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病院の入院料50%増を―医学部長病院長会議会見で嘉山氏

左から吉村顧問、河野副会長、小川会長、嘉山委員長.jpgのサムネール画像 行政刷新会議の「事業仕分け」作業で診療報酬配分の見直しによって2010年度診療報酬に対応するよう求める判定が出たことについて、全国医学部長病院長会議(小川彰会長)は26日、鳩山由紀夫首相らに対し、「マニフェストを無視するものであり到底容認できない」とする声明を提出した。中医協委員も務める嘉山孝正同会議委員長は27日の会見で、次回改定で病院の入院基本料を50%引き上げるよう要望した。(熊田梨恵)

 行政刷新会議の「事業仕分け」作業では、来年度診療報酬改定について、開業医の報酬を引き下げることで勤務医の収入との是正格差を図るよう求める判定が出されている。
 
 声明は判定結果について、「地域医療に重要な役割を担っている開業医の経営環境・労働環境を圧迫し、地域医療の崩壊をさらに悪化させる可能性」があるとして、さらに勤務医の負担を増やすことになると主張。診療報酬のマイナス改定は民主党のマニフェストに反するものと批判し、改定の方向性について慎重な対応を求めている。
 
 会見で小川会長らは、医療費の増額を前提に診療報酬改定を行うべきとしながら、大学病院の経営環境の改善を求めた。
 
 嘉山委員長は来年度診療報酬改定で、病院の入院基本料について現在より50%増やすよう要望。また大学病院の経営が運営交付金の削減などにより悪化している事を示し、DPC病院については現状で1.2の調整係数が1.8になるような報酬が得られる水準にまで引き上げるよう求めた。さらに医療費抑制政策について「最も切り捨てられたのが大学病院」と主張。大学病院の医師一人当たりが年間で医療費3000億円分に相当する労働を「ただ働き」で提供してきたとの試算を示した。
  
 河野陽一副会長は、大学病院では診療と教育と研究を一人の医師が担っており、高度医療が必要なため不採算になりやすい疾患の診療も行っていると主張。前回改定で勤務医の負担軽減のために設定された診療報酬について、多くの大学病院が承認を受けている特定機能病院が対象から除外されているとして、「『小児入院医療管理料』が外されているが、もし入るとどのぐらいの額の差があるかというと、東大小児科で5億何千万かの差がある」と述べた。
  
 吉村博邦顧問は私立大学への補助金も減額されていると訴え、「舛添さんの時には医療に対して良くしようという姿勢が見えたが、今は小手先のところだけやってるだけで、基本的にどうするかというところが伝わってこない」と述べた。
 
 声明は鳩山首相のほか、藤井財務相、仙谷由人行政刷新相、川端達夫文部科学相、長妻昭厚生労働相、鈴木寛文部科学副大臣、足立信也厚生労働大臣政務官に提出された。
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声明

  
診療報酬改定基本方針に対する全国医学部長病院長会議からの提言

 
 
 11月11日の行政刷新会議ワーキンググループによる事業仕分けの結果、「診療報酬の配分」について「開業医の報酬を勤務医と公平になるよう見直す」ことがまとめられました。本会議はこのような見直しに対して慎重な対応を求めるものです。
 
 拙速に開業医の診療報酬を引き下げることは、地域医療に重要な役割を担っている開業医の経営環境・労働環境を圧迫し、地域医療の崩壊をさらに悪化させる可能性をはらんでおります。その結果、勤務医の更なる負担増など悪循環を引き起こすことが懸念されます。
 
 「診療報酬マイナス改定が医療崩壊に拍車をかけた」との認識の下、「総医療費お国際レベルへの引き上げを行う」ことが民主党のマニフェストに明示されています。医療費の増額を前提としないで、診療報酬の配分の見直しのみで事態を収束しようとすることはマニフェストを無視するものであり到底容認できません。
 
 この改定の方向性は、地域、診療科間のさらなる医療格差を生み出す危険性をはらんでおります。本会議は、診療報酬の配分についての事業仕分けの結果に対して強い懸念を表明すると同時に、診療報酬配分の見直しの方向性に対して慎重な対応を求めるものです。
 
 
 
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