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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼2 松村有子・東大医科研特任助教


村重
「そうですね。過失の有無を見ているか、患者さんの被害の程度やその後の生活を見ているか、という違いですね。これまでの法制度の考え方と全く違う新しい概念でやってらっしゃると思うので、そこも理解してもらえるといいなあと思いますね。募金してくださるのは、やはり医師でしょうか」

松村
「募金は、どなたからでも受け付けているんです。今までご寄付いただいたので、やはり一番多いのは、産婦人科の先生方が毎月決まった額を送ってくださったりで支えていただいています。ご自身で出産の時につらい経験をされて、周産期医療って大切だと思いましたということで寄付を続けてくださっているお母さんもいらっしゃいます。実際に身内の方が亡くなったというご遺族の方からもいただいていたりします。そういう皆さんのお気持ちをお伝えして、お見舞金をお渡しすることで、何らかの、ご遺族が、人を信じられるという気持ちを取り戻せるようなきっかけになればいいなあということです」

村重
「本当に皆さんの気持ちがこもったお金なのですね。会の構成メンバーはどういう方々ですか」

松村
「産婦人科医と市民、弁護士も入って、アドバイザー的なADRの専門家もいて、それで事務局は私がやってます」

村重
「ただ単にお金を渡しておしまいではないとか」

松村
「募金活動を始めてから、お渡ししたのがこれまで2例です。詳細は個人情報なのでお話できないんですけど、私たちも経験がありませんですし、ご遺族にも当然経験のないことです。だから本当に今こう試行錯誤しているところなんですけれど、ご遺族が一番言われるのは、幸せである所から突然に突き落とされて、お母さんが亡くなる、非常に不幸な経験をされて、なおかつ怒りとか悲しみとかのぶつけ先がない。で、医療側に訴えても、でも遺族が求めるような答えと、病院側の出す見解とは、そもそも目的が違うので噛み合わない話なんですね。そこで我々のような第三者が入ることで、双方のお話しを聞くことができて、感じていることをお互いに噛み合わせるようなことを今やろうと思っているんですね」

村重
「国ですらできないことをなさっているんだから大変でしょうね。ご遺族とは、どんなふうに連絡を取られてるんでしょうか」

松村
「そんなにしょっちゅうではないですけれど、私個人は、会の一員としてボランティアの立場で月に1回くらい連絡を取ったりしている感じです。会としては、忘れないということ、担当した産科医が忘れないのは当然なんですけれど、会の立場の人間も奥さんが亡くなったことを忘れないということで、命日にお花を贈ったり、お気持ちを思いつつ、聞く立場でいたいなと思っています。産科医の先生にとっても、凄くショックな体験なわけですよね。一生に一度当たるかどうかの頻度ですから、非常にショックなことで、その先生自身も話せない、話す場がないので、そういう所を我々の会の産科医の先生が話を聞いて、次につなげられるようにですね、こういうことを気をつけてやっていこうねとか、病院の中でリスクマネジメントができてないことに、そのことがきっかけで初めて気づいて産科の先生が一生懸命病院に働きかけたりというのを、話を聞いて気持ちの部分で支えたりですとか、そういう活動をこの1年はやってきたかなという感じです」

村重
「忘れないでいるということと、将来に向けて教訓にできる部分があれば、それを生かしていくということですね」

松村
「そうですね。ご遺族の方も、産科の医療によって子供は助けてもらったという部分で感謝の気持ちもあるようなんです。一方で、どうしてお母さんを助けてくれなかったんだという気持ちもあります。ただ、医療の中で、いくら努力しても亡くなることはあるし、人間の力ではゼロにはならないということも理解はされている。でその中で、亡くなって半年は地に足がつかないというんです。佐々木孝子さんも声をかけてくださったんですけれど、亡くなって1年経つまでは本当に何も手に付かない、自分で何を話したらいいのかも分からない状態なんですよ、と仰います。時が経って、何をしたいかとか、何を大事にしたいかとか、ご遺族に自分の気持ちができてきた時にもサポートを続けたいなと思っております。でもまだ1年ですので、ご遺族の方自身も何をどう話していいかの整理がつかない状態です。その間に産科医とご遺族の縁が切れてしまうと、また遺族が気持ちをどこにも持っていきようがなくなってしまうので、そこは必ずつないでいこうと、で当事者どうしだけだとお互いに遠慮があったり逡巡があると思いますので、我々のような第三者が中に入って信頼をつないでいけるようにしたいと思っています」

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