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医師の給与、コスト調査で切り下げか ─ 中医協分科会

コスト調査分科会2_0710.jpg 診療科別の収支調査について2回にわたってお伝えしたが、あと1回だけお付き合い願いたい。結論から言えば、政権交代しない限り医療崩壊の流れは食い止められないだろうとの思いを強くした。(新井裕充)

 「病院運営に掛かるコストを診療報酬改定に反映させる」─。

 一見もっともらしく聞こえる中医協の「医療機関のコスト調査分科会」は年1回のペースで開催されている。昨年は6月13日、今年は7月10日に開催された。

 コスト調査の研究グループのトップは池上直己・慶應義塾大医学部教授。昨年の会議では、池上教授の調査・研究の成果を約30分にわたって委員らが"ご静聴"した後、意見交換に入った。委員らが、「階梯式配賦法」「特殊原価調査」「等価係数」など、池上教授独自の専門用語に目を白黒させていたのが印象的だった。

 前回会議のまとめとして、池上教授は「実用可能な段階になった」と自信を見せ、委員らもこれに賛同した。その後、昨年10月に調査を実施し、その結果を発表したのが今年の会議となる。

 調査対象は、事務体制が整っている127のDPC病院。調査によると、深刻な医師不足が指摘される「産婦人科」が昨年と同様に黒字という結果。「入院が黒字で外来は赤字」という結果も前回の結果と同じだった。今後は調査を簡素化して、より多くの病院が参加できるように改良するという。

 その狙いは何か─。

 今回のコスト調査と似た会議として、「医療機関の未収金問題に関する検討会」がある。これは、未収金問題に苦しむ病院団体が厚生労働省にお願いして設置させた会議。

 ところが、何らかの法的な措置を講じるような検討が進むかと思いきや、「病院は回収努力せよ」と戒める内容で議論は終始一貫した。報告書をまとめた会議では、病院関係者からブーイングの声が上がった。病院団体が描いた当初の狙い通りに行かない、そんな会議だった。

 では、今回の医療機関のコスト調査はどうか。設置の端緒は違うものの内容は似ている。委員の中には、「エビデンスに基づく診療報酬改定」を主張し、今回の調査がさらに進むことを要望した病院団体の幹部もいる。しかし、これはあまりにも楽観的に過ぎないか。

 病院運営の中では、総務や経理の事務職員など診療報酬の点数が付かない非収益部門がある。また、救急医療のように収益につながる患者が何人来るか分からないのにスタッフを待機させ、設備を稼働させておくコストが掛かる部門がある。そこで、このようなコストを診療報酬で補填するため、厚生労働省がこのようなコスト調査をしている──

 などと、病院団体の委員は考えているのだろうか。むしろ逆ではないだろうか。「コストを把握し、無駄なコストがあれば診療報酬を引き下げる」というのが真の狙いではないだろうか─。

 もし、客観的なエビデンスに基づく診療報酬改定を考えるなら、「外来が赤字」という結果を踏まえ、「外来管理加算」の見直しに大きく舵を切るはずだが、そんな気配はない。むしろ、「入院が黒字」ということを強調して、「入院基本料」の引き上げ主張をけん制しているようにも見える。

 同分科会で、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)は次のように指摘した。
 「同じような調査をフランスでやっている。フランスの場合には、いわゆる『標準給与表』というのがある。医師、看護師、いろいろな事務職について。そういうものに基づいて『標準原価』みたいなものを計算していく。『標準原価』を計算することによって、国レベルでの診療報酬の決定にも寄与している」

 これに対して、池上教授は「単なる標準値」を使うのではなく、「等価係数」という標準値を使うことを強調した。これらの発言から今後の流れを先読みすれば、医師や看護師らの人件費計算の基礎となる「等価係数」をまずDPC病院に導入するのだろう。

 2010年度から導入される「新たな機能評価係数」によってDPC病院の地域偏在を解消する流れをつくる一方、医師の診療科偏在は「診療報酬の偏り」を是正することで解消していこうという狙いかもしれない。

 その結果、「医療機関のコストを適切に反映してほしい」という病院関係者の願いとは逆の方向に進むだろう。これまでの厚生労働省のさまざまな会議を見る限り、厚労省は「医療機関の機能分化と連携」という名の下に、中小規模の民間病院群を減らしたいように思える。

 最初に描く青写真がある。確保したい予算要求の分野が先にある。「天下り先の確保」というのは言い過ぎかもしれないが、最初に決めたゴールを支えるための資料を作るため、質問項目などを工夫している。厚生労働省の調査結果を見るたび、そう感じる。

 ここはもう、政権交代をして現在の厚生労働省の主要部局のトップを入れ替え、御用学者だらけの審議会の在り方を大胆に見直さないと、医療崩壊の流れは食い止められないのではないか。

 以下、コスト調査の今後の方針について了承した同分科会の後半部分からお伝えする。オススメは5ページから。

[田中滋分科会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)]
 (平成20年度医療機関の部門別収支に関する調査報告案について)了承いただいたとして、基本問題小委員会の求めに応じて私が分科会を代表して報告する。よろしいだろうか?  (「異議なし」との声あり。了承)

 ありがとうございました。では、そのような取り扱いにさせていただく。では、2番目の議題に移る。「医療機関の部門別収支に関する調査の今後の方針(案)」について、事務局(保険局医療課)から説明をお願いしたい。

 【目次】
 P2 → 「調査を簡素化して、多様な医療機関の参加を」 ─ 厚労省
 P3 → 「コスト計算に基づく診療報酬の構築を」 ─ 猪口委員
 P4 → 「ケアミックス病院は、『診療科群』に準じた扱いで」 ─ 池上教授
 P5 → 「総合診療ベースで見るなど切り口を変えて」 ─ 佐栁委員
 P6 → 「フランスでは、医師や看護師らの給与の『標準原価』を計算」 ─ 松田委員
 P7 → 「管理不能なコストを診療報酬で反映することが必要」 ─ 石井委員
 P8 → 「標準原価と実際原価は二者択一の関係ではない」 ─ 池上教授
 

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