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「早く追い出せ」 ─ DPC点数表見直し案

■ 「入院期間の短縮が進むが、受け皿があるのか」 ─ 藤原委員
 

[藤原淳委員(日本医師会常任理事)]
 DPCは基本的に、入院期間短縮のインセンティブを持っている仕組みだと見ている。これは以前、企画官から「そうではない」と言われたが。ただ、現状はDPC病院の増加とともに、短縮が膠着してきたという状況があるのではないかと思う。

 そういったことに対して、さらに短縮する、もう少しの動機を与えるものが今回の提案の一番の根本にあるのではないか。確かに、先ほど例として挙げられた一部は(DPC点数が)出来高を上回るケースもある。でも、これは全体を示しているものではなくて、あくまでも一部という認識を持っている。

 よく、このこと(平均在院日数)で、アメリカが引き合いに出されるわけだが、米国は確かに入院期間が短いが、米国には(急性期病院の受け皿となる施設として)SNF(Skilled Nursing Facility)という、これは急性期病院とよく似た、急性期病院のレベルの施設がある。そこの入所日数は(急性期病院の)入院日数に換算されない。これは、政治的な意図でそのようにされていると言われている。

 ▼ 米国の入院日数が短いとされているが、これは「統計上のトリック」という指摘。このほか、米国では日帰り手術が増えたので、外来の医療費が増加し、入院日数の短縮が医療費を抑制する効果を上げていないとの指摘もある。

 言いたいのは、入院期間の短縮が進む......、恐らくこれ、短縮が進むと思うが、そうした場合、しっかりした受け皿が日本においてあるのかどうか。いや、私は、日本でその後方施設が十分でないと思っているが、この後方施設を充実させるということが、まさに医療を受ける側、国民の立場に立った政策の進め方ではないかと思っている。

 この方向性、要するに、日本の場合、受け皿が不十分という状況の中で、これを短縮することを急がず......。欧米などと......、そういった急性期病院だけではなく、長期療養病床を含めた全体的な医療施設体系を示していただいて、その上で、こういったものをどのように進めていくのかをゆっくり、もう少し時間をかけて検討していくべきではないかと私は思っている。

 今回のDPCの提案については、いささか抵抗を感じるところ。

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 ありがとうございます。急性期病院の患者さんの受け皿体制も含めた意味で、総合的に医療提供体制を考えるべきだという、こういう「ご意見」だということでよろしいだろうか。

 それとも......。

[藤原委員(日医)]
 (語気を強めて)できれば......。

 もし、1つのモデルとして、アメリカなどがあると思うが、そうした場合のベッド体制がどうなっているのか、そういったことを比べながら、日本の置かれた位置、状況をきちんと把握してこれを進めるということが1つの政策の在り方だと思っている。だから、そこら辺を提示していただければ幸い。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 あの......。医療提供体制、どうあるべきかという議論は、社保審の「医療部会」等々があるし、総合的に考えなければいけない話だと思う。

 ただ今の議論は......、藤原委員のご発言の前提となっているのは、今回、事務局(保険局医療課)が提案した(DPCの診療)報酬体系の変更が、在院日数の短縮化を促進させるのだという、そういう前提に立ってのご質問だと思うので、その辺について、そもそも、今回のご提案の趣旨というものが、在院日数の短縮とどう関係するのか、どういう位置付けなのかということについて、企画官、何かあればご発言いただきたい。

[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
 お答えする。先ほどもご説明したが、(資料)「診─1─1」(診断群分類点数表の見直し案)の「概要」にあるように......。

 大部分の診断群分類については、現行の設定方法で問題ないが、一部、実際の医療資源の投入量に合わなくなってきているということ。これまでは、そういったものについて(前年度の収入実績を保証する)「調整係数」による補正がなされていたが、今後、徐々に「調整係数」をなくしていくという中で、そういう補正が効かなくなってくる。

 ということで、むしろ在院日数を短縮するというよりは、実情に合うような設定方法をつくるべきであるということから、このようなものを考えているところ。

 見かけ上は、確かに藤原委員がおっしゃるように、「別紙4」(入院初期の投入量が非常に大きい場合)の急なカーブについては......、確かに最初のほうの点数を高くして、見かけ上そういうふうに見えるかもしれないが、これもむしろ現状に即する形であるということ。

 また、「別紙5」(大きな違いがない場合)のなだらかなケースについても、やはり現状に合うように、つまり、このケースについては、「別紙3」にもあるように......、むしろ現状のままにしておけば、長く入院させておけばコスト割れをするという仕組みになっているが、これもちゃんと補正をする。

 「現状に合うように補正する」ということで手を打とうとしているわけで、決してわれわれとしては、これによって在院日数の短縮を促進することを図ろうとしているものではない。あくまで、現状に即した形というものを考えている。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 はい、ありがとうございます。藤原委員、どうぞ。

[藤原委員(日医)]
 われわれ(日医)は、公的病院のDPCと出来高病院とを比較した調査をしたことがあるが、これで見ても、今、現状でもDPC病院と出来高病院を比較すると、1.2倍から1.8倍ぐらいの差がある。

 確かに、DPC病院は先行している病院。それなりに設備も充実しているし人員配置等も充実しているし、機能も良いものを持っていると思うが、それにしても現状でそれだけの差があるわけだから、その中で、まだ考える余裕があるのではないかと思っている。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 先ほどの企画官からのご説明では、あくまでも出来高評価で見た、つまり医療資源の投入ベースに点数体系を合わせるという趣旨で行われたものであると。

 (今回の提案は)分科会で決定されているが、そこでの(意見)......、そもそも、医療現場からのさまざまな要請に応じてそういう対応を取っていると聞いているので、従来のやり方の中で、やや違った診療パターンがある場合に、そのための補正の案ということで、特例的に認めているということで、在院日数の短縮化を目的としたものではないということ。

 その理由の1つとして、「別紙5」にあるようなケースでは、長期入院......、むしろ現状では......、短期で退院させるようなインセンティブになっているものをそうでなくしているというケースもあり得るという説明だった。あくまでも在院日数の短縮化を目的としているものではないという説明だった。

 ▼ 分科会で議論されたのは「別紙4」(急なカーブ)のケース。分科会では、医療機関の持ち出しになる入院初期を引き上げるだけなら医療機関にとってメリットになるが、「入院期間Ⅱ」以降を下げてしまうので「トータルでは変わらない」ということが問題になった。そこで、「引き上げになるケースもある」ということで、「別紙5」を強調しているのだろう。

[藤原委員(日医)]
 それ(別紙5)については私も否定しないが、それは......、ちょっと、やはり一部の問題で、それ(別紙5のケース)があるからといって、全体の仕組みを見直すというのも......。

 だから、それがどのぐらいのケースあって、見直さなきゃいけない根拠、エビデンスがあるのかというところが分からない。先ほどの説明でも、「これは一部だ」という表現をしている。そこが見えずに......。「それじゃ全体的に」ということでいいのか。

 あるいは、スポットで考えるべき性質のものなのか。確かに(救急など)急に入って、出来高で対応しないと採算が取れないというケースもあるが、それについては、それなりの
対応をして、仕組みまで見直す必要があるのかどうかという議論の下に、それがどれぐらいのケースあるのかということが必要ではないかと思っている。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 なるほど、よく分かりました。事務局(保険局医療課)に伺うが、これは......、このような特例というか、対象とする案件については、個々の事例を示して中医協に上げて審議するという理解でよろしいだろうか。

 ▼ 例外ケースの一覧表だけでも示すべきだと思う。診療報酬を抑制したいケースは分かっているのだろうから。

[医療課・宇都宮企画官]
 実際の診断群分類の点数は1500以上あるので、それを1つひとつ、すべてこちらにお示しして、どれをどのタイプでというのは非常に難しいと思う。これまでのところだと、おおむね8割ぐらいが現行のやり方でほぼ合っているのではないか。2割ぐらいが、それから外れるという、そういうイメージ。

 実際の点数については、今年の10月までのデータを用いて計算するので......。今年の点数がどうなるのかは現時点ではまだ分からないが、今言ったような比率が変わるものではない。

 ▼ 診断群分類数の割合ではなく、支払った診療報酬の何割かで見る必要があるのではないか。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 藤原委員、そういうことだが、藤原委員のご懸念というのは、「これが拡大解釈されていくのではないか」ということだと思うので、何らかの方法で、「入院期間Ⅰ」の評価と現行の点数評価との乖離がどれぐらいあるのかみたいなものを示していただければ、修正の対象、特例の対象となるかが一括して分かるような気もする。

 その辺の希望はいろいろあるかもしれないが、一定の特例の対象となるというものが、ここ(中医協)で、ある程度分かるようにしていただくという形であればよろしい? (藤原委員、うなずく)

 はい、では対馬委員、どうぞ。

 【目次】
 P2 → 「2種類の設定方法を3種類にしたいという案」 ─ 厚労省
 P3 → 「トータルの医療機関の収入はどうなのか」 ─ 西澤委員(全日病)
 P4 → 「入院期間の短縮が進むが、受け皿があるのか」 ─ 藤原委員(日医)
 P5 → 「これでいいが基準は必要。全体感がよく見えない」 ─ 対馬委員(支払側)
 P6 → 「早く退院させるのか、行動が変容するか」 ─ 坂本専門委員(日看協)

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