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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼13 大西睦子・ハーバード大学歯科医学校研究員(上)

100811ohnishi.JPG100811murasgie.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく好評のシリーズ。今回は、大西睦子・ハーバード大学歯科医学校研究員です。一体何がキラリなのかは本文を読んでのお楽しみですが、彼女はアメリカでは、ちょっとした有名人なのだそうです。私はこの対談を聴いて以来、加工食品を買う際に必ず食品表示を確かめるようになりました。今回も3回に分けてお伝えします。(担当・構成 川口恭)

村重
「アメリカに行かれて3年の間に随分と論文も書かれて、メディアにも取り上げられたとか」

大西
「今は、高リン酸が全身にどのように影響するかということを研究しています。最近FASEBというジャーナルに高リン酸が老化を招くということを報告しましたら、それが結構ヒットしたのです。メディアにたくさん取り上げられて、FOXテレビでもハーバードのグループがとか紹介されて、すごくビックリしました。PI(Principal investigator=ボス研究者)のモハメド先生が広報してくれたのですよ。高リン酸が老化に影響を与えるということを発見しましたという感じにです」

村重
「アメリカでも、一般の方の関心が高いテーマなのですね」

大西
「リン酸の高い食べ物は何ですかっていう質問がたくさんあったのですが、燻製食品とコカ・コーラみたいなソーダ類が結構リン酸が高いのです。最近、予防医学がすごく注目されていまして、食生活で何か気をつけられることがあれば、病気の予防のために改善したいと思っている方がとても多いのです。なので、私たちの報告が多くの方の反響を呼んだのかと思います。ただし、私の研究は動物実験ですから、実際ヒトがどれ位ソーダ類を飲むと、全身に影響を及ぼすのかはまだ分からないのですが。慢性腎不全の方は、リン酸のレベルが高く、皮膚、筋肉の症状や血管の石灰化が起こったりします。原因はまだ分からないことが多いのですが、そういった症状は、高リン酸がひとつの原因ということをマウスを用いた動物実験で証明したというのが今回の論文の趣旨になると思います。高リン酸の状態のマウスを作ると、血管の石灰化が認められ、寿命が短く、肺気腫、皮膚や筋肉の委縮など全身の症状が認められるのです。それが本当に高リン酸だけの影響かというのは、これから確かめていきたいのですが」

村重
「高リン酸のマウスは、どうやって作るんですか」

大西
「クロト-(klotho)変異マウスというさまざまな老化類似症状をもつマウスをモデルに使っています。クロトー変異マウスでは血清中のカルシウム、リン酸, ビタミンDがとても高いのです。クロトー変異マウスは、テキサス州サウスウエスタン医科大学の黒尾誠教授らが樹立され、 この原因遺伝子を生命の糸を紡ぐギリシャ神話の女神の名前に因んでクロトーと名付けられました」

村重
「ノックアウトマウスということですか」

大西
「そうです。クロトーは長寿の作用がある抗老化ホルモンなのですが、クロトーをノックアウトすると、早期に老化現象が出現します。また、クロトーノックアウトマウスは、腎臓のナトリウム依存性リン酸トランスポーターの発現が亢進し、腎臓でリン酸の再吸収が増加して、生体内のリン酸のレベルが高くなるのです。ただし、このマウスは、カルシウムやビタミンDのレベルもとても高いので、老化類似症状がリン酸だけの影響かどうかは分かりませんが」

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