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脳卒中の救急搬送システム、検証へ―東京都

 東京都は5月13日、脳卒中医療連携協議会(会長=有賀徹・昭和大病院副院長)の今年度の初会合を開催した。都が3月9日から開始している、急性期の脳卒中医療が必要な患者の救急搬送体制について検証し、地域連携クリティカルパスの活用についても検討していくことを確認した。(熊田梨恵)

 東京都は3月9日から、脳卒中医療に関する新しい搬送ネットワーク体制を敷いている。救急隊が、脳卒中の疑いがあるためすぐに治療が必要と思われる患者を、都が認定した「脳卒中急性期医療機関」に搬送するシステムだ。
 
 
■脳卒中医療は国の重点施策
 このシステムは、各都道府県が策定している医療計画に基づくもの。国はがんや脳卒中など4疾病と、救急や周産期医療など5事業の医療提供体制について詳細な計画を立てるよう求めており、特に脳卒中については、地域連携クリティカルパスを作成したり、急性期や回復期などを担う医療機関を記載したりするなど指導している。
  国には脳卒中の後遺症の患者を減らすことなどにより医療費を抑えたいねらいがある。このため、2008年度診療報酬改定でも、脳梗塞発症後 3時間以内のt-PA(血栓溶解薬)投与による超急性期治療や、医療計画に記載された医療機関に対する評価が盛り込まれている。
  
 脳卒中に関する医療連携体制は、岡山県倉敷市や東京都北多摩西部医療圏など、国内の多くの地域がそれぞれ独自のネットワークを構築しつつあったところだ。そこに国が医療費適正化を視野に、医療計画や診療報酬評価などをセットにして全国的に脳卒中医療を推進しようとする気勢をあげてきたものの、脳卒中医療ができる医療機関や人材など資源の不足と偏在、地域による医療提供体制の違い、慢性期や在宅医療といった受け皿不足、t-PAは脳梗塞の中でも限られたタイプに有効で、2時間以内に搬送しなければならないなど問題が山積している。こうした中、自治体や医療機関は資源配分や搬送体制などについて効率的に連携体制を構築する必要に迫られている。 
  
 
■療養病床削減が弊害
 ただ、この脳卒中医療連携を推めるに当たって、国の療養病床削減計画が障害になっている。国は12年度末までに、当時38万床あった療養病床(医療型25万床、介護型13万床)を、15万床にまで減らすとしており、介護型療養病床については、 11年度末までに全廃するとしている。療養病床の転換先としては、介護老人保健施設や、新しいタイプの転換型の老健、在宅移行などを提案しているものの、なかなか進まない現状がある。医療現場からは慢性期の受け入れ先となる病床が減ることへの懸念が強く、介護型を医療型に、または医療型を回復期リハビリテーション病棟に転換するなど、慢性期の病床を確保しようという動きが全国各地で見られる。
 
 脳卒中急性期医療という、"入口"を整えれば、削減が進んでいる慢性期の受け入れ先を探すことが困難になることは目に見えている。東京都では2005年度までに約5200人の慢性期患者が都外に転院しており、療養病床不足は深刻だ。
 
 このため、都が策定した保健医療計画は国の方針に逆行するもので、2012年度末の療養病床の目標数を現状より約7000床多い約2万8000床に据えた。都は今年度、療養病床を増床する医療機関に補助金を出すなど、慢性期医療の充実に力を入れていく方針だ。
 
 このほか、東京都が他の自治体に比べて特徴的なのは、都は救急医療体制を整備するメディカルコントロール(MC)体制を一括して敷いているため、都内で一斉に搬送を開始することが可能だった。多くの道府県では、二次医療圏ごとにMC体制を敷いているため、医療圏ごとのネットワーク体制構築が基本になる。医療計画を所管する厚生労働省医政局指導課の担当者は「他の都道府県で、日付を決めて一斉に搬送を始めているというのは聞いたことがない」と話している。
 
 こうした中、東京都が都内で一斉に開始した脳卒中医療連携の搬送システムは、都内外から注目を集めるものになっている。
 

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