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〔自律する医療③〕分かってなさそうな職員に質問が来る

 亀田メディカルセンターのJCI認証取得を追うシリーズ3回目。
 前回まで(1回目 2回目

 JCIも日本医療機能評価機構の病院機能評価も、源流をたどるとJCAHO(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations)という北米の病院と在外米軍病院とを機能評価していたものに突き当たる。JCAHOは現在JCと名称が変わっており、その94年から始まった国際版がJCIだ。95年に発足した日本医療機能評価機構もJCAHOを手本に病院機能評価を発展させてきた。

 こうした歴史的経緯がある以上、基本的によく似たものになるのが当然のことなのだが、バカにならない差もある。

 まずJCIの場合、実地サーベイランスを含めて審査が全て英語だ。職員全員が英語を話せるなんて病院は日本には存在しないので、通訳が必要になる。この通訳を必ず法人外から用意しなければならない。英語を話せるからといって、医療がどのような流れでどのように行われているか知らない人ではお話にならず、通訳できる人はかなり限られてくる。今回、「亀田」では横須賀米海軍病院の医療職員に頼んだが、非常に高圧的な英語での審査を部外の通訳を介してやらなければならないことは、現場職員にとって大変な精神的苦痛であって、病院機能評価の審査とは比べ物にならないという。

 JCIと病院機能評価との大きな違いがもう一つある。亀田信介院長言うところの「抜き打ちの実力試験」という部分だ。

 病院機能評価のサーベイランスでは、審査官からの質問に答えるのは、もっぱら部門の責任者だ。これに対してJCIのサーベイランスでは、「分かってなさそうな若手のコメディカル」にばかり質問が来るという。たとえ、それが見当違いの質問であったり、通訳間違いがあったりしても、「横から口を挟もうとすると『黙れ』と言われて、答える人が少しでも詰まれば、これ見よがしに記録紙に×を付けられた。何も悪いことをしていないスタッフの心が折れてしまうのでないかと本当に心配した」(小原まみ子・腎臓高血圧内科部長)という。

 分かっている人がきちんと分かっていればいい病院機能評価と、分かってない人がいたらダメなJCIという違いである。言葉では大したことに思えないかもしれないが、現実には雲泥の差だ。病院の中に一握りでも協力的でないスタッフがいれば、それだけで落ちてしまうのがJCIであり、病院が一丸となれるかどうかを試されているといえる。

 日本人どうしなら常識として暗黙の了解が成立するようなことでも、すべて言語化しておく必要があるというのも重要な差異かもしれない。

つづく

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