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「女性という『性』を失う」子宮頸がん‐癌研公開講座で患者会の穴田佐和子氏


その他、私がとても感じることは、後遺症とは言えないかもしれませんが、心の問題を抱えます。私達は卵巣を取ってしまえばホルモンが全部出なくなりますから、自律神経系も乱れてしまうんですけども、いきなり20歳30歳でがんで手術をした後からホルモンが出なくなりますから、更年期障害の症状になってしまいます。ホットフラッシュが起きたり、暑くなったり寒くなったりを繰り返して、汗が止まらなくなったり、心が不安定になったりします。その他にも手術を受けたり生活が変わるということで、仕事、家庭、お金の問題、その他にも女性という性を失うというメンタルな面でも体的な部分でもそういう問題、そして何より再発転移という命の問題も抱えることになります。私の患者会の中でも鬱になってしまったり、とても思い悩んでおられる方が多くいます。これはとても大きなことなんですけども、私は自分が悩んだことからどうしたらよくなるんだろうと考えて、いろんな患者会に自分から行ってみました。いろんなところで話すと、話をしているだけで、すごく楽になるんですね。心の薬というのはないですけども、話をする事、聞いてもらう事、同じ仲間と分かち合う事、その大きさをとても感じています。
 
色々私の感じてきた事をお話ししましたけども、今色々思う事を、私は詩に書いています。二つ詩に書いたんですけども、皆さんに聞いて頂きたいと思います。一つは「ママ」という詩です。私には当時3歳になる娘がいまして、仕事をして元気にしていた生活からいきなり大学病院で半年を過ごすことになりました。3歳の娘はその時とても不安だったと思うんですね。ママががんになってしまった事、ママが死んでしまうかもしれないと思った事、とてもとても不安に思ったと思うんです。その時の詩です。今日皆さんの前に立つということで、鏡を見ようかなと自分のポーチを取り出したらですね、なんとこんなの(カブトムシの模型)が入っていまして(笑)、朝娘が仕込んだものと思われますが、3歳だった娘が今は11歳になっています。今は元気に過ごしていますが、当時まだまだ小さかった娘が、私ががんになってしまったということで、その時私は色々悩んだんですけれども、娘にはほとんど全てのことを話しました。ママはがんになってしまった、だから治療しなければいけない、だけれども元気になってえみちゃんのところに帰ってくるからねという話を何度も何度もしました。私は話さないという選択も考えたんですけども、まだ3歳の子供にとってがんという言葉は未知の言葉です。そしてがんという言葉は「ママはがんになってしまった」ということでいろんな人から耳にするだろうと思われたんです。だから、ママはがんなんだね、とか、ママは死んじゃうの? とか余計な事を娘の耳に入れられる前に「ママはがんだけど、ママは治療して帰ってくるんだよと、ママは全部えみちゃんに教えてあげるよ、だけど大丈夫だよ」というふうに言おうと思ったんです。その時の詩です。
 
「ママ、ママが早く病院に帰ってくれますように」。そう小さくつぶやいた言葉に、私は驚いてしまいました。「神様にお祈りしてたの」と言う小さな娘は、「えみがママと会ってると病気治せないから」と恥ずかしそうに笑いました。本当はもっと一緒にいたいくせに、少しの間、離れている間に小さな胸を痛めていたのかと思うと、たまらなくなって思わずぎゅっと抱きしめる。イヤイヤをして「ママは死んじゃうの?」と小さく私につぶやいた。「ママは大丈夫だよ。早くよくなってえみのところに帰ってくるからね」と言ったら、「分かった。バイバイ!」とすたすたと駅に向かって歩き出す。一緒について来てくれた母がすかさず後を追うと、いきなりえみが振り向いて、「ママー、ママー、死んだらいやだー」と私に向かって駆けてきた。母は黙ってバタバタと暴れる娘を抱いて、こちらを一度振り向いて頷くと、そのまま駅に歩いて行きました。ごった返す新幹線の改札口の階段に、いつまでもいつまでも娘の声が響いていました。ごめんなさい、小さいえみちゃん、そしてお母さん。ママのせいで悲しい思いをさせてしまって。私のせいでつらい思いをさせてしまって。絶対元気になるからね。ママは死んだりしないから。きっと負けたりしないから。あの日の事、あの日の思い、私は絶対に忘れちゃいけない。
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