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細菌性髄膜炎を知ってますか-5歳未満乳幼児に発症、重度後遺症多く

 「ヒブワクチン」や「肺炎球菌ワクチン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。5歳未満の子どもが発症し、発達障害など重度の後遺症を残しやすい「細菌性髄膜炎」の予防に有効とされ、海外ではWHOの勧告を受けて定期接種化が進んでいるワクチンだ。「ワクチン後進国」とも言われる日本では定期接種化されておらず、患者会などが要望を続けている。どんな病気で、現状はどうなっているのだろうか。(熊田梨恵)

 患者家族や医療者などでつくる「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(田中美紀代表)は27日、国会議員らに対して細菌性髄膜炎に関する勉強会を行った。同日行った長浜博行厚生労働副大臣に対する、2種類のワクチンの定期接種化などを求める要望書の提出と足並みをそろえたもので、一般から集めた約4万7000筆の署名も衆院と参院の両議長へ提出する予定だ。
 
 この中で、日本赤十字社医療センター小児科顧問の薗部友良氏が細菌性髄膜炎と、ワクチンを取り巻く現状について講演した。とても分かりやすかったので、その内容を紹介する。予防接種体制の問題についても大変重要な指摘があったが、こちらでも講演されていたので割愛する。
  
 以下は、薗部氏の講演内容。
 
■原因菌は「ヒブ」「肺炎球菌」の2つ
原因菌.jpg 細菌性髄膜炎というのは、昔は脳膜炎と言われ、私が研修医になって、夜に急患んで来たお母さんが「この子は熱があるから脳膜炎じゃないか」と言われていました。それほど怖がられて、知られていた病気です。今は名前が変わって髄膜炎と言いますが、結局同じものです。脳を直接、間接に侵します。抗生物質がなかった時代には歴史的に見ても、助かった人はないということになっています。医学が進歩した今でも亡くなる方、後遺症の方が多いです。自分の子どもを含めて、一番なってほしくないのは細菌性髄膜炎です。
 
年齢別.jpg 年間1000人ぐらい出るわけですが、原因の種類として、一番多いのはヒブ菌で60%ぐらい。次に多いのが肺炎球菌で20%ぐらい。大腸菌とかもあり、新生児期から遅くとも3か月ぐらいになります。他にもありますが、ヒブと肺炎球菌のこの二つが何と言っても原因菌の代表。他のものはワクチンがないですが、この二つはあるので、どう抑えるかが問題です。
 
 どれぐらいの子どもがかかるか見てみますと。3か月ぐらいからヒブが増えてきます。細菌性髄膜炎というと赤ちゃんばかり考えられますが、1歳や2歳もあります。赤ちゃんだけの病気ではないということをご理解いただけるとありがたいです。
 
■ヒブ菌とは
ヒブ菌とは.jpg ではヒブ菌とはどういうものか。「ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)」と分類されます。この菌を二つに分けると、細菌の周りにある、特殊な膜である莢膜(きょうまく)があるのとないのとに別れます。この膜があると白血球に食べられにくいのですが、そうすると身体の中に広がっていって悪さをします。AからFまでの分類がありますが、不思議なことにどういうわけかB型の菌が一番悪さをするのです。莢膜のない菌は皆様の中にもあります。局所感染で中耳炎にもなります。大人でもなりますが重症にはなりにくいです。9割は細菌性髄膜炎を起こします。口頭蓋炎も起こしますが、これは息ができなくなって、外来から病棟に運んでいてふっと息が止まって亡くなったということもあるほど怖い病気です。
 
■肺炎球菌とは
肺炎球菌とは.jpg 肺炎球菌とはどういうものか。91種類あり、細菌が生き残るための莢膜を持っているので強いです。7つの血清型が、重症度の高い髄膜炎や菌血症の原因の8割を占めます。抗生剤に耐性を見せます。ワクチンは全部をターゲットにするのは不可能だから対象を絞っています。どれぐらいの患者さんがいるかというと、5歳未満の子どもの人口が550万人として、髄膜炎が年間200例ぐらい。菌血症という血液の中に菌が入るのが、年間2万人前後。肺炎は1万2000例ぐらいと、5歳未満の子どもでもこれだけいます。中耳炎は重症型になると肺炎球菌が(原因となるのが)2番目に多く、こういうものにまで噛んでいて、肺炎球菌はばかにならないということです。喉にいる菌が何かの拍子で血液に入ると、白血球に食べられるのだが、生き延びたものがいろんなところについて悪さをするということです。
 
肺炎球菌感染者.jpg 早くに治療すればいいじゃないかとなりますが診断が非常に難しいのです。ごく初期は風邪と全く違いがありません。髄膜炎刺激症状が後になれば出てくるが、こうしたものが出てきた時は病気が進行していて血液検査でも区別がつきにくいです。抗生剤が効かない細菌が大変多く、治療には限界があります。ヒブも肺炎球菌もそうだが、保育所など子どもが集まった場所でうつりやすい。こういうことなので予防が一番です。
 
■死亡か後遺症、3人に1人
後遺症割合_.jpg 細菌性髄膜炎にかかるとどうなるか、治療しても、ヒブの場合は死亡が2%で、後遺症が17%。後遺症にどういうものがあるかというと、水頭症、脳梗塞、聴力障害、基本的には知能障害を伴います。お母さん方に話す時、「ロシアンルーレット」で例えます。あれは6発に1発弾が入っているが、細菌性髄膜炎にかかると「3発に1発入っている」と。かかれば約30%が亡くなるか、障害が残るということなのです。後遺症がなくてよかったかというと、後になって障害があることが分かる方がいることも分かってきました。細菌性髄膜炎で亡くなる方の割合を見てみると、ヒブ菌、肺炎球菌はインフルエンザ菌より亡くなる率も高く、後遺症率も高い。後遺症は当然重いわけではありますが、ヒブ菌の方が肺炎球菌と比べれば幾分軽い。肺炎球菌は数は少ないがばかにならないと。
 

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