが、必修の内科と救急だけだと1年目が3カ月余る。随分とフリーな感じがする。ここら辺きちんとした方がよいのでないか。それから以前に小さな病院を外すべきかどうかという議論が行われたことがあるが、たしかに全体をやるのは無理があるが、ある分野に突出した小さな病院というのはある。規模ではなくクオリティを考慮するということもきちんと書いておいていただきたい」

高久
「2年目にやってもいいけど原則として1年目ということ」

小川(岩手)
「プログラムの弾力化という目玉があるのだから、あまり細かい所を決めると、また、元と同じことになってしまう。今回は大変難しいところをうまくまとめてくださったと思う。また学部長病院長会議は頑張れと心強いご指摘をいただいた。申し上げたいのは、何か医師の研修に対して幻想を持っている方がいるのでないかということだ。2年間研修すれば一生使える医師に育つ、それを担保できる制度にしようと思っている方がいる。そんなことは絶対になくて生涯学習しかない。卒前、卒後、そのまた後と全体を根本的に入れて行かないと所詮は片手間の話になる。医師の生涯教育の一部という視点が絶対に必要だ」

能勢
「この問題は医学教育から始まっているのに、卒後の1年2年だけ抽出されると全体の流れの中で落ち着かない。医学教育のコアカリキュラムも大議論があったし、臨床実習に各診療科を回るようなことをどこの大学でもやっている。何科が大切とか言っても仕方ない。ただコアカリキュラムというものを作って、これだけは医学教育の中で身につけようということで、ベースになる知識をある程度全国的に定めて、それをCBTなりOSCEで確認するということ。OSCEなんかは昔の面接とは雲泥の差の内容のものになっている。大学の中でもそれ位のレベルのことをやっているのだから、それを踏まえて医師免許を取った後にやる臨床研修というものは、臨床実習との兼ね合いを考えながらやっていくことで、一番よい医師を養成することになるだろう。
それから医師の養成と適正配置に関連して、先ほど基礎研究者がいなくなったという発表があったけれど、それは臨床研修が始まる前からの根本的な問題。医学部の大学院が軒並み定員割れしている。いずれにしても適正配置は、医局制度がダメだということになれば今のような形でオープンにして地域の方々にも参加していただいて、最後は個人の意思を無視してでも命令で配置するのというのが何となく今の流れのようだが、今の制度の中ではそれは無理だ。
医師だけが田舎に行かなければならないという雰囲気が出てくるのだけれど、我々のように地方大学にいると、町全体が過疎なんで、過疎対策はいろいろあるけれど、ある意味人がいなくなればいい。そうしたら医師も要らない。そういう議論なのか、それとも今の日本の町を維持するのかはある。その中に、医療という限られた領域も含まれる。だから、この厚労省と文科省のフレームワーク、一貫して行政を考えるというのは大変うれしいことで、今まではどうしても途中で話が途切れる。だからこの機会に、ここに出てきている1つ1つについて具体的に何らかの審議会なり検討会をもって議論されることを期待する。今後はこれをどうやって充実化するのかという議論が別のところでされることを期待している。
それから大学に対する研修医の手当を是非上げていただきたい。そこが最大のネックだ」

高久
「研修医もそうだが、指導医への手当もだ」


能勢
「指導医を誰が養成するのかも考えないといかん。大学は医師の派遣をずっとやって来た。しかし今は大学以外の指定されている研修指定病院が派遣機能を持っているかというとそれはない。受け取るだけで派遣できない。自分の所で抱え込んでしまわないで、大学病院でも研修指定病院でもいいが、やはり配置機能、大から小へという考え方はなければいかんのでないかと思っている。どのようにしてやるかというのは、また議論いただければ」

高久
「ちょっと事務局に。5頁の一番上のところ、共用試験はもう標準化している」

文部科学省
「共用試験の合格水準にバラツキがある所をどうするかということ」

嘉山
「CBTの合格水準を標準化するということは米国のステップ2と同等のものにするということか。それは非常に大きな問題だ」

文部科学省
「具体的には今大学とも相談し、また共用試験機構が研究している。いずれにしても、この若干のバラツキをどう考えて行くか、もう少し収束させるべきじゃないかという意見があったので書き込んだ。ただし、それを国が認定するかどうかは先の議論」

嘉山
「文言として書き込まれるなら、リジッドにならない方がよい。この文言なら、座学が終わって、これに合格したら患者さんを診察させるよという国家資格になるということだ」

文部科学省
「ステップ2と同じにするという所まで決めているわけではないし、そこまでやれとこの検討会で提言されているとも考えていない。この部分をこれから検討すべきという提言だと思っている」

嘉山
「だったら文章をルーズにしないと。国家統制をあんまりしちゃうと、大臣が懸念していたように教育の中に入り込むと色々なことが起きる。その辺は今までの我々も反省すべき点。
地域医療枠の一層の拡大という文言だが、ウチはそういうのを一切やってない。しかし一番残っている。というのが、地域枠をやると利権になっちゃって質が間違いなく下がる。地域枠はイージーなやり方に見えるが、後々の患者さんのことを考えると、質を担保しなかったということで決していいことではない。各地域に任せるという表現でよいのではないか。その次の科の偏在の問題は、舛添ビジョンの中でインセンティブを入れて偏在を修正するということになっていたので、その点をもう少し具体的に書いていただけたら」


矢崎
「この研修制度ができあがった時、1万6千人分の人件費を確保して処遇することができたので、もの凄く大きな費用がかかった。それができたのは世論の力が大きかったと思う。よい医師を育てるためという世論の後押しもあって、政治家の皆さんが相当の支出を認めてくださって具体化した。プログラムの弾力化がメインの見直しとして必要であることは承知しているが、質の担保を伴うものでもなければならない。その意味で、第三者的に評価する対象として、受け入れ病院やプログラムだけでなく到達目標をしっかり評価するシステムもないといかん。2本立てで、一つはシステムも含めたプログラム全体、もう一つは個々の研修医を評価するようなシステムが要るのでないか」

高久
「文言の中に入ってるんじゃないか」

矢崎
「おっしゃる通りだ。ちょっと読み取りづらかった」

舛添
「嘉山先生の地域枠の件。和歌山県立医大は地域枠はあるけれど、募集は全国からかけているという話だった。どういう工夫をするかにも関わるのでないか」

嘉山
「私も和歌山県の例は承知している。その県からと限ると質が下がる。全国から募集すれば、それはない」

能勢
「関連で。我々は地域枠をもっと認めてくれとお願いしている。それは大学や地域によっても違うのだろうが、地元の行政が自分たちの医療をどれだけ確保できるかということで自活していこう、そのために大学の力を借りようということで。それが定員内か定員外かという議論はあるだろうし、奨学金を与えたり与えなかったりいろいろな考え方もあるだろうが、どんな形の地域枠でもいい、地域に定着する方法を考えたいということ。ぜひ続けていただきたい。レベルに関しては、医師国家試験をパスすればいいのだから、それで担保されると考えている」

吉村
「大熊委員の選択必修科目を2科目以上に増やせという意見だが、臨床研修は医師養成の1プロセスに過ぎず、それだけで生涯を通して働けるようになるわけではない。私の経験から言っても、医師免許を取ったばかりの時が一番モチベーションが高い。2年間ぐるぐる回っているうちにそれが落ちてきちゃうのは問題なので、だからあまり増やしちゃわない方がいいと思う。
内科は臓器別の内科じゃなくて全身。救急も小児を含めた1次。地域医療研修はコモンディスイーズ。
施設の条件に関しては、後期の研修まで一貫してできないといけないと思う。初期研修はたくさん取っておいて3年目には絞るというのがよくあるが、3年目で放っぽり出されてしまうと中途半端で心配になる。ぜひ一貫して後期研修を受けられるようにしてほしい。そのために、ある程度の規模は必要だと思う。ただ総合医の養成は必ずしも大病院である必要はなく200床から300床程度でしっかりしたプログラムを持っている所でも構わないだろう。
もう一つ、大学の研修医だけ見ていると厳しいけれど3年経ち5年経ちするとスタッフとして大学をまた支えてくれるわけで、そこが枯渇している、それに伴って中堅どころの負担も増しているという関係にある。大学の研修医の充実ということも大きなポイントだろう」

大熊
「この2年間だけで一人前になれると誤解している人が言われたが、もちろんそんなことを思っているわけではない。最初から専門だけだと鉛筆のように細くてグラグラになっちゃうから、土台を固めようということなんで。それから在宅はコモンディスイーズだということもおっしゃったが、コモンディスイーズのことではなくて、先生方は古いから経験ないと思うが、患者さんの家にお客さんとして行く、それを学ぶことに意味がある。そもそもコモンディスイーズを学ぶのであれば大規模な病院より小規模な方が向いてたりする。細かく分かれちゃってたりするより。くれぐれも大規模ということが条件にならないように。
それから派遣じゃない配置だということだったけれど配置にしても強制的に置くこと。いまだにお金のやりとりがあるというような話も聞く。育てた人を外へ出す病院は大学病院等と書くのでなく、大学病院及び研修指定病院と書き改めてほしい」

舛添
「そろそろ行かなければならないので、今までの感想と今後のことについて。塩谷大臣はもういないけれど、最終的には出てきたものを両省で実行に移していくことになるので、よろしく頼むとのことだった。とりあえず感想。私が大学で教えてた時に、教養過程というのをやるんだけれど、今日のような議論を聴いていると、教養過程がいいのか悪いのかという議論を聴いているようだ。教養過程なんか無駄だ最初から専門過程をやった方がいいんじゃないかと思いながら、しかし法律家になるにしても、歴史を知り自然科学をやっておくのは意味があるというような。なかなか結論が出にくい話だなと改めて思う。それで、せっかく両省でやっているので、今回はあくまでも臨床研修の見直しに過ぎないけれど、どういうお医者を育てるのかという大きな理念の中に是非位置づけていただけると、これをきっかけに今後も卒前卒後を通したものが考えられる。両省でバラバラにやっているのでは国民のためにならない。連携をさらに強めていきたい。介護分野なんかは経済産業省と一緒に研究していることもあって政府全体でやるように省庁の壁をなくしていきたい。そういう思いをまず申し上げておきたい。
それからご意見を聴いていると例えば選択必修1個がいいのか2個がいいのか、正直どちらが正しいか判断しかねる。立場によっても違うと思う。大きな方向付けを出して、これについてはさらに議論が必要だというような形で残していただいたら、そういう形でおやりになったらいかがかと思う。がんじがらめにするんじゃなくて、こういう意見もあった、こういう意見もあったというような形の少数意見的なものも書き留めておいていただければ。
最大の問題は政府が国家が枠を決める、悪い言葉で言うと強制する、それが許されるとすると、どういう理念とどういう説得があるのかということがあるのだろう。日本国憲法では職業選択の自由もあるし住居を選ぶ自由もある。何科の医師になろうが、鳥取がイヤで東京に来るという人を止めることはできない。だがしかし今の医療崩壊という現状を見た時に公共の福祉の観点から、こういう所まではいいだろうと。例えば地域枠なんか。例えば地域のタックスペイヤーが出す奨学金だったら地域に還元してもらうというような話なら成り立たないか。私も基本的に強制は避けたいという気持ちはあるが、どこまでなら国民が納得できるのか、最終的には国民のコンセンサスを得る必要がある。非常に難しい問題はあるが、できればこの感想めいたことを全て満たすようなおまとめがいただけるとありがたい。高望みが過ぎるかもしれないが。
あとは高久先生以下、皆さんにお任せする。ただ今回こういう形でご議論いただいたことでメディアもきちっと報じてくれたし、国民のこの問題に関する理解が随分進んだと思う。一定以上の年齢の方々と話をすると医師の教育というと白い巨棟の話が今でも出てくる。だから国民の皆さんに医師養成のことが関心持たれて大分埋まってきていると思うので、あとは国民的議論につながればと申し上げて退席する」


辻本
「基本理念も到達目標も変えないということ、臨床研修期間の2年を変えないということはありがたい。受入病院の病院ごとの個性も今以上に柔軟になっていくと期待できる。病床数で縛るのでなく症例数でというのもありがたい。ところで、P4の(2)の6個目の○。「取消になる」と書いてあるのは、これはどういう場合のことと理解すればよいのか」

厚労省
「基準を強化した場合に管理型の病院の基準を満たさなくなってしまったら、実情や実績を見て、一定の経過措置を設けるということ」

辻本
「今後の方向性として、そのように取消を進めていく可能性があるということか」

厚労省
「基準を設けた場合に満たさなくなってしまっても経過措置があるということ」

辻本
「くどいようだが、中小規模の病院の方が研修医の満足度は高いということと、今の話とが結び付かない」

高久
「プログラムの内容を評価する」

嘉山
「矢崎先生のお話にあったように国民が財政負担を後押しした。ただ、そこにあまりにも論理の飛躍があって、プライマリケアのできる医師がいれば全てうまくいくんだという風が吹いてしまった。小さな病院の満足度が高いというのは、本人の自己満足であって、患者さんの満足ではない。そこを間違えたらいけない。500床以下で研修を受けた1807人は本人の自己評価。エポックという公的なツールによる外部評価の仕組みがあるんだが、それをしてない人たちが1807人いる。非常にイージーな研修をやって、それで僕は満足だよと言っているのは患者さんによって良くない。かえって研修医が大変だあと言っているぐらいの方がいい。小さな病院にたまに凄い人がいるが、しかしそれは標準的にはいない、たまにいるだけ。研修を楽なところで受けるのは、先ほど大熊先生が言われたように肉はイヤ野菜イヤというのを許すのと全く同じ論理だ。ベッド数が全てではないけれど、しかしベッド数が少ない所には指導医がいないのも事実。全部ダメと言うつもりはないが、基本に制度は標準を見てつくらないといけない。特別に小さな病院にいい人がいるからといって、それで制度を作ってはいけない。ある程度の基準を設けないと、患者さんにとっての良質な医療というのを担保できない」


福井
「病床数の大きなところは自己評価ではないというデータがあるのか」

嘉山
「ある」

福井
「自己評価でないとは、どういうことを言うのか」

嘉山
「小さなところでは民間の評価表を使っていてエポックではない」

福井
「小さなところでもエポックのプリントアウトを使って項目も同じのを使って評価しているのが大部分。それは間違っていると思う」

嘉山
「私の出しているデータは」と言い掛けたところで
高久
「私から。選択必修の1~2の所だが、私としては2にしていただきたい。期間は3カ月なくともよいだろう。大臣は緩くとおっしゃったが、こうしたい」

福井
「1にしてくださいと言ったのではない。明確にした方がよいと言っただけ」

能勢
「2以上では?」

高久
「2以上になると、これは多くなりすぎるかもしれない」

能勢
「外科と麻酔科にこだわるということか」

高久
「こだわるというのではなく2つぐらいないと、ということと、あまり多くなると選択の意味がなくなるということ」


嘉山
「外科は一般とは消化器外科か。内科と同じように臓器別になっている」

厚労省
「一般とは消化器外科と思っているが、そこは定めず外科系であれば」

武藤
「外科学会は二階建てになっている。ジェネラルとスペシャルと。ただ症例数は消化器が多い。脳外科は入ってない。全く別だから。それに則ってやればいいのでないか」

吉村
「何がジェネラルかというような議論は紛糾するからやめた方がいいのでないか」

嘉山
「脳外科のことを言うと我田引水と思われるから言いたくはないのだが、現場が混乱するといけないから。救急で来る重症者は脳外科分野が一番多い。初期研修でいる時に救急車で運ばれてくるので一番多いのが脳卒中。内科と外科があるが緊急性のあるものは手術になるんで、ここはあまりリジッドにしてほしくない。消化器外科に限ると言われてしまうと現場が混乱する」

高久
「本来なら内科も外科も総合。地域枠の一層の拡大なら有効に(聴き取れず)」

永井
「今嘉山先生ご指摘のとおり救命救急センターでは脳外科の先生が非常に活躍している。救急3カ月以上ということで、そこで脳卒中をOJTしてもらうという趣旨だと思うので、そこで脳外科の先生に指導いただければいいのでないか。何のための制度の改革かというと間違いなく国民の理解を得るためであり、であれば余計に病床数にこだわるのではなくて、研修医の評価、ちゃんとした研修医ができたか、しっかりしたプログラムを作っているかという評価をむしろしっかりやった方が説明責任を果たすことになるだろう。医師の満足度が高い育成ではなく、国民の満足度が高い医師の育成をすべきだろう」

吉村
「初期研修だけの評価に留まらずに後期研修につながるような評価をしてほしい。それから診療所と書いてある診療所とは開業の先生のことか、どちらでもいいのか」

能勢
「大学の診療科で総合内科というと何のことだと議論が始まる。決めてもとても無理だろう。外科も同じ」


武藤
「前回、救急を6カ月にしたらどうだと言って、もつかと言われて引っ込めたのだが、やはり救急は大事。日本の医学教育が根本的にそっぽを向いてきたところで、むしろ一般病院の方がしっかりしている。そこに若い人を放り込めば満足度は低いかもしれないつらくてたまらないが勉強にはなる。現場はドラマERのようなのが力がつく。現状では救急がきちんとできるかというと必ずしもそうではないが、救急をきちんと卒前も卒後もやるというのがいい。一般の方が安心して医療にかかりたいという時は救急を指すのが大きい。そこの点を踏まえて救急に対して手当てお金を出して5年後にどれだけ救急の研修指定病院が増えたか検証していただきたい。」

高久
「大学病院は救命救急センターになれなかったというのもある。文部科学省の方針で」

福井
「基本的な診療能力の前に『幅広い』と入れてほしい」

高久
「私も疲れてきたので、この辺で」

事務局
「大きな方向性はこれでよろしいかだけ確認させていただいて細かい点については、ご意見をくださった皆様とご相談させていただきたい」
異論出ず、散会。

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
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