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「3日後に大きな変化があるが、大丈夫でしょうか?」

8月27日の医療保険部会.jpg 「3日後に大きな変化があることを踏まえて今日審議会をやって、『それがちゃんと継続されるんですかね』なんて私は危ぶみながら見ているが、大丈夫でしょうか」─。(新井裕充)

 8月30日の総選挙を目前に控えた26、27の両日、厚生労働省は社会保障審議会(社保審)の医療部会と医療保険部会を相次いで開催した。
 社保審の両部会は、来年4月に実施する「2010年度診療報酬改定」の方向性(基本方針)を策定するための会議で、医療政策にかかわる有識者が参加している。

 27日の医療保険部会で、樋口恵子委員(高齢社会をよくする女性の会理事長)は「3日後に大きな変化があるということを踏まえて今日審議会をやって、『それがちゃんと継続されるんですかね』なんて私は危ぶみながら見ているが、大丈夫でしょうか。つまり、大前提が変わりつつあるところにいる」と発言。医療費抑制策をベースにした考え方からの転換を図る必要性を訴えた。

 「今まで、医療費ばかりではなく社会保障費抑制ということが、こうした審議会に臨む場合の大前提だったと思う。『社会保障国民会議』で私も委員をさせていただき、そこでよりはっきりと改めて認識したことは、『抑制、抑制』と言われて、確かに医療費の無駄遣いは絶対に良くないとは思うが、日本の医療費は決して諸外国と比べて、対GDP比などで決して高くないどころか、むしろ低いほうに属している。社会保障費全体が低い。これは、負担も低いから仕方がないということも言えるが、負担も低ければ医療費および社会保障費も大変低い」

 26日の医療部会でも同様の意見が出た。海辺陽子委員(癌と共に生きる会副会長)は、同部会の在り方や診療報酬改定に関する意見書を提出した上で、「不採算となっている部門は本当に産科・小児科・救急だけなのか」と問題提起。「どこの科も大変なことになっている。化学療法を受けたくても受けられない『がん難民』がいる。『どこがいけないのか』ということをもう少しきちんと考える必要がある」と求めた。

 厚労省は両部会で、医療・介護体制の将来像を示した「社会保障国民会議」の最終報告を前面に打ち出し、メリハリのある診療報酬改定の必要性を改めて強調。厚労省の医療政策の根幹をなす「医療機能の分化・連携」をさらに推し進める方針を示した。
 保険局医療課の佐藤敏信課長は同報告を「画期的」と賞賛した上で、「選択と集中は病院対診療所という文脈で語られることが多いが、単純にそういう話ではなく、病院の中でも急性期病院とそれ以外の病院との間で役割分担していくことが書かれている」などと解説。診療報酬改定の基本方針については、「平成22年度改定の基本方針においても(前回と)同様の構成とすることが考えられる」として、これまでの方針を踏襲する意向を示した。

 両部会の意見交換では、厚労省の方針を支持する意見と見直しを求める意見が対立。日本医師会常任理事の中川俊男委員は26日の医療部会で、「資料4(社会保障国民会議の最終報告)の説明が一番力が入っていた」と皮肉り、「基本方針で『同様の構成』とあるが、3.16%を引き下げた06年度改定の方針を引き継ぐのか」などと批判した。また、日医常任理事の藤原淳委員は27日の医療保険部会で、「選択と集中は、選別と切り捨てだ」と語気を強めた。
 これに対し、対馬忠明委員(健保連専務理事)は診療所の再診料に触れ、「同じサービスなら同じ価格。前回の改定では診療所と病院の再診料を統一できなかった」と発言。他の委員からも、「選択と集中をどのように行うか、10年先を見越して手を打つべき」「保険財政が厳しいため、診療報酬全体を引き上げるような状況にはない」などの意見が相次いだ。

 厚労省は今後、両部会での意見を「主なご意見」の中に随時盛り込みながら基本方針の原案を作成することが予想されるが、気になる点がある。それは、診療報酬改定に直接かかわらない委員の発言がどのように扱われるかということ。また、政権交代後に委員の発言がどのように変化するかということ。
 両部会には、日本医師会、全日本病院協会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本経済団体連合会、健康保険組合連合会など、診療報酬改定を審議する中医協のメンバーが多数参加しているが、社保審の両部会は「診療報酬の支払側と診療側」という対立軸に収まらない。

 27日の医療保険部会では、医師の地域偏在を解消すべきとの意見が複数の委員から出た。山本文男委員(全国町村会会長、福岡県添田町長)は、「医師の派遣がスムーズにいくことを考えること、医師が偏在するような地域が生まれないように考えることが大事」と述べた。
 また、26日の医療部会では、海辺委員が「インセンティブを付けるという悠長なことではなく、(医師不足の地域に)人を送るシステムを考えていかなくてはいけない」と訴えた。海辺委員は、産科や小児科などの重点評価を議論する前に、まず医療提供体制の在り方を検討すべきとの文脈で述べているが、これらの発言が厚労省に"悪用"されないかが気になる。「医療提供体制の構築」という言葉は、「医師の計画配置」を進める上で便利なキーワードになる。


 
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