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がん研究費には仕分けが必要だ 土屋了介・癌研顧問


 がんセンターが何をやるべきか、以前に嘉山先生ともお話をしまして、その時になぜナショナルセンターなのかと言えば、厚生労働大臣のブレーンとして日本のがん医療そのものを考える役割が重要なんだということで一致しました。それを体現するものとして研究費があります。

 現在、厚生労働省が、がんに対する研究費として持っているのは昨年度で合計70億円ちょっと。3種類に分かれています。一番古くからあるのが、がんセンター創成期からある「がん研究助成金」。それが19億円です。それから、がん対策10か年戦略とか言われ3期目に入っているものがあり、その中も小分けされていて、狭い意味で「対がん」と称しているものが約32億円。もう一つ「がん臨床」というのが約20億円あります。

 その3つとも、昨年まではファウンディング・エージェンシーを国立がんセンターが司ってきたわけです。運営委員会の委員長も、国立がんセンター総長が職責で務めることになっていました。

 しかし、この国立がんセンターによる仕切りは、世の中から激しく批判を受けてきました。嘉山先生も、大学にいた時には不満を持っていたはずです。というのも運営委員会は、がんセンター総長が委員長になって、全国から委員を選んでいたのですが、ほとんど入れ替わりのない固定メンバーでした。外から見れば、ナアナアでやってんじゃないのかと言われても仕方ない状態です。しかも、厚生労働省から厚生労働科学課や昔の国立病院課、今の政策医療課、がん対策室の3ヵ所から課長の代理として補佐が来て、行政的な見地から意見を述べ、行政点を点けていました。

 本来は、全国のがん研究者が納得いく、さらに言えば国民が納得いく配分方法で、適正な配分が一番望まれます。また、それがある意味ガラス張りであることも必要だと思います。そういう観点から言うと、外から見ていて大変分かりにくい状態でした。

 ただ内部の人間がそのことに気づいていたかと言うと、一言で言えば、外部から嘉山先生を迎えないといけないような体たらくだったわけです。研究費が来て当たり前、しかもなまじ来るものだから、自分の研究が世の中で認められているという錯覚をしてしまう。研究費という麻薬漬けで瀕死の状況でした。もちろん頑張っていた研究者もおりましたが、果たして日本全体をその分野のリーダーとしてマネジメントするのにふさわしい人ばっかりだったかと言うと大変に疑問が持たれます。長年いる間に謙虚さを失って、周囲からもかなり厳しい目で見られているのを、自分たちだけが気がつかないでいる研究者が多かったと思います。

 私も同罪ではあるのですが、私はがんセンターのレジデントのトレーニングを受けた後3年間外に出ていて、がんセンターに戻る当てもなかったから、がんセンターへの批判を生で聴く機会が多くありました。そこで批判されてきた悪しき体質がどんどんどんどん膨らんでいったというのが、ここ最近10年間、特に目立ってきていたのだと思います。創成期の頃のハングリーな(ハングリーばかりがいいとは言いませんけれど)最初の10年とか20年、がんセンターが1次・2次黄金期だと言われたような時期は、それにふさわしい努力もしていたし、リーダーとして全国の研究者にお金が行き渡るような配慮を随分されていたんじゃないかと思います。それをしなくなっただけでなく、新しい仕事もほとんど出なくなってしまいました。症例数だけは頑張っていましたけれど、ここ1、2年のうちに手術や内視鏡の数でも全部癌研に逆転されてきました。

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