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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼2 松村有子・東大医科研特任助教

100402murasige.JPG100402matsumura.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく、そんな企画に登場する2人目は、『周産期医療の崩壊をくい止める会』の事務局役として、福島県立大野病院事件の被告医師支援と、それに続く出産時死亡妊産婦の遺族支援という他に類を見ないユニークな活動に関して、実務を担当し続けている松村有子・東大医科研特任助教だ。(担当・構成 川口恭)


村重
「私は日頃から、日本には医療に関する無過失補償とか免責の制度がないに等しい、現状ではほとんどのケースは補償の対象にならないので、そういう所をぜひ国民に理解いただいて議論していきたいな、もっと広く補償する制度ができるといいなと思っています。副作用はもちろん少ないほうがいい、減らせるに越したことはないんですが、しかしゼロになることはあり得ないわけですから、一方で減らす努力をしながら、どうしても出てしまう副作用や残ってしまう後遺症に対して、そういう人たちを全部カバーできるような無過失補償とか免責制度を作れるといいなと思うんです。今は、国の制度ができてないから、先生方が自ら、妊産婦死亡について募金をして補償するという活動を、やってらっしゃると伺ったんですけれども、その経緯を教えていただけないでしょうか」

松村
「『周産期医療の崩壊をくい止める会』という会で、妊産婦死亡された方への募金活動を08年9月に始めました。募金を始めてから1年半、最初の方にお見舞金をお渡してしてから1年ちょっと経ったところです。『周産期医療の崩壊をくい止める会』は、大野病院事件の署名活動で始まりましたが、医師の無罪判決で終わらず医療事故後の支援活動を手作りでやっていこうと、会の代表の佐藤章先生(前福島県立医大産婦人科教授)が提唱して始まりました。日本の周産期医療が進歩してきたこともあって、妊産婦死亡は非常に少ないんですね。数は少ないんですが、高齢化出産とか合併症妊娠とかも増えていますのでゼロではありません。まあ、お産と言えば昔は命がけだったようなことですから、今でも年間約60名ほどの妊産婦が周産期に亡くなるんですね」

村重
「皆さん、ほとんど考えてませんけれど、実際には今でも年に60人ぐらい亡くなっている」

松村
「実際はですね。数は少ないんですが、その60人のご家族にとっては、出産という喜ばしい場面で、お母さんの死亡という予想しないことに直面するわけですね。ご主人は、奥さんを亡くしたという悲しみも十分に癒えないまま、生まれた赤ちゃんの世話をしなければならないという、非常につらい状況に置かれるわけです。ところが公的に救済する制度がないんです。ご遺族の方がどうすればいいのかというと、訴訟するしかない状況に追い込まれてしまうわけですね。そうやって訴訟に行かざるを得ない状況になる前に、まずご遺族の支えになりたいということなんです。

日本の周産期医療は非常に安全な状況にはなってきているんですけれど、死亡をゼロにすることはできません。そして、周産期医療の場合は瞬時の判断が求められますので、後からすれば、こうすれば良かった、ああすれば良かったというのが出てくるわけです。その時その時、限られた人手の中でベストと思ってやっていても、後で結果が悪かったということになりますと、ご遺族の方としては、そこのああすればの部分を責めたいのは当然です。どうして救えなかったんだ、ということになります。医療側も悲しい結果から、ああすれば良かったこうすれば良かったと反省する面もあるわけですけれど、いちいち裁判という、お互いに責任を糾弾し合うような形でやってしまうと、産婦人科医になりたいお医者さんがどんどんいなくなってしまうということも起きます」

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