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ニュース〜医療の今がわかる

 出産育児一時金騒動を振り返るシリーズの3回目。(1回目2回目

 この問題を正しく理解するには、厚生労働省にとって産科医がどのような存在なのかを知らねばならない。

 ロハス・メディカル誌8月号でも特集したように、厚生労働省が医療機関の統制手段として用いてきた「指定と補助金」の関係を振り払おうとした医療機関がある。今年3月に総合周産期母子医療センターの指定返上をブチ上げた愛育病院がそれだ。

 赤字必至の診療報酬体系にして、補助金や税補填がなければ潰れる、つまり厚生労働省に逆らえないよう医療機関を「調教」してきた厚生労働省からすれば、まさに青天の霹靂だったはずだ。しかし産科で名を売る愛育病院が反旗を翻したのは偶然ではない。産科だけは、補助金がなくても潰れないのだ。分娩取り扱いの価格決定権が医療機関側にあるからだ。もっとも、地方の場合は自治体病院の多くが収支に関係なく出産育児一時金の近辺に値決めしており、それが周辺の相場にも影響を与え、産科診療所の価格決定権は弱い。そしてそれが地方に産科診療所の増えない原因の一つとなっていて今回の騒動の遠因にもなっているようだが、それは別稿で改めて触れる。

 健康保険から一律の金額(それがまさに出産育児一時金)が被保険者に支給されている一方で、妊婦側が納得して払う限り、いくらに値決めしても構わない。それぞれの施設が、最低限の安全面だけ担保して、様々に付加価値を付けて価格に反映させている。分娩取り扱いが「医療行為ではない」からという理屈で許されているわけだが、実態だけ見れば混合診療と何ら変わるところはない。

 この構図は厚生労働省にとって蟻の一穴だ。世の中全体がこの実態に気づき、「医療全部に混合診療を許しても、厚生労働省や日本医師会が言うような問題は起きないんじゃないか?」と考えるようになったら、せっかく長年かけて築いてきた統制の仕組みが全てパーである。

 厚生労働省とすれば分娩取り扱いを医療行為にして統制下に入れたいのはヤマヤマだが、そうすると助産師が独立開業して分娩を取り扱うことができなくなってしまうため、普段はあまり産科医と仲の良くない助産師会や看護協会も、この点では共闘関係になる。

つづく

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