文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

周産期・救急懇談会6

最終日だったようだが、今後も続くのかと思うくらい荒れた。

まずは、報告書案と大紛糾の原因となった主な検討事項の一覧を先にご覧いただきたい。

最終日なので本来であれば何が決まって今後どうなるか書きたい。しかし結局この懇談会は何だったのかよく分からなくなっちゃったので、まずは特に荒れたやりとりだけ先に記して、少し冷静になってから考察してみたい。

きっかけは、座長のこの一言からだった。
岡井
「それぞれの財政支援の話を保険点数何点という風に出してもらって付記として提出するという話をしたが、厚労省の人とも相談して、今回の中には具体的なことは入れずに全体的な財政支援と書くにとどめ、個々の項目については別途学会などで検討していただいて大臣なりに要望書を出していただく形にしたい。この委員会として財政だけが浮かびあがるのが、結局保険かと見えるのを恐れている。お認めいただけるか」

この時は誰も何も反論しなかった。だから、てっきり根回し済みなんだと思っていた。実態はそうではなく、あまりの『裏切り』に委員みな声がなかったということのようだ。

この間に舛添大臣が中座し、報告書案について一通り話し終わった後で藤村委員が口火を切った。
「診療報酬を外すというのは、座長から『あんたが好きや』と言われてたのに実際には違ったという感じだ」

岡井
「その気はあったが、話し合いの結果、外した方がよいという判断になった」

藤村
「何らかの形で点数の提案は残しておくべき。外すということになった理由を聴けたら伺いたいのだが、今まで内容を具体化する方法としての例で点数が挙げられていた。少なくとも議論の過程として報告書に残るようにできないか」

岡井
「その話が大事なのは分かるが報告書に入れても、最初は入っていたけれど、厚労省の方でダイレクトに反映させる方法がないということだから」

事務局(三浦・指導課長)
「診療報酬を指導課で取り扱っているわけではなく担当でないので、ご希望というのは十分に伺ったし、それを絶対的にここに書くのがダメということではなく、必要があれば座長とも相談して検討したい」

岡井
「もう1回考えさせていただくということではダメか」

有賀
「話は単純明解。我々の唯一の血と肉である診療報酬が段々とこうなってしまったから救急もすっかり疲弊している。点数が示されなかったら、議論したことにならないとお考えになる方もいるだろう。診療報酬が全てでないというハイレベルでの座長の判断は理解しないではない。しかし僕たちにとっては、三浦さんがどの部局の誰かなんてどうでもよい。入れた方がいいじゃないかという意見も分かる」

田村
「診療報酬に特化しなくても、たとえば重度心身障害児施設のレスパイトのように介護保険とか医療と福祉とかの縦割りのために置き去りにされてきた所にようやく光が当たったのに、ここで何も書き込めないのなら、座長の命がかかってる、命は言い過ぎなら信頼関係がかかってる。遅くとも数年以内に何らかの手当てをするということを責任をもって約束させてほしい。医政局長、ここにもいるが、局長に血判状を押させるぐらいのことでなければ、何のために6回も、資料そろえのことを考えればそれ以外に何時間も費して協力してもらった仲間にもお母さんにも赤ちゃんにも顔向けできない」

外口医政局長
「おわりにの所に保険点数等必要な措置という風に書きとどめればよろしいのでないか」

岡井
「保険点数等と挙げることで具体的になるということだが」

嘉山
「私は財政的な支援と言った。なぜならば診療報酬というとパイの取り合いになってしまう。国家の社会保障費を大幅に考え直すぐらいのことを入れないと。田村先生の言ったような診療報酬だけ言うと、議論を矮小化されてしまう。大きく財政と言えば外口局長だって財務省に対して言いやすいのだから。診療報酬では中医協の中でグチャグチャになる」

岡井
「個々の点数は抜いても構わないか」

藤村
「診療報酬という言葉は入れてほしい。財政支援で診療報酬のパイを大きくすることだってできる。個々の点数にこだわりたい。報告書には、それぞれの現場の声が詰まっていて、それが何点で実現できるのか、それぞれの箇所において書き加えていただくのが正確。少なくとも一覧表にはできないか」

横田
「救急やっている立場から一言。診療報酬は、診療の対価で周辺業務が評価されない。1人の傷病者、患者を診たら代償としてもらえることになっているが、救急だと現場に出向いたり、待機したりと必ずしも対価では評価できない部分がある。むしろ、それは別の要素、ベッドを確保することとかで評価しないといかん。中身を点数で表すのも大事だが、あまりにもそこだけすると救急がなぜ不採算なのかの担保にならない。嘉山先生の言うように広い意味の財政支援と入れないといけないと思う」

岡井
「この問題は委員の要望が強いことを理解してもう一度検討したい」
話を引き取って鎮火したつもりだったのだろうが、さらに延焼する。

(中略)
岡井
「今何をやっているかというと20頁の検討事項の一覧を見ているわけだが。この一覧は海野委員の意見で入れた」

海野
「この委員会の意義は、不安な気持ちの国民に今とりあえずこれはやってます、すぐによくはならないかもしれないけど取り組んでますというメッセージを伝えたいということなんだと思う。そこで分かりやすいように一覧をお願いした。平成21年度以降に検討が必要な事項というのは、具体的にどうやって進めていく考えなのか。お聞かせいただきたい」

岡井
「以降と書くと、ウンと遅くても構わないことになっちゃうという心配だが」

事務局(三浦)
「21年度以降として挙げたものは着手という意味では早々に着手するもの。しかし成果が出るまでには若干の時間がかかるものもあるので、お尻が延びている。診療報酬であれば改定のタイミングになるだろうし、予算も予算のタイミング。基本的には早急に手をつける」
(略)
なおも海野委員は言質を取ろうと食い下がり、そして段々分かってきたことは、委員の多くが厚労省を全然信用していないというか、恐らく過去に何度も騙されてきたんだろうということ。これで導火線に火がついてしまったらしく、次々に引火する。

海野
「分からないのは具体的な手順がどうなるのか。検討会をつくってとか示されていればまだ安心もするが、このままだと何ヵ月も放ったらかしにできてしまう。NICUとか重心とか、非常に心配していて、また期待もしている。具体的にお示しいただけないか」

事務局(三浦)
「P19のおわりにの所の下から2行目に『ロードマップを作成』となっているので、現時点ではロードマップを早急に作成するということでお許しいただけないか」

岡井
「これ以上細かく書くのは難しいということ」

田村
「対応済みの事項とはどんなことか。たとえば『医師の手当や勤務環境の改善に対する財政支援』。産科や救急に対しては手当てされたと思うが、小児科や麻酔はまだのはず。補佐に要望したら対応済みと言われた」

事務局
「今日お配りした資料3の最初の項目がそれ」

岡井
「済みと言われるとあれだが、対応中ということだな」

(略)

嘉山
「予算のことをお聴きしたい。三浦先生には文部科学省に出向中も非常に意欲的にお世話になったが、ここに書かれているものは、単年度かパーマネントか、あるいは5年とか10年か」

事務局(三浦)
「基本的に単年度」

嘉山
「ドクターフィーというと結構なもののように受け取られるかもしれないが、ここにはマスコミの人もたくさんいるから知っておいてもらいたいけど、非常勤に使いなさいというのが多い。今現在働いている人に手当てを出すことには使えなくて、もう1人雇いなさいという。今日イメージしたようなお金の使いかたができない。危険手当てに使えない。その辺のものをもっとキメ細かく配慮してほしい。それから単年度予算だと、また概算要求しないといけない。そろそろ全体の枠を考え直す時でないか」

(略)

有賀
「話がややこしくなるから言わなかったけれど、結局は国が何分の1か出して、残りは都道府県と事業主が負担するという形では、お医者さんのフィーなんて絵に描いたモチだ。こんなもの逆立ちしてもどうにもならん」

(略)
嘉山
「もう一度確認する。人件費は柔軟に使えるのか」

事務局(三浦)
「趣旨は現に働いている医師に対して手当てを用意してもらえるならば国が3分の1、都道府県も3分の1を補助するというのが基本スキーム。新たに人を雇うことに対する補助ではない」

嘉山
「運営費も含めて、人件費と書いてあるものが本当にそういう風に使えるか」

事務局(三浦)
「国の補助金には基本的に単価がある。その単価までは国としてお付き合いしましょうということ」

嘉山
「実際問題として使えるか、イエス、オア、ノー」

事務局(三浦)
「具体例を示していただけばお答えできる」

嘉山
「使えるようにしていただきたい。往々にして現在の医師に対するインセンティブでなく、他の人を雇いなさいという指示が来る。しかも雇うような医師がいりゃいいけどいないんだから」

有賀
「もし手当てに使えるようになっているのだとしても都道府県なり事業者が手を挙げなかったら使えないではないか」

事務局(三浦)
「基本的には施設に対する助成だったものを、現場の医師まで届いてないという声を受けて改めて手当ての一部助成という形にして、機関の中で止まっていた止まる可能性のあったものを、直接届くようにした」

有賀
「だから、そういうことがままならない事業者だったら助成も受けられない。お医者さんにお金がいっぱいいっているなんて嘘っぱち。ちょうど、衆議院議員がいる。これでお金回るとお思いですか。事業者で手当てなんて払えないのがいっぱいいる。だから皆疲弊している」

渡辺副大臣
「医師がいなければ雇えないというのと類似のもので、来てくれる人がいなければ、この予算も使いようはないのかもしれないが」

有賀
「それをできるかのような話をしていたことが間違いだ」

渡辺
「無理してでもやるという所を支援しようということ」

有賀
「どこも心はある。でも出す金がない。そういうのが分かったうえでの、この予算を読むと、なんだ嘘じゃんとなる」

岡井
「話が予算案まで行ってしまった。それも大事だが、ここでは報告書案の最終案としてお示ししたい」

嘉山
「岡井先生、歴史に名を残すいいチャンスなのに、なぜしないのか。三浦さんをはじめとするキャリアの方々も、これがお金の使いかたとして当たり前だと思っているのだろうけれど、現場は困ってるんだ。現場のどこから金を持ってくるのか、みんな赤字なのに。実現可能性がない。こういう制度をずっと国家がやってきた。国の仕組みがおかしいんではないのか。社会保障が大切だというのなら、国がしっかりやりなさい。大臣も現場から声をあげてくれということで、この委員会をやっているのだから、そこを提言したらよいではないか」

渡辺
「提言の方は大臣がやっていたので中身まで承知してないが、有賀先生のおっしゃったことは非常に重要だと思う。ただ財政的に厳しい中で少しでも一歩でも踏み出して何とかしようということで、今までより踏み込んだ形で、もしやっていただけるなら直接助成するということにした。何とか県の方にも協力を求めていきたいし、それをやっても改善しないのなら改めて別の方策を探りたい」

嘉山
「財政が厳しいという前提が崩れないなら、この話はできない。これからの日本をどういう国にするつもりなのか。財源をつくるのが政治家の仕事ではないのか」

渡辺
「今回は厚労省も何とか工面した」

嘉山
「この委員会は現場で何とかしようということなんだから、現場が動けるようにしたい。国3分の1、都道府県3分の1、事業主3分の1では、今までと同じで本当に国はやる気があるのかということだ。これでできない都道府県があっても構わないのか。どういう国づくりをしたいのか」

渡辺
「ドクターヘリでも都道府県によって推進できる所できない所ある」

嘉山
「社会保障を100%の人に当てはめるのか、やれる所だけやればよいのか」

横田
「ドクターヘリの話は金額が大きいので少し違う。休日夜間の手当てについて都道府県が負担しない場合でもと書いてあるのだから、ここを事業主が負担しないでもと並列にできないのか」

岡井
「21年度予算をここで議論しても変わらないだろう」

有賀
「提言として、それぐらいの見識はあってもよいのでないか。たまたま衆院議員が座っている。それでいこうと言えないのか。何のために議員をやっているのか」

外口局長
「予算案の内容を変えるのが難しいのは御理解いただきたい。事業主が負担しないでもというのは、予算のルールでそういう使いかたは認められていない。改善は言えるが今のルールではできない。元々は自治体が出せない所には出なかったのを事業主の負担は重くなってしまうが、それでも敢えてやるという所には対応しようということで、これが今年初めての試みなので、これでプラスになるのかどうなのか、総務省も医療関係への交付金は随分と配慮してくれているし、ぜひこの制度を活用していただきたいということで、この案は御理解いただきたい」

嘉山
「外口局長は法律に従わないといけないんだから、本当にそういう法律があるのか知らないけれど、ルールなら仕方ない。しかし政治家の仕事は法律を作ることのはず。先生方ならできるはずではないか」
(後略)
ということで、岡井座長と、ひな壇にお飾りで座っているはずの副大臣が火だるまになるという予想外の事態になったのだった。
(いったん修了。全体像を改めて後日に)

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス