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「ドキシル」出来高算定でも、厚労省の方針に変更なし

厚労省企画官をただす齊藤委員0519.jpg 抗がん剤など高額な薬剤を使用した場合にDPC(包括払い)では不採算になってしまう問題について厚生労働省は5月19日、卵巣がんに関する5つの診断群分類を出来高算定とする対応案を中医協の分科会に示し、了承された。しかし、高額薬剤の使用に伴う不採算への対応について、従来の方針を変更して出来高算定としたわけではない。(新井裕充)

 厚労省案によると、次期改定まで出来高算定とするのは卵巣がんの治療薬「ドキシル注20mg」(一般名=ドキソルビシン)に関連する5つの診断群分類。5月26日の中央社会保険医療協議会(中医協)で正式に承認されれば6月からの変更も考えられるが、同省の担当者は「中医協の議論次第」としている。

 ドキソルビシンは昨年4月に卵巣がんの適応が追加され、現行ルールに従って2010年度改定までは出来高算定だったが、今年4月の診療報酬改定で包括払いに組み込まれてしまった。このため、不採算のために同剤が使われなくなる懸念が卵巣がんの患者会などから出ていた。

 厚労省は5月19日、DPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)で高額薬剤に関する分析結果を示し、「ドキソルビシンは他の高額薬剤との比較を見ても別の診断群分類を設定した包括評価の導入を検討する必要があった」とした。
 その上で、診断群分類の見直しは医事会計システムの変更など医療現場に影響を与えることから、「当面の間、対象となる診断群分類に該当する患者については出来高算定とする。当該診断群分類に該当する場合はドキソルビシンを使用するしないにかかわらず出来高算定とする」との対応案を示し、反対意見なく了承された。

【医療機関の赤字には配慮しない方針】
 高額薬剤の取り扱いをめぐっては、入院医療費の包括払い制度(DPC)を導入している病院で患者の治療に支障が出ることが以前から問題視されている。1日当たりの入院費の中に投薬の費用が含まれているため、高額薬剤費が包括化されて赤字になってしまう場合には、その使用を控える傾向にあるといわれる。
 このため、一定の高額薬剤は包括払いから外して出来高算定にすべきとの声もある。しかし、厚労省は高額薬剤を出来高算定にせず包括化する姿勢を崩さない。

 昨年7月6日の同分科会で厚労省の担当者は「高額薬剤を使用した場合と使用しなかった場合でツリー(診断群分類)を分けざるを得ない。このことを考慮すると、高額薬剤を出来高で評価する必要はなくなってしまう」と説明。出来高払いにせず、新たな診断群分類をつくって対応すること(包括払い)を提案し、その後の中医協でも了承された。
 ただ、高額薬剤のうち抗がん剤については、現行ルールの検証を求める意見が中医協の診療側から再三にわたって出され、中医協下部組織のDPC評価分科会で検討を進めることになっていた。

【今後の課題は基準の射程範囲】
 今回、厚労省は「薬剤の使用に伴い平均在院日数が短くなってコストが増える」というケースは新たな診断群分類で対応するという基準を示した。ドキソルビシンはこの基準に該当する薬剤であったため、新規の診断群分類をつくって対応するケースだったと結論付けた。
 ただ、ドキソルビシンの使用が想定される5つの診断群分類を見直すことは現場に影響を与えるため、次期改定までの間は出来高算定とした。今後、高額薬剤の取り扱いについて同分科会で検討を進める方針。

 今後の課題は、厚労省が示した基準の射程範囲。今回、厚労省は「平均在院日数」をX軸、「医療資源の投入量」をY軸として、ドキソルビシンの分布が「Y=Xから離れた所にある」という理由で同剤を別扱いにした。
 しかし、「離れている」の意味について、DPC評価分科会の委員から「(Y=Xの)傾きか、平行移動か(いずれを基準にするか)によって今後の方向が違う」との意見も出ている。

 今回のドキソルビシンのようなケースは「氷山の一角」との声もあるため、次回5月26日の中医協で診療側の委員がどこまで踏み込んだ主張を展開するかが注目される。「ドキソルビシンについては、これで良かった」ということで終わるだろうか─。

 ▼ 高額薬剤の使用に伴う不採算解消の"抜け道"として、DPC病院に入院中の患者を他の医療機関で外来受診させる方法もあるが、厚労省はこれを封じている。3月29日に発出した「疑義解釈その1(DPCの問116)」で、「入院中の患者が他の保険医療機関を受診した場合、外来でしか算定できない診療料は算定することができるか」との設問を示し、「算定できない」と回答している。
 この解釈に従うと、DPC病院に入院中の患者を別の専門病院などに外来受診させた場合、その外来診療分がDPC病院の持ち出しになってしまう恐れがある。このため、医療関係者などから「患者の受診抑制につながる」との批判が出ている。この件について厚労省の担当者に何度問い合わせても「DPCは包括だから」と答えるだけで、明確な理由を説明しない。

 なお、厚労省の説明と質疑応答の要旨は2ページ以下を参照。00_0519DPC評価分科会.jpg
 【目次】
 P2 → 高額薬剤23製品の概要1(経緯など)
 P3 → 高額薬剤23製品の概要2(分類表)
 P4 → 分析方法
 P5 → 分析結果1 ─ 図の見方
 P6 → 分析結果2 ─ 全体の分布状況
 P7 → 分析結果3 ─ パターンⅠについて
 P8 → 分析結果4 ─ パターンⅡについて
 P9 → 分析結果5 ─ ドキソルビシンについて
 P10 → 分析結果6 ─ ソラフェニブトシル酸塩など3薬剤
 P11 → 分析結果7 ─ まとめ
 P12 → 今後の対応案
 P13 → 「他の高額薬剤を考える場合にも大変重要」 ─ 齊藤委員
 P14 → 「価格は高いが在院日数が短いのが理由」 ─ 山口委員
 P15 → 「傾きか平行移動かで今後の方向が違う」 ─ 伊藤委員


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