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一般通報の4割が未受診妊婦-都の搬送コーディネート業務実績

 東京都が8月末に開始した妊婦や新生児の救急搬送コーディネーターについて、11月30日までに93件の実績があったことが22日、都が公表した調査で分かった。コーディネーターが通報を受ける経路は、119番通報から直接コーディネートにつなげる「一般通報」と、産科クリニックなどから産科救急の機能を持つ施設に搬送を依頼をする「転院搬送」があるが、「一般通報」でコーディネートされた妊婦の約4割がかかりつけ医のいない「未受診妊婦」だった。都の担当者は「何かあった時にスムーズに受診できるように、妊娠が分かったら母子手帳を持ち、かかりつけの産科医療機関を持ってもらいたい」と話している。(熊田梨恵)

 昨年都内で起こった妊婦の救急け入れ困難の問題を受け、都は受け入れ先を迅速に探すための搬送コーディネート業務を8月31日から開始している。東京消防庁内で119番通報を受ける指令室に席を置く助産師がコーディネーターとして交替勤務で24時間対応し、受け入れ先が決まらない妊婦や新生児の搬送について、医療機関や119番からの問い合わせを受けている。
 
*コーディネーターが通報を受けるルートの詳しい説明はこちら、業務はこちらを参照
「転院搬送」...妊婦のかかりつけクリニックなどの産科医療機関から、患者の状態が悪くなった場合などに手術などに対応できる2、3次レベルの産科医療機関に搬送を依頼する。医療機関から医療機関への搬送依頼になるため、妊婦の状態が詳細に分かっており、満床や施設機能による受け入れ困難などでなければ比較的受け入れられやすい。
「一般通報」...妊婦本人や家族、周囲にいた人などが、状態が悪くなったと考えて119番通報し、東京消防庁の指令員が搬送先医療機関を探す。つまり、指令員が119番通報を受けたらたまたま妊婦だったというケース。かかりつけ医がいない、いわゆる「未受診妊婦」などのケースがあり、母子手帳もないなど妊婦の状態が把握されていない場合が多く、受け入れに困難を伴うことが多い。2007年8月に奈良県で起こった、妊婦(38歳)が死産した受け入れ不能問題の搬送もこのケースだった。
  
 
 都によると、8月31日から11月30日までにコーディネーターが行った搬送は93件で、このうち転院搬送が52件、一般通報が41件だった。
 
 かかりつけ対応ができないために一般通報となった41件の内訳を見ると、「未受診」が41%と最多で、次に「かかりつけが遠方」27%、「かかりつけがビル診などのため夜間対応なし」12%、「受け入れ不能」10%などだった。
 
 転院搬送の理由では、「切迫早産」60%、「前期破水」26%、「PIH(妊娠高血圧症候群)」6%、「IUGR(子宮内胎児発育遅延)」4%、「切迫流産」2%、「胎児機能不全」2%など。
 
 都が同日開いた周産期医療関係者の集まる有識者会議で、杉本充弘委員(日本赤十字社医療センター産科部長)は「未受診妊婦が前より増えていると思う」と発言し、都内の外国人などの人口についての実態把握を都に求めた。杉本委員は会合終了後に取材に応じ、「コーディネーターからの搬送依頼を受けていても未受診妊婦が多くなったと感じている。妊婦検診は14枚の券で補助されている【編注】が、病院に行く時間的な余裕もないのかもしれない。社会の不況や経済的な状況の一部の断面かもしれないと思う。また、東京独特で、妊婦さんが地域や周囲とのご近所付き合いがなくなっていて、状態が悪そうでも声を掛け合ったりするような感じではなくなっているのでは」と話した。
 
【編注】「妊婦検診は14枚の券で補助」...東京都では、母子手帳に付いている14枚の受診票を産科医療機関の窓口で提出することで、一定の検査については都内の病院ならどこでも無料で受けられる。
 
 
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