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医師の労働環境を改善し、医療崩壊を打開したい-植山直人全国医師ユニオン代表インタビュー


――設立総会の時もEUの基準を目指すという話がありましたが、日本の現状からは厳しい数字ですね。
 
ヨーロッパの医師はだいたい週40時間の労働ですが、日本では過労死水準で多くの医者が働かざるを得ない状況です。東京の医師会が2005年に調査した結果では、当直後休養できるのは1.6%で、「36時間労働」といわれるデータが出されています。勤務医の意識調査では、71%の医師が慢性疲労を訴えています。医労連の資料でも3割の医師が「過労死ライン」、3割近くが「前月全く休みをとっていない」、勤務医の5割が「やめたいと言っている」、4割以上の医者は「健康不安や病気がち」というデータが出ています。
 
現場の医師も自分たちの権利について知りません。現場は疲弊していますが、自分たちが置かれている状況について知らなければ、国民に訴えていくこともできないと思います。武見太郎氏の全盛期の時代から見れば、「なぜ医師のユニオンがいるのか」と言われるでしょう。私たちはある意味マインドコントロールされてきました。その頃はそれでもよかった時代だったと思います。今は社会も医療も変わり、それではもたなくなってきました。医師自身が自分たちで勤務環境を守っていくユニオンが必要な時代になったのです。
 
――先日、滋賀県では県立成人病センターの労働基準法違反に関して県病院の幹部が書類送検されました。奈良県でも産婦人科医の時間外手当に関する訴訟に判決が出たりと、医師の労働をめぐっていろいろな動きがありますね。
 
奈良県の裁判に関しては、一審は勝ちましたが、自宅待機に関しては医師が勝手に行っているという判決だったので控訴しています。患者さんの安全のために待機しているのに、そういう判断が下されるのが今の日本の意識です。これが変わっていかなければいけません。滋賀の成人病センターに関しては、時間外労働120時間の36協定が結ばれていますが、過労死ラインのことを考えると、やはり避けたいものではあったかと思っています。
 
――話は変わりますが、植山先生ご自身はこれまで医師の労働環境などの問題にご興味があったのでしょうか。
 
私は大学院で経済学を専攻し、スウェーデンの福祉国家の危機と改革に関する論文を書きました。その時に北欧の医療の状況について学びました。また、私の妻が産婦人科医ですが、若い頃は月に20回の当直をこなすような状況でした。今でもなかなか家に帰ってこれず、普通の家庭生活ができない現状があります。こうした状況に問題を感じていました。
 
――ご自身の体験もあったのですね。
 
6月の全医連の集会でユニオンの設立を発表した時に、既に過労死の問題に関してある医師から家族が悩んでいるとの相談を受けていました。こんなに早く反応があるのだから、実際は悩んでおられる方は相当いらっしゃるのだと思います。過労死された方のご遺族は、証拠がなければ状況が分りませんし、実際は泣き寝入りになってしまうケースも多く、どうしていいのか分からずにいる方がたくさんおられると思います。だから、そうなる前に少しでも医師の労働環境をよくしたいという思いがあります。
 
――これからの活動の展望をお聞かせ下さい。
 
私たちの活動を軌道に乗せ、社会的に認められるようにしていきたいと思っています。日本には医師の労組がなじむような環境になってほしいです。医師の労働環境を守ることで医療崩壊を防ぎ、地域住民のためになっていくよう、これからもがんばって活動を続けていきます。
 
 
 
(略歴)
1990年  鹿児島大医学部卒業
2001年  東北大大学院経済学科修士
2009年  全国医師ユニオン代表
 
 
 
 
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