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診療所と病院の配分見直しの議論、ようやく開始 ─ 7月8日の中医協

7月8日の中医協.jpg 総枠が決まっている医療財源を病院と診療所でどのように配分すべきか─。2010年度の診療報酬改定に向け、この議論がようやく中医協で始まったが、病院団体の姿勢は相変わらず弱腰だ。(新井裕充)

 中央社会保険医療協議会(中医協)の基本問題小委員会(委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)が7月8日に開かれ、厚生労働省は救急・周産期・小児医療に関する資料を示した。

 同日は、医療提供体制の整備などを担当する医政局から三浦公嗣指導課長が出席し、救急・周産期・小児医療をめぐる現状や課題について報告した後、議論に入った。

 意見交換の冒頭で、竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)が5分以上にわたり演説。「救急医療、小児科、産科も含めて、これは国の政策医療という分野で大きくとらえていかなければいけない」などと述べ、3分野の重要性を訴えた。しかし、このような意見表明は本来、病院団体の委員が率先すべきように思う。

 一歩出遅れて発言した西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)の口から出たのは、「診療報酬でどこを見るかということもあるが、その前に、やはりほかの政策やほかの財源など、総合的な議論をどこかでしなくてはならない。その中で診療報酬の役割を明らかにすべきだと思っている」という頼りない言葉だった。

 発言の終わりで、付け足したように「救急にはもっと大きく金を付けるべきだと思っている」と述べたところ、即座に藤原淳委員(日本医師会常任理事)に切り返された。

 「救急の財源の話になるが、救急をすべて診療報酬で見るのか、あるいはもっと他の補助金であるとか、国や都道府県の対策などを絡み合わせながら見ていくのか、そこのところが、これを考えていく上で重要な視点になる。診療報酬で全部、救急医療を見ようとするとかなり無理があるような気もする」

■ 次期改定は「救急医療」で火花
 
 治療や検査などの対価として医療機関が受け取る診療報酬は2年に1回のペースで見直される。前回の診療報酬改定では、医師不足が深刻化している産科や小児科などの病院勤務医の負担軽減策を「緊急課題」に位置付け、これに約1500億円を充てた。

 診療報酬本体のプラス0.42%(約1100億円)をすべて勤務医対策に振り向け、約400億円は「軽微な処置の包括化」や「外来管理加算の要件見直し」など、診療所にとって点数の引き下げになる改定、いわゆる「診療所から病院への財源委譲」を行った。前回の改定で最大の焦点だった診療所の再診料引き下げは、最終的に公益委員の裁定で見送った。

 診療所の再診料引き下げを主張した支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)は、「1500億円で十分か」と最後まで反発した。2008年度の診療報酬改定の答申には、「初・再診料、外来管理加算、入院基本料等の基本診療料については、水準を含め、その在り方について検討を行い、その結果を今後の診療報酬改定に反映させる」との意見が付され、再診料をめぐる攻防はいったん幕を閉じた。

 2010年度の診療報酬改定に向けた基本診療料の議論は4月15日に再開したが、この日は資料の説明に終わった。その後、DPCの退出ルールなどの議論でもたついた。

 6月10日、ようやく基本診療料の本格的な議論が始まると思われたが、事務局(保険局医療課)が示した資料に対馬委員が不満を表した。診療所と病院の診療報酬の配分を見直すには不十分で、「全体像が見えない」というメッセージに思えた。支払側の他の委員も、「次回こそはダイナミックな改定をしてほしい」と求めるなど、手ぐすねを引いて待っているように見えた。

 支払側委員としては、「救急医療を充実させるため、病院の診療報酬を手厚くすべきだ」という主張を展開したいところ。これに対して日本医師会は、「救急医療の充実は診療報酬よりも国の補助金事業」という方向に議論を持っていきたいところだろう。

 こうして迎えた7月8日、厚生労働省は救急・周産期・小児医療をめぐる取り組みや課題など、詳細なデータを示して議論を求めた。

 委員の主な発言は以下の通り。

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