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ニュース〜医療の今がわかる

PMDA・近藤達也理事長が動く 東大医科研・宮野悟教授(上)


近藤
「ライフサイエンスの研究は、人類のためになるとか、これが世界のためになるという原動力で動いているはずなんだけれど、先生のお話ではバイオロジーは雑誌に載るために動いている、ということですね。方向が、ちょっと違うのかなという」

宮野
「方向づけを日本の科学者自身がやれてないです。総合科学技術会議なんかも、何の議論もできてません」

近藤
「人類のためになってないわけですね」

宮野
「日本のライフサインエスの基礎研究の論文数は、アメリカ、ドイツに次いで世界で3番目らしいです。でも、臨床研究ではと言うと、人口530万人のフィンランドにも負けて世界18位です。先ほどの雑誌3つの頭文字を取って私たちははCNSと言ってますけれど、余りにもCNSに偏ったライフサイエンス投資が行われていると思います。新たな技術を開発したりするプロポーザルをする時には、CNSの論文を除いた業績で評価するぐらいのことをしないと、CNSに載りやすいものしか皆やりません。その結果がこれです」

近藤
「臨床医学に対する科学の意識が欠けているんですよね。臨床で貢献するという時に、皆が地の塩になって地べたに這いつくばってやっている。そこは大変な科学の場所なんだけれど、科学の場所だという意識を失っています。日々の患者さんの治療に追われていて、科学が全然遂行されていない。本当は医者になった人は、そこで科学をしてなきゃいけないんだけど、やってない。基礎へ行くか、地の塩として生きるかという極端な展開になり過ぎています。本当は臨床は大変な研究の場なんですけど。実際問題として、大学にいる医者は、臨床をやっている人をバカにしますよね。論文書いてないと偉くないと思っているところがあって、でも、その論文が、臨床家なのに基礎研究の論文。臨床にも、外科医の神の手と称されるような優れた人はいますが、でもそれは科学じゃありません。現場に合うような個々の患者さんのために合うような治療の指針を見つけ出す」

宮野
「それをサイエンスにしないといけません」

近藤
「多くの臨床家が、そこの所でひん曲がっちゃっています。あきらめていると言うべきか」

宮野
「次の医療の主流は個人ゲノムへ進むということが明白なのに、どれだけの日本人がこのストーリーを知って、日本の医療とかライフサイエンスのプランを立てているんだろうかと思います。何しろ日本は技術力ゼロで、やれないんです。こんな日本に誰がしたんだと言いたくなります。

実は最新鋭のシークエンサー自体は補正予算で日本にも100台くらい入ったんです。1台1億円です。でも、1ランするのに試薬が120万円必要で、1人のゲノムを決めようとすると30ランぐらい必要なので、3000万円かかります。だからシークエンサーは買ってもらったけれど動いてないですよ。もし動いたとしても、出てきたデータを解析する人もいません。

幕末に各藩が軍艦を買ったんだけど、乗りこなす船乗りがいなかったという状態によく似ています。だから、勝海舟が船乗りを養成したんですね。そういうことが、今まだ着手されてません。日々世界から産み出されてくる膨大なデータを前にどうしたら良いか分からず立ち尽くしているのが今の日本です。

分子生物学というのは多くのノーベル賞受賞者を出したように強力な方法論で、40年続いてきましたけれど、ほぼ限界が見えてきていると思います。これからはデータのマネジメントから何かを見出していく時代です。薬の審査なんかもチェンジが起こってくるんだと思いますよ。薬の審査をどうやってやっているのか知りませんけれど、安全性をどうやって担保するのかということに、分子生物学的知見や実際に一件一件あがってくる情報を見れば十分なんでしょうか。これからもそれでいいのかという疑問が自然に上がってきます」

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