村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(1)
村重
「そこも多分、全国一律ルールではうまくいかないと思うんです。医師会が決めようと学会が決めようと誰が決めようと、全国一律ルールである限り、うまくいかないと思うんですよね。ただ、そこをできるだけ、先生のおっしゃったようにシンプルな体系にすることで、その中での自由度を保つということだと思います。でも現状では、医療費を抑制するという厚労省にとっての最優先事項があるわけですよ。それは国民の命よりも幸福よりもお金を優先してしまっているので、医療費を抑制するために細かく細かくルールを作ってお金は使わないようにと、何が何でも使わないようにという方針でやっているからこうなってきているので、そこを変えない限りなかなか改善できないなあと感じています」
長尾
「そうです。医療費を抑制するために、医者ばかり縛りつけるんですけど、僕の立場で言うと、もう少し患者も縛りつけてほしい。患者はわがままで、医療のルールを医者は知ってるけど患者は知らないから、薬を何種類も出せとか無茶苦茶言うわけですね、で罵倒する、と。医者のかかりかたというのをちゃんと厚労省で啓発しなきゃいけないんじゃないかなと」
村重
「厚労省が、この所やってきたことというのは、私の印象では、実現し得ない医療を『実現します』と風呂敷を広げて国民に見せるわけですよ、そうすると国民の期待値は無限大に膨らむわけですよ、それをそのまま現場のお医者さんや医療関係者にぶつけてくるわけですね。『現実にできること』と、『実現し得ないこと』を期待する国民の期待値とが乖離していますが、それをどんどん乖離させているのが厚労省のプロパガンダなわけですよね」
長尾
「そうです、そうです」
村重
「いい加減にやめてくれと思いますけどね」
長尾
「先生はよく分かってらっしゃるね、失礼ながら」
(つづく)