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ニュース〜医療の今がわかる

現行医療計画の問題点について

■ 23区の救急施設全体でのカバー範囲等
 

【河原和夫・東京医科歯科大学大学院教授】
 次に10頁です。三次救急は東京は22カ所ありますが、23区に関しては14カ所あります。

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 試しに学閥、障害は別にして、23区の14カ所の救命救急はアクセス時間に影響せずに、どれぐらい減らすことができるかを考えると、6減らして8にしても、アクセス時間の観点で見ると、カバーできるわけです。

 多摩地域は、1カ所減らしただけでも需給に大きな影響が出ます。こういうことも客観的な資料で、学閥、人の配置の問題は、病院のエゴとかいろいろありますが、そういうのを抜きにしてアクセスだけを考えると、このような形でも医療の問題を取り上げることができると思います。

 下の「救急活動時間」ですが、医療計画を策定する立場から都道府県にお願いしたいのは、総論的な記載より、都道府県のどこに問題があるかを見ていただく必要があります。

現行医療計画の問題点-25.jpg

 救急の時間の定義が変わって、いま東京はすべて50分ぐらいかかっています。これは平成21年当時ですので、いまの基準と違うときですが、東京はその当時も全国でいちばん搬送時間がかかるところです。

 ですけれども、この3つのパーツを見ていきますと、電話を掛けてから現場に到着する時間は6.1分、移動距離は2.1㎞、真ん中の19.9分、約20分が現場に滞留している時間です。

 これはなかなか東京消防庁がデータをくれないので、分析できませんが、インタビューしますと、1つは東京の都市問題で、道が狭くて救急車が入らない、あるいはマンションのセキュリティが高くて、患者を搬送できない。

 もう1つは、病院が断ったケースがありますが、消防隊から病院に入った情報で、例えばホームレスの方がいた、あるいは精神の方がいた、そういう福祉あるいは経済的な問題、医療以外の問題を付加した人の救急があるわけです。

 いまのシステムでは、病院に医療の解決プラス福祉の解決まで要請しているわけです。ですから、いくら救急施設や隊員を増やしても、この問題は解決しないので、ほかの都市計画などとリンクさせないといけない。

 つまり、都市問題で、道路やマンションの問題、10本柱の1つになるかもしれませんが精神科救急の問題、福祉が絡む救急の問題、それを解決して初めて救急問題が解決するので、単に施設整備だけでは解決しないと思います。


【目次】
 P2 → 医療計画制度の目的等
 P3 → 医療計画とその評価
 P4 → 医療機能情報提供制度
 P5 → 病床規制
 P6 → 東京都のがん医療体制
 P7 → 23区の救急施設全体でのカバー範囲等
 P8 → A区の三次救急施設へのアクセス時間
 P9 → 搬送に60分以上要する人口
 P10 → 療養病床の調査
 P11 → 山形県でのアクセス時間分析
 P12 → 救命救急センターの最適エリア界
 P13 → 献血者の動向、地理的分布
 P14 → 周産期母子医療センターへのアクセス時間
 P15 → 死者と重傷者の分布
 P16 → 運転時間30分での転送可能領域
 P17 → 医療計画の中の精神医療の位置づけ
 P18 → 主たる医療職種の入学定員(平21)
 P19 → 計画と評価の構造(行政計画)
 P20 → 事業計画、実施計画の必要性
 P21 → ある県の医療計画の目標

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