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中医協委員、大阪で現場医師らと診療報酬を議論

①被災地の医療機関への診療報酬特例加算「国庫補助でやるなら可能」
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司会は、藤森クリニック院長で医梅会事務局長の藤森次勝氏、加納総合病院院長で大阪府医療法人協会会長の加納繁照氏、長尾クリニック院長で梅村聡医師後援会幹事の長尾和宏氏が順番に務めた。

司会
まず質問の一番目です。これは東日本大震災に関してとても大事なテーマだと思います。みなさん大活躍されたんですけども、もともと被災三県は医療過疎で、それがさらに深刻化されるというところです。これについて、東大医科研の水野靖大先生からご質問でございます。水野先生、どうぞ。

水野
東京大学医科学研究所病院外科の水野靖大と申します。よろしくお願い申し上げます。

東日本大震災の被災地の津波による被害は甚大かつ想像を絶するほど深刻でありまして、病院が倒壊したり、医師不足も加速化しています。被災地に自ら残り、自らの給料を医療環境の整備に回してでも残って、被災地の医療水準をなんとか守っていこうとされている医師の方々がおられるのですけども、そのように頑張っておられる先生方も、現在のような努力をずっと続けていくわけにもいきませんし、いつか疲弊して次第に医師不足が加速していくと思います。我々国民は、被災地で頑張っておられる先生方のために十分な支援ができているのかと考えると、私は疑問があると思っています。

これらのことに対する対策として、国の補助金と診療報酬の特例加算、この二つの対応策案が主に議論されていると思います。私はこの二つはともに大事であって、国の補助金は、壊滅した病院の建て直しなどゼロから何かを立ち上げる場合には有効で大事なものであると考えますが、その分配の仕方がやはりボトルネックとなってきて、つぎ込んだ補助金に対して十分な効果が得られないという事が往々にしてあると考えられます。実際に被災地の先生方は「被災後半年になるが、本当に必要なところには、まだまだお金が投入されていない。全然足りないんだ」という悲痛な叫びを私はよく耳にします。

一方、診療報酬の特例加算では、実際に働いた人たちが報酬を得て、自分で必要だと思うところに投入していけるので、拡大再生産にもつながっていくと思います。患者さんの負担に関しては、前厚生労働副大臣が公費からの補填等を考えるとおっしゃっておられますし、クリアできると思うのですが、いかがお考えでしょうか。

*簡単に言うと、被災地の医療機関を支援する場合、補助金だとうまく行き渡らないので、診療報酬で特例の加算を付けてほしいという話。

司会
はいありがとうございます。これは茨城県ということで、鈴木先生よろしくお願い申し上げます。


鈴木
はい、お答えいたします。この件に関しましては、中医協委員が被災地を視察いたしました。私も二日半ぐらい同行させていただきました。私自身も被災者でもあるのですが。現地に行きましても岩手、宮城でも焼け野原にバラック小屋が立ったような状況で、仮設診療所があってもですね、患者さんが帰ってこれない状況ですね。福島については原発事故が収束しておりませんので、南相馬市立病院の副院長先生が仰ってましたが、戦争中と同じですと。子供は高校生までが避難、虚弱な高齢者も避難、働ける人だけが残って地域社会を守っている状況でございました。

とにかく民間の院長、理事長先生のお話を聞きましたらですね、とにかく今すぐに対応できるものを迅速にしなければいけないということで、まず補助金や補償。補償が遅れているようですので、これを補助金が立て替えるようなことがあってもいいと思いますが、そういったものを迅速に対応して、今、診療の継続が非常に困難となっている領域をですね、直ちに助けないといけない。

それとともに、医療保険の算定緩和、これは非常にある意味では加算なんですね。すぐできるですね、こういったものをすぐに行って、今非常に困難な状況にある医療機関を救わないといけないということで。特例加算という話は中医協でも出てまいったんですが、これは改定の時でないとなかなかできませんので、とにかく間に合わないと。すぐにという意味では今言ったような算定要件の緩和、そして補助金や補償、こういったものの迅速な対応、こういったものをまず対応する。特例加算というものももし必要になればですね、検討する。今できることをする。今加算と言っても患者さんがいないんですね、医療従事者も減っている状況で、加算だと患者の負担も増えますし、患者負担は公費でという話をする方もいらっしゃいましたが、とにかく迅速にできるもので対応して、順番としては算定要件緩和、そして補助金や補償での対応、そして必要であれば加算も検討するという順番だと思います
 

司会
水野先生よろしいですか。


水野
ありがとうございました。特例加算については、やはり補助金はどうしても回りにくいところはありますので、ぜひともお考えいただきたく存じます。


安達
追加でちょっとだけ言わせていただきますが、特例加算は受診者負担を増加させないことがご指摘のように一番大事。ということはどういうことになるかというと、受診された時に患者さんは通常の受診、自己負担をお払いになって医療機関が請求するときに特例加算を追加して請求する。その分全体を大塚(前)副大臣が中医協においでになって言明されたように、保険者に対して補助金を出す。そういうことで保険者はゼロサムにして払う。これは可能だろうと思います。それから中医協的に難しいのは、ルールを作る以上一定の条件を設定しなければなりません。その条件がそもそも全部を網羅してから作れるかということが一つの問題。なおかつ中長期にわたるものについて時間の経過とともに状況が変わっていくことがあります。それを改定後も随時見直すという特例的なことをやるのであれば可能だろうと。国庫の補助がそこに入りゼロサムでやる限り可能であろうということは考えております。条件付けをする時にもう一つは、加算はあってもつぶれてしまって患者さんがこなければ一銭の原資にもならないということ。その辺は補助金を組み合わせた柔軟な考え方がいるんだと思います。そんなふうに考えております。


司会
ありがとうございます。


水野
ありがとうございました。

司会
阪神大震災でもその後アルコール依存症や自殺とかいろんな問題が生じて、東北はこれからだと思うんですね。冬をちゃんと越せるか、医療が機能できるかということだと思うんです。最後に邉見先生、阪神大震災を経験した我々として、あるいは中医協の先生も先ほど震災元年とおっしゃいましたが、何かメッセージがありましたら、よろしくお願い申し上げます。


邉見 今度はDMATみたいな急性期でなくて凍死と溺死がほとんどですから、ポストDMATと申しますか、慢性期、心のケアとかあるいは慢性期の老人が合併症をたくさん作っていくとか、冬場の肺炎とかですね、そういう在宅死も含めてそういう人をどれだけきめ細かく見ていく体制ができるかということだろうと思います。これはやはり地元の医療機関だけではできないだろうと思いますので、他からのボランティアを含めて先生も「共震ドクター」を書かれておりましたけども。


司会
ありがとうございます。嘉山先生からも。


嘉山
一言だけ。今日本医師会長の原中先生を会長に、被災者健康支援連絡協議会、すべての医療人が入ったものができましたので9月から医師の派遣を始めたんですけどね。なかなか開業の先生は大変だろうということで、大学の先生が中心です。7ブロックに分けてグルーピングして九州からも入っています。ところが南相馬の病院から言われたのは、(医師派遣に対する)お金を払えないんですね。つまり僕は今は補助金をどーんと出して、そこで病院に医師を雇えるお金を出した方がいいと思います。


司会
病院に直接出すということ。


嘉山 
病院に直接出すということです。それを今平野防災大臣にお願いしてますので。こちらはサプライは持ってるんです。あるんですけどそれができないということがありますので、梅村先生(進行席にいる梅村議員に呼び掛けている)、補助金を病院に出してもらいたいんです。病院は患者さんが減っていてお金がない状態ですよね。病院はサプライはあるのに、ディマンド側が断ってきてるんです。そういう状況ですので、よろしくお願いいたします。


司会
では梅村議員には後でまとめてお話しいただきましょう。補助金を思い切って出していくというお答えを頂いたかなと思います。この質問はここで終了させていただきます。


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