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ニュース〜医療の今がわかる

医師の給与、コスト調査で切り下げか ─ 中医協分科会

■ 「管理不能なコストを診療報酬で反映することが必要」 ─ 石井委員
 

[石井孝宜委員(石井公認会計士事務所所長)]
 (調査の)もともとのご趣旨が医療機関等の適切な反映を診療報酬サイドに行うということ。

< 調査の経緯 >
 「医療機関の部門別収支に関する調査」は、平成15年3月28日の閣議決定に基づき、診療報酬体系に医療機関のコスト等を適切に反映させるため、医療機関の診療科部門別収支の統一的な計算手法を開発することを目的とし、平成15年度から調査研究を開始した。
 ※ 健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針(平成15年3月28日 閣議決定)
 第3 診療報酬体系
 3  具体的な方向
  (2) 医療機関のコスト等の適切な反映
   入院医療について必要な人員配置を確保しつつ、医療機関の運営や施設に関するコスト等に関する調査・分析を進め、疾病の特性や重症度、看護の必要度等を反映した評価を進めるとともに、医療機関等の機能の適正な評価を進める。
 先ほどから委員の先生方がおっしゃるようにデータが精緻化してきたのだから、ぜひ診療報酬改定に活用することが望ましいと思う。

 最初に(同分科会に)出席した時に比べると、非常に価値の高いデータ。視点を少し変えると、病院の経営内容はこのようなデータによってかなり透明化してきている。10年前によく言われた「病院の経営は不透明で、効率的なのか非効率なのかすら分からない」というような時代とは随分変化してきている。一般の企業に比べても不透明だとは言えない。

 こちらの部局(保険局)ではこのようなデータがあるが、同じ厚生省内でもほかの部局(医政局)には「病院経営管理指標」があるし、(保険局は)「医療経済実態調査」もやるわけで、大変、そういう意味では情報の透明性は輝いてきている。

 ただ、先ほど猪口委員が指摘したように、(現在の病院経営は)ほとんど採算性が存在しない状況をどのやって改善するのか。あるいは、(診療科や受診形態などで病院経営の)中を見てみると、採算性が十分に存在している領域もあるようだと。

 そうすると、医療費を適切に配分するということも、やはり考え直しをしていくということに対しては、このデータは非常に活用性がある。この辺りは、ぜひともお考えいただきたい。

 それから、実は病院経営の中で管理できない部分がある。特に人件費の中で「法定福利費」と言われているものは全く管理不能。雇用形態そのものを変えて、「非正規就業者中心にする」ということをすれば、法定福利費の削減は可能かもしれないが、わが国の医療システムはそのようなものを前提としていない。

 しかし、「法定福利費はすべて上がる」という傾向があり、この10年間でとてつもなく増加し、給与費全体のほぼ10%ぐらいを占めている。あるいは、今後もしかしたら議論するだろうと言われている「控除対象外消費税」。これは税率が変化すると自動的に負担が増えるので管理不能。

 実は、医療経営の中にはかなり管理不能なコストがあるという事実をきちんと認識しながら、少なくともそのようなものについては、診療報酬で反映していくという考え方が必要ではないかと理解している。

 ぜひ、その辺りをできる限り中医協サイドで認識していただきたい。

 ※ 医療における「控除対象外消費税」の解消(見直し)を求める意見書が全国の都道府県議会で相次いで可決されている。このうち、茨城県議会の2007年第3回定例会で可決された意見書は次の通り。

医療における控除対象外消費税を解消することを求める意見書

 消費税は本来、「最終消費者が負担し、それを事業者が預かって納める」ものであるが、社会保険診療報酬に対する消費税は非課税とされているため、医療機関の仕入れに係る消費税額(医薬品・医療材料・医療機器等の消費税額、病院用建物等の取得や業務委託に係る消費税額など)のうち、社会保険診療報酬に対応する部分は仕入税額控除が適用されず医療機関の負担となっている。このような控除されない消費税を「控除対象外消費税」という。
 控除対象外消費税に対しては、平成元年の消費税導入時と平成9年の消費税率引き上げ時に、診療報酬に「補填」の上乗せが行なわれ、現在の上乗せ合計1.53%をもって医療機関をめぐる消費税の問題は解決済みとされてきた。
 しかし、その後の診療報酬改定で、項目が包括化されたりマイナス改定されるなどして上乗せが暖昧になっており、補填されていないと考えるべきものが多数ある。
 医療機器、病院用建物等の取得の際に負担する控除対象外消費税は多額となり、これが医業経営の安定、病院施設・設備の近代化の隘路となっている。さらにこの負担によって地域の医療機関が破綻する懸念も高まってきており、地域医療の崩壊が危倶されている。
 よって、国においては、今後、消費税を含む税体系の見直しが行われる場合には、社会保険診療報酬等の消費税非課税措置についても、吹のとおり格段の措置を講ずるよう強く要請する。
 ・ 社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし軽減税率による課税制度に改めること。
 ・ 社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし軽減税率による課税制度に改めるまでの緊急措置として、医療・機器、病院用建物等の消費税課税仕入対象資産について、税額控除または特別償却を認める措置を創設すること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 [小野太一・保険医療企画調査室長]
今の石井先生のご指摘、大変勉強になった。(診療報酬改定の基礎資料にするために実施する)「医療経済実態調査」では、法定福利費を含めた形で人件費を計算しているし、消費税の額を計算する際にも、「医療経済実態調査」のデータを使っている。

 その......、「反映した結果がこれか」というのはいろいろなお考えがあるかと思うが、一応、そのようにしているという指摘だけはしておきたいと思う。

 【目次】
 P2 → 「調査を簡素化して、多様な医療機関の参加を」 ─ 厚労省
 P3 → 「コスト計算に基づく診療報酬の構築を」 ─ 猪口委員
 P4 → 「ケアミックス病院は、『診療科群』に準じた扱いで」 ─ 池上教授
 P5 → 「総合診療ベースで見るなど切り口を変えて」 ─ 佐栁委員
 P6 → 「フランスでは、医師や看護師らの給与の『標準原価』を計算」 ─ 松田委員
 P7 → 「管理不能なコストを診療報酬で反映することが必要」 ─ 石井委員
 P8 → 「標準原価と実際原価は二者択一の関係ではない」 ─ 池上教授

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