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「交替勤務できる周産期センター体制を」―医師確保・労働のバランスは

 「労基署の助言もあるが、交替勤務ができるような周産期センターの形をとらないといけない段階になった」―。東京都では昨年度、相次ぐ妊婦の救急受け入れ不能や、労働基準監督署から周産期医療機関への是正勧告など、数々の問題が立て続けに起こった。都の周産期医療体制を議論する「東京都周産期医療協議会」では、医師確保と労働環境改善のバランスなどについて、さまざまな意見が出た。(熊田梨恵)
 

 東京都の周産期医療体制を協議するため、毎年度開催している「周産期医療協議会」。多くの都道府県も似た名称の会議を設置し、自治体内の周産期医療体制を整備している。
 
■周産期救急の「受け入れ不能」 
 昨年10月、脳出血を起こした妊婦が都立墨東病院を含む8つの医療機関から受け入れを断られ、最終的に受け入れられた同病院で死亡した。この問題を受けて協議会は、これまでは年に2,3回程度の定期開催だったところを、昨年度はイレギュラーに5回の会合を開催。心疾患や脳血管疾患など、重篤な症状の妊婦に限って24時間体制で受け入れる「母体救命対応周産期母子医療センター(スーパー総合周産期センター)」の設置を決めた。また、緊急処置が必要な妊婦の救急受け入れについて、都内の周産期医療機関による従来のネットワーク「周産期医療情報システム」で、搬送先が決まらない場合に調整するコーディネーターの設置も検討してきた。
 
 この救急受け入れ不能問題は、国内の周産期医療体制に関する議論を大きく動かした。舛添要一厚生労働相は問題が発生後に同病院を視察。国は有識者を集めた検討会を急遽設置し、NICU(新生児集中治療室)を1.5倍にまで増床する方針を打ち出した。文部科学省もNICUが未整備の9国立大学病院に最低各6床のNICUベッドを設置するなどの内容を盛り込んだ「周産期医療体制整備計画」を策定した。重症な母体や新生児を受け入れる総合周産期母子医療センターの指定基準の見直しの議論も進んでいる。
 
 特に、「必ず受け入れる」ことを明言しているスーパー総合については、産婦人科医や新生児科医の不足、トラブルが発生した場合の対応など問題は山積しており、今後の運用に都内外の周産期医療関係者からの注目が集まっている。
  
■相次ぐ労基署からの是正勧告
 さらに、年明け以降、愛育病院(港区)や日赤医療センター(渋谷区)が医師の労働環境などに関して労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが分かった。労働基準法を遵守しようとすると勤務医の数が足りず、従来の医療が提供できなくなるという矛盾した問題を抱えている医療界にとっては、比較的勤務医の数に恵まれている愛育病院さえ是正勧告を受けたことは衝撃だった。勤務医の労働環境の改善は、周産期医療界だけでなく医療界全体が抱える積年の課題であり、今後もこの議論が続いていくことは間違いない。
 
 救急受け入れ態勢など運用ルールだけにとどまらず、労働問題という根本的な問題についての議論の必要にも迫られている周産期医療界。特に東京都の医療体制は他の自治体も注視する。
 
 5月21日に開いた今年度の初会合では、今後の議論の方向性を決めるため、事務局からの報告を聞きながらフリーディスカッションが行われた。
 

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