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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼5 小野俊介・東大大学院薬学系研究科准教授(中)


小野
「やはり、これまでデータが欲しいと要求する人がいなかったんですよ。研究者にしても、日本でそういうデータが欲しい、必要だと大きな声を上げる人は指折り数えられるくらいしか思い浮かびません。業務としてそのようなデータを欲しがって、自分で分析できる専門家が、民間に加えて役所やパブリックセクターにも数百人はいないといけないと私は思っているんですけど。一つの組織にいても、散らばっていてもよいのですが」

村重
「データベースが公開されれば、誰がどこにいてもできるし、研究者でも患者でも使えるわけだし、世界中の人が使いますよ。パブリックセクターが独占するのは危険です。現場の臨床医がもっと論文を読み書きする時間や視点をもてるようになれば、27万人ですね」

小野
「長い目で見るとそうです。とりあえず今現在の直接的データユーザーがどれだけいるか。データを入手し、分析し、結果を見て使うという人が、どれだけ日本にいるかということになりますね」

村重
「今はマクロデータを必要とする人たちが海外流出しているんじゃないですか。日本のデータベースが公開されていないので仕事ができません」

小野
「そうですね。そういった問題意識と能力をもった人たちを、なんとか国内に数百人は作らないと話になりません。数百人が仕事として『臨床データが欲しい』と声を上げる状況が実現すれば、データの立派な国内需要が生まれます。PMDAではない、新たな審査機関なり、プレイヤーが登場することが、その起爆剤になると思いますよ」

村重
「現場の多様な患者さんの実態を反映した分析は、たくさんの医療者があちこちの現場から発信するしかないのでしょう。現場といってもひとつではありませんから。まして、現場から離れたところに作ったとしても、現場の多様性のバランスを保つことはできません」

小野
「PMDAと新審査機関という、二人のお山の大将がいてもよいし、また、何人お山の大将がいてもいいと思うんです。最悪、お互いにチェックしないで、『自分たちの言うことが正しい』と叫びあっている状況でも、現状よりましかもしれません。複数の判断者がいることで、お互いの主張が相対化されますから」

村重
「でも、『機関』を作ると、今のお役所やPMDAが持っているのと同じ問題を持つんじゃないかと心配ですね。職員は、終身雇用でそこにいて、免許は持っているけれど実は専門性がないし、現場の多様性も知らないというような。日本のパブリックセクターには、臨床医の一部といえる人材はいません。それに「機関」をもう1つでは、また全国一律になってしまって危険だと思います。できるだけたくさんのチェックやフィードバックがあったほうがバランスがとれる」

小野
「組織の中で職員がどう健全に働くかの問題は、ありますね」

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