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約1万8000人の透析患者を受け入れ可能に-日本透析医会が被災地を支援

 3月11日の東日本大震災では、医療機関も被災したために透析難民が大量に発生、被災地以外での代替が必要になっている。対応するため、日本透析医会(山﨑親雄会長)で全国の会員施設に呼び掛けを行ったところ、被災3県の全患者数を上回る約1万8000人の受け入れが可能になった(24日現在)。特に、電力事情に問題のない近畿以西で、約1万人を受け入れられるという。同会で災害医療を担当する山川智之常務理事(大阪・白鷺病院理事長)に話を聴いた。(熊田梨恵)

 透析を必要とする患者は国内に約30万人。被災地の患者数に関する正確な数字は得られていないが、日本透析医学会の「都道府県別慢性透析患者数」によると避難者の多い岩手は2872人、宮城は4753人、福島は4705人の透析患者がいる(2009年末現在)。透析患者は一般的に週3回、1日4~5時間の透析治療を受けるため、今回のように避難生活が長期にわたる場合は、患者をスムーズに透析可能な場所に運ぶことが求められる。山川氏は「透析医療は災害に弱いのです。1回約120リットルの水と電気を必要とするので、インフラが整備されていないと成り立たない治療です」と語っており、現在も避難を続けている透析患者の安全な地域への搬送が急務の課題になっている。
 
 医会が国内の透析医療機関に受け入れを呼び掛けたところ、24日までに医会の施設会員数を超える2425か所の透析医療機関から情報が寄せられ、国内全体で1万7570人の患者の受け入れが可能になった。このうち入院透析が可能なのは3732人、宿泊場所もあり外来透析が可能なのは1794人、宿泊場所はないが外来透析が可能なのは1万2044人。近畿地方より西の地域では約1万人の受け入れが可能となっている。山川氏は「被害の全容が見えてきた時、遠隔輸送が必要と判断しました。宮城を含む患者数の多い地域が被害に遭っていますが、透析ができなければ可能な地域に運ぶというのが基本的な考え方。仙台社会保険病院の方に電話で聞いたところ、ピーク時には透析を1回2時間半、最大で1日8回最大回されたというのです。夜中に休みなくされていたという厳しい状況で、最前線の先生方は患者さんを助けるためにすごいパワーでやっておられるのを感じ、こちらとしてもコーディネーションしないといけないと思いました。また輪番停電の話も出てきたので、西日本に移送しなければいけないと思い、沖縄まで各県に都道府県単位で受け皿を作って下さいとお願いしました」と語る。国内に4000ある透析医療機関の半数を超える施設が応じており、国内全体で患者を受け入れる態勢が整っている。
 
 被災地の透析医療機関や自治体からの受け入れ要請や患者の振り分けは、各都道府県に最低1人置かれている医会のコーディネーターが担う。医会によると、患者搬送は国や自治体が行い、患者や家族の宿泊先の調整は自治体が担う。ただ、「実際はそんなふうにうまくはいかないので、それぞれの担当者間で様々な調整を行います」(山川氏)という。
 
 医会のまとめでは、施設が把握している他県への患者搬送は22日までで約1800件。医会のコーディネーターが連絡調整して、福島から患者が移送されたほか、22・23両日には宮城から80人の透析患者が自衛隊の輸送機で北海道に搬送されている。個人的な移動や集計できなかったデータも含めれば、被災地の患者の約5分の1から4分の1が県外で一時的に透析をした可能性があるという。
 
 ただ、西日本では受け入れがゼロの地域もある。大阪市は市が所有する国際見本市施設「インテックス大阪」(住之江区)を患者と家族の一時避難所として提供し、最大1000人を受け入れると発表しているものの、実際の受け入れの見通しは立っていないという。山川氏は「医療側からすると現実的には動いていただかないといけない患者さんもおられます。ただ、遠方に行きたくないという患者さんの気持ちもあります。停電もあるのでその辺のことをどうしたらいいかというのは今後検討していかなければいけなません」と語る。
  
 山川氏は「今回は100%と言えないまでも、これまでの医会の取り組みの中で達成できたものはありました。ただ、やはり最前線の方々の超人的な活躍に頼っている現状があります。そうではなく、最初だけはそれで頑張って頂いても、その間に受け入れ態勢を整え、行政の搬送もさっと動いてもらえるようにするのが理想です。今回は搬送をもう少しタイムリーにしていただきたかったというところは正直なところありますが、今後は患者会も含めて『こうしてほしい』というのを考えていきたいと思っていますし、次からは自治体も今回ほど手間取らず計算されて動いてもらえると思います」と語る。
 
 さらに今後の大規模災害医療の課題として、慢性疾患患者のトリアージ体制の構築を挙げる。「透析患者だけではありません。こうした長期にわたる災害医療の場合、インシュリンの切れた糖尿病患者、吸入ステロイド薬の切れたぜんそくの患者のことも考えていかねばなりません。慢性疾患の患者を被災状況の中でどうトリアージしていくか、地域の中での体制作りが必要です」。また、インターネットや電話など物理的な通信手段が断たれた状態での情報共有体制も課題と指
摘。「現場の最前線の医療者は情報を集めている余裕もありません。情報共有といってもそんなに簡単な話ではなく、情報が取れない中でどう一括していく体制を構築するかです。起こることが予想されている南海地震もあります。体勢を整えておかねばなりません」。山川氏は医会の災害医療対策をさらに強化し、全国的に患者を支えていく体制の構築を進めていきたいとしている。
 
 医会の情報提供によって、被災地の患者を県外で十分に受け入れられる余裕があることは分かったものの、実際の受け入れに至っていない地域は多い。医会は医療機関からコーディネートの問い合わせに応じられるよう事務局の番号(03-3255-6471)を公開している。
  
  
*日本透析医会の被災者受け入れに関する問い合わせ窓口
社団法人 日本透析医会事務局
電話 03-3255-6471
FAX 03-3255-6474
e-mail info@touseki-ikai.or.jp

日本透析医会災害情報ネットワーク災害時情報伝達・集計専用ページ
 
 
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