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後期高齢者医療制度という言葉、「違和感はなかった」

佐藤課長(左)と宇都宮企画官.jpg 昨年4月からスタートした「後期高齢者医療制度」という名称について、厚生労働省の担当者は中医協から、「専門的な人間の間ではそれほど違和感はなかった」との指摘があったことを明かした。(新井裕充)

 来年4月の診療報酬改定に向けた審議の中で、厚労省は合併症を抱える高齢者らを「複雑性指数」などの言葉で表現しているが、中医協から修正意見が出ている。

 「後期高齢者医療制度」の"トラウマ"から、制度の名称に神経質になっているのだろうか。

 「後期高齢者医療制度」は2008年度の診療報酬改定で導入された。75歳以上の高齢者を「後期高齢者」と呼び、健康保険や国民健康保険から追い出して強制加入させ、保険料を年金から天引きするだけでなく、保険料を払えなければ保険証を取り上げる制度に対し、批判が相次いだ。

 このため、厚生労働省は「長寿医療制度」という通称を使用したポスターやチラシなどで理解を求めたが、保険証の未着や保険料の天引きミスなどの混乱が続き、批判の嵐はやまなかった。同制度に対する批判は単に名称だけの問題だけではなかったように思われるが、厚労省は制度自体に内在する問題から目を背け、名称の変更でかわそうとしたようにも見えた。

 次の診療報酬改定は来年4月に実施される。医療を所管する厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)では現在、2010年度の診療報酬改定に向けた議論が進んでいる。次期改定に向けた方向性は、今回も「医療機関の機能分化と連携」という名の医療費抑制。長期入院の高齢者らを早く退院させて、自宅のベッドで療養すれば病院のベッド代は掛からない。

 そこで、入院医療から在宅医療への流れをつくる上で、大病院、中小病院、診療所など、それぞれの機能に応じた点数配分をどうするかが重要な課題。その1つに、重い病気を発症して間もない時期の患者を入院させる急性期病院の入院医療(DPC)の見直し、つまり急性期病院の機能評価がある。

 入院医療費の定額払い制度(DPC)を導入している病院には、前年度の収入実績を保証する「調整係数」が付いているが、次の診療報酬改定から段階的に廃止される。この影響を大きく受けるのが中小規模の病院。「調整係数」の廃止に伴って新たに導入される「機能評価係数」によっては、患者選別が加速するとの見方も出ている。

 「新たな機能評価係数」は当初、病院が持つそれぞれのメリット(機能)を適切に評価するものといわれていたが、現在では大学病院を中心とする「特定機能病院」を優遇する係数が候補に挙がっている。中小病院は、機能評価係数に合った運営をすれば点数が付く"成果主義"の仕組み。

 DPCは入院期間が短いほど高い点数が付くが、難しい疾患を持つ患者を受け入れた場合に入院期間が長くなってしまうケースがある。このため、難しい疾患の治療に取り組む大学病院(特定機能病院)に対する"救済措置"として、「複雑性指数」という機能評価係数が候補に挙がっている。

 しかし、「新たな機能評価係数」について審議した6月24日の中医協で、国民を代表する立場の委員が「複雑性(指数)という意味がよく分からない」と指摘。中医協の遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)も、「(複雑性指数は)長く入院している病院と、そうでない病院との差を付けましょうという考え方だろう。複雑性というのは明らかに間違いで、ミスリードな言葉だ」と同調し、「複雑性指数」という言葉を修正すべきとした。

 厚労省は6月29日、この修正意見を中医協・下部組織の専門家会議「DPC評価分科会」に報告。ところが、同分科会の委員からは「何が良くないのか?」と反発の声が上がった。説明を求められ、保険局医療課の宇都宮啓企画官は次のように述べた。

6月29日のDPC評価分科会01.jpg 「昨年の『後期高齢者医療制度』という言葉も、専門的な人間の間ではそれほど違和感はなかったが、一般に出したときに、とらえ方が全然違うとか、そういうことも含めてもう少しセンシティブになってネーミングを考えるべきという指摘だった。そういう観点から、ご検討いただきたい」

 また、佐藤敏信医療課長は「複雑性という日本語が持っている響きが合併症を持っているとか基礎疾患などを持っているなど、分かりやすく言えば、『複雑な患者さん』というイメージを持つ(という指摘だった)」と報告。
 その上で、「私は、(基本問題小委員会の意見をDPC評価分科会の委員に)お伝えするだけ。このDPC評価分科会の先生方がどのように考えるかはまた別の問題」と返した。

 なお、受け入れる患者の年齢によって診療報酬を変える「年齢補正係数」を提案した6月19日のDPC評価分科会で、厚労省の担当者は「手間のかかる年齢階層を引き受けている病院が高い数字が出る」などと説明している。

 現在、在宅医療などの受け皿が整備されないまま「医療機能の分化と連携」という名の退院支援策が進められていることが問題になっている。厚労省の説明通り、「手間のかかる患者」にとって望ましい制度に変わると善意解釈していいのだろうか。

 むしろ中小病院を倒産に追い込み、入院できない患者が続出するような診療報酬改定を実施した後、「違和感はなかった」と開き直る可能性の方が高いようにも思えるが、果たしてどうか─。  

 以下、6月24日の中医協での公益委員の指摘、それを受けた6月29日のDPC評価分科会での厚労省側の発言をお伝えする。

 ▼ 2010年度の診療報酬改定に向け、中央社会保険医療協議会(中医協)はいくつかの会議に分かれて議論を進めている。メーンは「診療報酬基本問題小委員会」(委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)。この基本問題小委員会の下に、有識者で構成する専門組織が設置されている。急性期病院の入院医療費の包括(定額)払い(DPC)は、「DPC評価分科会」(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)で議論。慢性疾患をかかえる高齢者らの入院医療は、「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶應義塾大医学部教授)で審議している。このほか、診療報酬改定の影響を調査する「診療報酬改定結果検証部会」(部会長=庄司洋子・立教大大学院教授)などがある。


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