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新型インフル エビデンスないからこそオープンに議論を

新型インフル エビデンスないからこそオープンに議論を

村重直子・厚生労働省大臣政策室政策官インタビュー
(聞き手・川口恭)

――新型インフルエンザワクチンに関して、26日に舛添要一厚生労働大臣が予防接種法と感染症法の改正を口にしました

 日本の制度が不備なまま放置されていたことが、今回のワクチン輸入交渉の過程で明らかになってきました。そこを通常の手続きを踏んで直しては間に合わないところを大臣が決断してくださったと思います。このような政治決断は、官僚にはできません。

――不備と言いますと。

 最も大きなものは、ワクチンを製造するメーカーにとって日本で販売するのは、他の国で販売するのに比べてリスクが大きすぎるということです。そこが今回の輸入に関しても最大の課題でした。副作用が起きた際、故意でなければメーカーの責任は問う必要がなく、公的に補償するという国が多い中で、日本の場合はメーカーが裁判で訴えられて青天井の賠償を請求される可能性があります。

――メーカーの責任を問わない方が世界的には普通なんですか。

 専門的には無過失補償と言うのですが、誰に責任があるのかを問題にするのではなく、被害が出たら公的に救済される仕組みがあって、その救済を受けたらそれ以上の賠償を請求する権利は失われるのとセットになっているのが欧米では多いようです。その背景には、ワクチンは個人的な利害だけではなく社会全体の利益のために接種するものという認識が一般に浸透しているので、被害が出たとしても、関係者に不当に責任を負わせることはできないし、社会全体のために犠牲になった人は社会全体で支えるのが当然という考え方があります。

 たとえば米国の場合、88年からそういう運用になっています。ワクチンの無過失補償には2種類あって、片方は普段の医療における被害を救済するものです。補償金の原資はワクチン1本あたり75セント上乗せされています。補償金を受け取ると裁判はできません。もう片方は、「公衆衛生上の危機」という定義なんですが、バイオテロなんかを想定したものです。炭そ菌とか新型インフルエンザとかが対象になっています。それに関しては、裁判に訴える道は最初からなくて、無過失補償一本です。まだ財源はないんですが、補償はするので1年以内に申請しなさいということは決まっています。実際に事が起きた後で、国会で議論するのだと思います。今回の新型インフルエンザであるH1N1に関しては、6月15日に後者の指定に追加されています。

 フランスの場合はワクチンにとどまらず、02年に医療全体への無過失補償が導入されています。それ以前はワクチンと輸血によるエイズだけは国が補償する仕組みでしたが、普通は、補償を受けるには患者側が訴訟をするしかなくて、訴訟では公立病院とプライベートの病院で額が違うとか南北格差があるとかだったようです。患者団体が補償を受ける権利をちゃんとしろと働きかけて制度ができたそうです。医療事故の場合は受け付ける身体障害の程度に下限があるようですが、ワクチンや公衆衛生上の危機に関することはわずかな障害でも補償されます。補償金を受け取る際には裁判をしないという契約書にサインする必要があります。

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