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国立がんセンター、手術件数回復の裏にある問題

センター外観.JPG
 麻酔科医不足が深刻となっていた国立がんセンター中央病院(東京都中央区、土屋了介院長)では昨年10月に新しく麻酔部門の責任者が就任して以来、手術件数は順調に回復の一途をたどっている。しかし、現状は非常勤の麻酔科医に頼るところが大きいため、国の予算で動くナショナルセンターとして避けようのない問題に直面している。(熊田梨恵)

 日本で最大級のがん治療施設である国立がんセンター中央病院では、2007年末から08年3月にかけて、常勤の麻酔科医10人のうち半数の5人が相次いで退職する事態が起こっていた。手術時に患者に麻酔をかけて全身の状態を管理する麻酔科医は、手術が行われる病院には必須の存在だ。同病院はこの時期、一日当たり約20件だった手術を、3月から15件に減らして対応。手術待ちの患者が増え、他の病院で手術を受けることを余儀なくされる患者もいた。
 
 この危機的状況を打開するため、土屋院長は日本麻酔科学会に協力を依頼。昨年10月に横浜市立大附属病院の元准教授が麻酔部門の部長として就任した。新部長の指導の下、同病院は立て直しに乗り出し、スタッフの動きや働き方など手術部門のシステムは一新された。
 
 その結果、08年度の手術件数は4007件と、土屋院長が当初懸念した3000件台にまでは下がらずにすんだ。昨年12月の手術件数は1日平均18.6件で、約5000件の年間実績を上げていた07年とほぼ同じペースにまで戻ってきていた。この6月1週目も1日平均17.4件とほぼ変わらず推移している。土屋院長は「以前は週60件ペースだったが、現在はほぼ週90件ペース。以前の5000件というのはちょっと体制的に無理のある件数だったので、このままいけば年間4800件ぐらいには戻るだろう」と期待感を示す。
 
 しかし、この手術件数回復の舞台裏では、ある問題が表面化してきていた。
 
 国立病院を担当する厚生労働省医政局政策医療課とがんセンター中央病院の事務部門との間で、麻酔科の応援に来ている非常勤医に払うアルバイト料である「謝金」の予算が8月までしかもたないため、夏以降は非常勤医を雇うのが難しくなるという話が持ち上がっていた。両者の間では今後どう人や予算をやり繰りしていくかという打ち合わせが、5月以降に数回にわたって行われていた。 
 
 現在の同病院の麻酔部門の常勤医は7人。平日は毎日5、6人の非常勤医が応援に来て手術麻酔を担い、ほぼ8列の手術体制をキープしている。土屋院長は新部長就任当時に「麻酔科医の枠は14人まで用意できるが、すべては難しいので、キーパーソンに少しずつ来てもらいながら大学からの応援も借り、全体を改革していきたい」と話しており、徐々に常勤を増やしていく考えだ。つまり、同病院の手術件数の回復は、非常勤医の応援があることが前提だ。
 
 非常勤医はアルバイト料の「謝金」で賄われている。同病院では昨年12月から非常勤医を増員したために、当初約2000万円程度の予算だった謝金が約5000万円と、倍以上に膨らんでいた。
 
 通常の謝金は、同院に派遣される講師や、どうしても埋まらない場合の臨時の非常勤職員に謝礼として支払われることを想定したもので、毎年大きくは変わらない金額が計上される。今回の麻酔科医不足の問題について政策医療課は、「このようなことはイレギュラーケースで、『謝金』はそもそもそういうことを想定した予算にはなっていない」と話す。

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