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「E・Fファイル統合」の裏に見えるもの ─ 中医協・DPC評価分科会

佐々木健補佐(中央)0724.jpg DPC(入院費の定額払い方式)を導入している病院に提出が義務付けられているEファイル(診療明細情報)とFファイル(行為明細情報)に重複した項目があることから、厚生労働省はこれらを統合した「一体化ファイル」の提出に切り替える方針を中医協の分科会に提案し、了承された。しかし、これを「医療機関にとって良い話」と受け取るのはやや早計かもしれない。(新井裕充)

 2010年度の診療報酬改定に向け、中央社会保険医療協議会(中医協)のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)が7月24日に開催され、「E・Fファイルの統合」などについて審議した。

 「E・Fファイル」をめぐっては、データを作成する医療機関の医事業務の負担を軽減するため、「EファイルとFファイルのダブりをなくして、1つにまとめてほしい」との要望が同分科会の委員から出されていた。

 しかし、DPC病院のデータを分析している研究班でリーダーを務める松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)が、「一体化してしまうと両方いじらなければならなくなるので、かなりきつい作業になると思うし、間違いが生じやすい」などと反対していた。

 ただ、松田委員は「EファイルとFファイルをそのままにして、(これらとは別に)『一体化ファイル』を作る方法もある」として、「3つ目のファイル」を作ることには賛成している。

 今回、厚労省は松田委員の要望に沿った形で、これまでの「E・Fファイル」という2つのファイルの提出から、「一体化ファイル」という1つのファイルの提出に切り替えることを提案し、了承された。「一体化ファイル」の提出は来年度から実施する。

 ここで気になるのは、「医療機関にとって良い話か」ということ。実はそうでもないらしい。

 まず、医事課の事務負担は軽減するどころか、さらに煩雑化するだろう。厚労省の担当者は、「E・Fファイルを残すかどうかは各医療機関の判断に委ねる」と話しているが、最初に「E・Fファイル」を作成しなければ「一体化ファイル」を生成できない仕組みなので、これまでよりも手間のかかる作業が要求されそうだ。

 さらに、「一体化ファイル」を作成するためにシステムを改修する負担が発生する。前回6月29日の会合で、委員から「システム改修は少ない方がいい」と求める声が出たが、厚労省の担当者は「思い切った大きな改修をしても手間としては同じだろう」と述べている。このため、システムを変更するために新たな改修費用が掛かる恐れもある。

 さらに気になるのが、「E・Fファイルを統合するためのアプリケーションソフトはあるのか」ということ。しかし、これは既に松田研究班で開発済みらしい。なるほど、これはよくできた話ではないか。
 松田研究班とは、厚生労働科学研究「包括払い方式が医療経済及び医療提供体制に及ぼす影響に関する研究」 班のこと。分かりやすく言えば、国からお金をもらってDPCを研究しているチームで、主任研究者を松田委員が務めていることから「松田研究班」と呼ばれている。

 これらのことを"統合"して今回の「E・Fファイル統合」について考えると、「2つのファイルを1つにするんでしょ」という程度に受け取るのは、少し浅いかもしれない。

 DPCは医療費を抑制するために導入され、「平均在院日数の短縮」という意味の効率化は進んだとされる。しかし、「医療費を抑制する」という意味で効率化が図られているかどうかには疑問符が付く。
 3日以内の再入院、アップコーディング、その他さまざまな"経営上の工夫"により、「DPCは儲かる」とか、「表に出ない不正請求が相当あるはず」との声もある。

 そこで、DPCをめぐる次の課題は医療の標準化や透明化であり、厚労省は正確なデータの提出を最重要視している。そこでネックになるのが、病院ごとに違うソフトを使ってデータが作られていること。
 このため、全国のDPC病院で使用するソフトを統一して、"ガラス張り"の状態にすることができれば、コスト調査の分析など、いろいろと都合がいいだろう。

 しかし、会計ソフトやDPC請求用のソフトがバラバラに導入されている現状をどう変えたらいいのか─。

 1つ方法がある。それは、診療報酬が高くなるようにコードを変える「アップコーディング」などに役立つソフトを開発している会社を呼び出して聴聞すること。つまり、そのような会社のソフトを使うことがないように知らしめるため、「ヒアリング調査」と称する"査問委員会"を開き、既存のソフト会社を追い出せばいい。
 そして、厚労省お墨付きのソフトを導入すれば、データを作成する環境の統一化が図れる。「データ作成の支援」という名目で、医療機関の情報システムに厚労省が深く関与する。

 厚労省は、ソフト会社からヒアリングする方針を既に固めているふしがある。同日の分科会では、「不正請求する病院が悪いのではなく、不正請求を手助けしているソフト会社が悪い」という理屈の議論があった。これは別の記事でお伝えしたい。

 「E・Fファイルの統合」について、厚労省の説明と委員の発言は次ページ以下を参照。


【目次】
 P2 → 「重複項目を除いて統合したファイルを提出していただく」 ─ 厚労省
 P3 → 「研究班でも作ってある」 ─ 松田委員

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