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慢性期医療への「質の評価」導入と、足並み揃わぬ中医協

開催前の様子.jpg
 2010年度診療報酬改定を前に、夏頃までには分科会として慢性期包括医療に関する報告を上部委員会に上げなければいけないにもかかわらず、5月末になってからようやく再開された中央社会保険医療協議会(中医協)の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直巳・慶大医学部教授)。議論を詰めねばならない重要課題の「医療の質の評価」を討議しようにも、「2008年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」はまだ集計されておらず、5月末になってからようやく「キックオフ」となったこの分科会の再開に、委員からは一気に不満が噴出したかに見えた。"事後承諾"されるはずだったこの調査の実施にまで注文がつき、事務局は思わぬ部分で噛みつかれた形となった。(熊田梨恵)

■「医療区分」を作った大元はこの部会
 この分科会は中医協の下部組織の一つで、診療報酬改定のための議論の素材を提供する役割を担う。慢性期包括医療に関する調査を実施して評価検証し、その結果やデータを上部組織になる「診療報酬基本問題小委員会」に提出するのが役目だ。
 国が06年度診療報酬改定で導入した、患者の疾患や状態によって診療報酬に差をつける「医療区分」や「ADL区分」をつくったのがこの組織だ。現在はこれらの区分の妥当性について検証し、必要に応じた見直しなどについて議論している。
 
医療区分.JPGのサムネール画像
ADL区分.JPG
 
 医療や介護の現場からは医療区分に対する非難の声が上がっている。国は06年度診療報酬改定の際に、療養病床には医療が必要な高齢者が少ないとするデータを示し、医療と介護を「適正に」提供するためとして、療養病床に関連する診療報酬を引き下げた。医療依存度の低い患者を介護保険施設などに移すため、中心静脈栄養(IVH)など最も重度の患者と軽度の患者とで、約1000点の差が付く「療養病棟入院基本料」を創設した。これに加え、国が進める療養病床削減政策によって、経営が悪化したために病床を転換したり閉鎖したりする医療機関が相次いでいる。
 
■今年度のテーマは「医療の質の評価」の導入
 5月27日に開かれた同分科会は約2ぶりの開催だった。前回は2007年6月、診療報酬改定のためのデータとなった「2006年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」についての議論で終わった。この分科会がまとめた報告書の内容は、医療区分の評価項目の見直しや療養病棟入院基本料の評価の引き下げなどに反映されている。
 
慢性期分科会会場の様子.jpg 今年度のこの分科会の主要テーマは、慢性期包括医療への医療の質の評価の導入だ。同分科会は、前回の診療報酬改定前に「医療療養病棟におけるケアの質の評価」を実施していた。「褥瘡(じょくそう)ハイリスク」「痛み」「身体抑制」「尿路感染」などの項目について、リスクがある患者を分母に、実際に当てはまる患者を分子にしてその割合を見る「Quality Indicator(QI)」を使って、前年度との比較検討を実施。ただ、集まったデータが不十分だったことなどから、改定に生かせる結果は得られなかったとしている。このため、「医療療養病床の患者に対して、生活の中での医療、尊厳に配慮した医療、患者及びその家族が安心・納得できる医療が行われるためには、医療の質の評価が不可欠である」とした上で、今後の検討課題として、安定したQIの指標を算出するために入院時からの継続的なアセスメントやデータベース構築の必要性を指摘していた。これが、今回の改定の主要テーマになってくる。
 
 医療の質の評価は、前回の08年度診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟に導入されている。患者の在宅復帰率や重症患者の受け入れ割合によって「回復期リハビリテーション入院料」に差がつけられている。加えて、リハビリによって患者の状態の改善がみられる場合の加算も創設された。
 ただ、この改定に関しても現場からは回復期リハ病棟が重症の患者の受け入れ制限につながっているなどといった批判が上がっている。
 
 今回の診療報酬改定で、厚労省は回復期に続いて慢性期にも質の評価を導入する方針だ。
 
 事務局はこの方向性で、分科会の議論のレールを敷いていかねばならない。

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