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救急搬送・受け入れルール策定し、地域医療にPDCA機能を-開出英之消防庁救急企画室長インタビュー


■都道府県に対する意見具申機能も
 
--今回の改正は、新しい「協議会」を都道府県に設置するという形で、既存の「メディカルコントロール(MC)協議会」の法的位置づけを底上げしたという側面もあります。MC協議会は、救急救命士が行う決まった医療行為の質の向上に関しての再教育、搬送の事後検証を行う組織です。ただ、活動の内容や頻度にはかなり差があります。近年の受け入れ不能問題から、急にMC協議会にスポットが当たったようにも見え、実際のところ「荷が重い」と感じている協議会もあると思います。
  
 最近の法改正や立法に関して、「協議会」というものの設置を義務付けるということはハードルが高く、めずらしいんですよね。これまでのMC協議会に国は財政措置を行ってきましたが地方交付税ですし、なんとなく「任意」というようなイメージで都道府県も扱ってきたと思います。今回の法改正では、協議会が法定のものとなりましたからしっかりと財政措置されていきます。 
 衛生部局が主管する「救急医療対策協議会」との兼ね合いを多くの方が気にしておられますが、新しい協議会は医療機関や病床の機能など、医療提供体制の細かい議論を直接やる場ではありません。ただ、医療体制などについて意見具申するという重要な権限を持っています。脳卒中に関する搬送・受け入れルールが作れないとしたらそれはなぜか、体制はどうなっているのかというようなことを意見していくこともできます。
  
  
■医療計画を肉付けするものに
 
--医療計画との兼ね合いはどうなっていくでしょうか。医療計画は地域の医療需要に基づいて医療提供体制の計画を策定するよう厚労省は指導していましたが。
 
 医療需要を把握しようにも、なかなかできなかったところもあると思います。だから消防機関側が持っているものを出して貢献していけると思います。医療計画は、初期、2次、3次といったところや、疾病の項目ごとにも記載はされていますが、どうしても抽象的な記載にとどまりがちです。例えば心筋梗塞の患者さんをどう運ぶとかそこまで書かれているものではないので、その辺りを肉付けをしていくものと思います。救急隊は患者に応じて複雑な仕組みで搬送していますが、エビデンスやデータがないままに運用されてきているので、しっかり調べて課題の解決につなげるというサイクルができること、動きができるということが一番大事と思います。搬送・受け入れルールは医療計画と両輪になるものと思います。
  
--妊婦の救急搬送ですが、既存の周産期医療情報システムとの連携はどうなっていくのですか。
 
 今後の議論が必要になるとは思いますが、昨年度に開かれた舛添要一厚労大臣主導の「救急医療と周産期医療の連携に関する懇談会」でも、周産期医療情報システムと救急医療情報システムを将来的に統合していこうという方向が出ていましたので、その方向がいいのではないでしょうか。また、既存の救急医療情報システムは画面が診療科ごとになっています。それも今後、この搬送・受け入れルールの内容に応じた変更が必要になっていくと思います。
 
  
■救急隊と医療機関のパワーバランスは
 
--医療機関と消防機関の議論を聞いていていつも気になるのは、どうしても医師の方が立場が強いというパワーバランスです。今回は一緒にルールを作ろうという趣旨ですが、実際はどうでしょうか。
 
 今回のルールも「医療サイドが作るのだろうからそれを待とう」という消防機関もあると聞きますが、現場の搬送困難事例を知っているのは消防機関です。医療側からだけではなく、消防からの意見も出して一緒に作っていかなければいけません。ここは主体性を持ってやっていくべきですから、私たちからも都道府県や消防機関に啓発していかなければいけません。消防からすると難しいところもあるかもしれませんが、一緒に議論していく中で解消されていくのではないでしょうか。 
 
--医療側からすると、消防機関というと救急のイメージがあると思いますが、実際の市町村消防はそんなことないと感じています。圧倒的に消防隊員の方が多く、メーンは消火や救助。救急隊は組織の中でマイナーな存在と思います。ただ、最近はPA連携【編注】も増えてきていますし、受け入れ困難の問題がクローズアップされています。消防機関の中での意識の向上ということが課題になってくるかと思いますが。

【編注】PA連携...消防車(Pumper)と救急車(Ambulance)が連携して救急活動を行うこと。患者が重傷で3人の救急隊員だけでは患者を助けるのが難しい時などに同時に出場したり、救急車が出動中で救急車の到着が遅れそうな時に消防隊や救助隊が救急支援活動を行ったりする。
 
 消防の現場では「赤」(消防の車両)と「白」(救急の車両)だと白は主流ではありません。消防機関には救助や消火と同じように、救急にも力を入れていってほしいです。ただ、最近は救急救命士の消防局長なども出てきたり、愛知県では防災部局に救急担当の部署ができていますし、だいぶ意識が変わってきていると思います。 
 

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