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ニュース〜医療の今がわかる

苛酷な勤務 最大の原因は医療界自身に


それから過重な労働を避けるためにどうしたらよいか、の一番手っ取り早いのはワークシェアリングというか、コメディカルの方や医療事務の方に仕事を分担していただいて、医師は医師でないとできない仕事に専念するように。そのためには法律の改正も必要かもしれないし、それに医師が反対するようでは困る。他の職員の方の権限を拡大しようとすると日本医師会は非常に警戒する。しかし、それは間違い。

今やアメリカを見ても世界を見ても、医師に雑用、雑用といったら申し訳ないけれど、医師以外がやってもよい仕事をさせているのは日本だけ。そういう職種を医師としても育てていくということを皆でしなければいけない。それにもし医師会が反対するようなら医師会を蹴飛ばせばよい。

それ位のことをしないと日本医師会は非常に強固な組織だから。医師会の執行部には病院の人は1人もいない。開業の先生、地方の医師会の会長がなる。もし日本医師会をこのまま認めていくならば、我々の意見を代表してくれる方に入ってもらうよう組織のありかたを変える必要がある。

それから医療紛争の対処にあたるために3年ぐらい前から医療安全委員会というのが議論されているが、厚生労働省から出てきた案は非常におかしい。そういうものを厚労省の中に置こうというのだけれど、自分の決めた医療制度を批判することはできないはずだ。それから、その検討会の座長は刑法学者だ。刑法とは、誰に責任があって、それをどう追及するかという話で、そういう人が座長をやれば、責任追及が原因究明や再発防止より優先されてしまうのが当然と思う。

あの組織は、もう一回全部解体してやり直すということにしないと我々の意見は通らない。あの検討会の中には3人医者がいるけれど、厚労省には何も言えないかあるいは日本医師会を代表する方々だから、やはり勤務医を代表する、しかもお上の息のかかってないような実質的な方を委員に選んで、もう1回医療安全委員会というものをどういう風にしたらよいのか考え直してもらいたいというのが私の希望。

最後にどうしたら消化器外科に若い人がどうしたら来てくれるのかということ。勤務環境も大事かもしれないが、一番大きな原因は消化器外科に魅力が少なくなってきていることだと思う。

労働時間が長いとかキツいとかあっても、若い人の中には目標のしっかりした人たちも大勢いる。それがきちんとできるような環境であれば、労働時間が長かろうが何だろうがちゃんとやる、そういう医者はまだ残っていると思う。そういう人を惹きつけるような魅力がないのかなという気がする。

今回の学会のプログラムを見ても、消化器外科プロパー中心の演題が非常に少ない。20年ぐらい前に内視鏡手術が始まって以降、外科手術の領域で本当に画期的なものは、どう見ても見当たらない。放射線とか化学療法とか免疫化学療法とか、微生物学とか遺伝学とかがどんどん発展したのに、外科自体はある飽和点に達したのかもしれないが、イノベーションが消化器外科の中になければ、いくら労働環境をよくしても若い人は来てくれないのではないか。やはり消化器外科の魅力が高まっているのだということを、どうやって見せるかが大切でないか。

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