中村利仁の社会の中の医療

的外れな批判

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2011年08月04日 05:12

 日本医療メディエーター協会という団体があります。

 医療紛争の前段階では、患者さんと医療機関との間の対話が断たれることが珍しくありませんでした。医療機関側の担当者が、患者さんからの厳しい批判に如何に接するかを知らず、しばしばこれを途中で放り出し、遂には自身が精神的に追い詰められて異動を希望し、あるいは辞職してしまうことも珍しくありませんでした。

 医療メディエーションは、医療機関担当者にこの対話の維持のための方法論を提供するためのスキル・トレーニングシステムです。

 自分は北海道でのこの普及の努力に関与しており、医療メディエーターの認証を行う日本医療メディエーター協会の北海道支部(任意団体)の設立・運営のお手伝いをしてきました。

 医学書院の定評ある週刊紙「週刊医学界新聞」に、おそらくは日本の医療メディエーションについての知識不足によると思われる、誤った批判が掲載されました。日本医療メディエーター協会から団体としての名前で反論が出されており、許可を得て、以下に転載させていただきます。


***


ローズマリー・ギブソン
「医療事故において医療メディエーションが担う役割はあるか」(『週刊医学界新聞』 第2939号掲載)をめぐって
http://jahm.org/pg177.html


医療メディエーションについて触れた標記の論稿が『医学界新聞』に掲載されました。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02939_03

 そこで示された「医療事故後の対応において前提とされるべき重要な理念」は、まさに我が国で広がりつつある医療メディエーションの理念と軌を一にするものであり、常に医療メディエーションの教育・実践において強調されているものとまったく同じです。我々の医療メディエーションの理念の再確認に有益で有り、皆さんにも共有していただきたいと思います。

 そこで強調されているのは下記のような諸点です。

・明らかになった事実は担当医あるいは責任者が伝える
・メディエーターが代理したり肩代わりするのでない
・その場限りの対応で終わらせない
・家族・患者は継続的なケアを必要としている
・医療者自身にもまた,癒しが必要
・誠実な対応のみが患者家族・医療者双方にとって癒やしとなる
・解決を急がず,継続的な会話を

 これらは、まさに我が国で展開されつつある医療メディエーションの理念と実践の描写そのものであり、医療メディエーションを推進しつつある者として、非常に勇気づけられる論稿であるといえます。

 医療メディエーションの研修を受けた方はもちろん、その解説記事などを読んだ方なら、誰でも、ローズマリー・ギブソン氏の考えるあるべき理念を具体化するモデルこそ、我々の医療メディエーションであり、常にメディエーター役割の目標理念として強調されている点であることは一読しておわかりかと思います。

 残念なのは、著者が日本の医療メディエーションの理念やモデルをご存知でなく、アメリカ的な発想で、単純に「患者と医療者の間に割って入り肩代わりする存在」であるかのように捉えておられる点です。これは、我が国の医療メディエーターの働きとはまったく異なることは言うまでもなく、むしろ最悪の関わり方として否定されているものです。

 我が国の医療メディエーションは、この著者が推奨する「患者家族対応の理念」を、まさに現場で体現すべく、現場の医療者・患者・被害者の方々の指摘を参考に、独自に工夫され練り上げられてきたまったく新たな倫理的考え方であり、モデルです。海外に比肩するもののない、この論稿で示されたこと以上に、精緻で微細な倫理的配慮を伴う独自のモデルとしてそれは成長してきています。

 この点を除けば、著者の示す患者家族対応の理念は、日本の医療メディエーションの理念そのものであり、今後の医療メディエーションのいっそうの推進のための力強い応援にほかなりません。今後も、我々としては、この理念を医療現場に広げるべく、努力を重ねていきたいと思います。

日本医療メディエーター協会


***

(転載以上)

マスメディアによる人格攻撃ーあるいはオッカムの剃刀の限界

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年04月28日 11:03

【衝撃事件の核心】白い巨塔で看護師に一体何が… 京大病院インスリン事件
産経ニュース 2010.4.24 07:00

 スジが通らない仮説に基づいて捜査した警察、それをよく吟味もせずに機械的に公訴した検察官の主張をマスメディアが丸呑みし、被疑者に人格異常があるかのように、そしてそれが原因となって異常な行動に出たと報じるのは、いただけません。

すばらしい!

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年04月21日 16:02

きび談語:「代替医療のトリック」(新潮社)について書いたところ… /岡山
【石戸諭】
毎日新聞 2010年4月21日 地方版

 些少なりともお役に立ちたいものです。

 ただ、新聞もテレビも速報性の追求という宿命があり、科学的厳密性の検証が早々素早くされないことを考え合わせると、事前にチェックするのは困難かも知れません。

 事後のチェックと素早い修正によって目的の達成は可能でしょうが、記事の体裁など、ちょっと相談が必要かなと思います。

 それはそれとして、こういう見識ある記事に接することができて、とてもうれしいです。

検察官のシナリオがおかしい

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年04月10日 18:54

京大病院看護師を精神鑑定へ インスリン投与事件で地検
asahi.com 2010年4月7日16時 14分

 以前のエントリの続報です。

 どう考えても辻褄が合わないのは警察と検察官が書いた行動の説明の方でしょう。そう、動機よりも行動です。

(以下再掲)

1)そもそもインスリン投与がされていない患者さんに大量のインスリンを、

2)吸収の確実な皮下注射ではなく、不確かな経静脈で点滴(あるいはワンショット)投与し、

3)指示も出ていない血糖測定を何度も行い、

4)しかもその結果を必要もないのに偽って看護記録に入力した。

粗雑な議論

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年03月15日 17:01

 サラリーマン本人などが加入する健康保険に対する請求の審査を行う特別な会社(特別な法律によって全国ただ一つ設置されている一種の特殊法人)に、社会保険診療報酬支払基金があります。

 因みに、ここには分散した基金として7千億円近い現金・預貯金などがプールされています。

 この支払基金の発表によると、請求に対する減額分が全て不適正あるいは過大請求とされているようですが、こんな粗雑な議論が許されて良いとは全く思いません。

診療報酬の不正見抜く力の差、都道府県で最大4倍
(友野賀世)
asahi.com 2010年3月15日15時9分

 医療機関から見ると減額こそが不当であるという視点が欠落しているからです。

 実際、ちょっと調べれば、これが訴訟となり、減額不当の判決が確定したのあることも容易に知ることができます。

 朝日新聞の記者も発表をそのまま記事にするだけでなく、背景を少し調べてみては如何でしょうか。

医者にプライバシーはないのか?

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年03月07日 01:41

平成22年2月
日本医師会 第Ⅺ次生命倫理懇談会
[PDF]「高度情報化社会における生命倫理」 についての報告

 全体として非常に勉強になる報告書です。

 しかしながら、「医師によるインターネット言論について」(P15〜20)の項の記述だけは規範と現実等のバランスが取れて居らず、医療と医学研究の実際も無視したものであり、いただけません。

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医療従事者の別件逮捕:自白は信用できるのか?

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年03月06日 09:29

 京都大学医学部附属病院入院中の患者さんが高インスリン血症による低血糖に陥っていたとされた問題です。低血糖の状態にあったにも関わらず、正常血糖値として電子カルテに記録したとして看護師が逮捕・送検されました。この事件はいわゆる別件逮捕(勾留)であり、この看護師について大量インスリン投与の疑いでも取り知れべが為されていると既に報道されています。どうやら物証が乏しい中、自白を目的とした勾留が行われているようで、被疑者の弁護人二人から、特別の申し入れが行われたようです。

京大病院看護師逮捕 「取り調べ全部録画を」 弁護士、地検などに申し入れ
(2010年3月6日 読売新聞)

 留置場内での身の安全も心配です。

マスメディアの雄弁

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年03月01日 17:27

 雄弁とは言葉だけではないといういい教材になります。

奈良の妊婦死亡、遺族請求棄却 大阪地裁「担当医に過失なし」
2010/03/01 16:21 【共同通信】

インフルエンザ対策見直しで一歩前進

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年02月27日 17:59

 珍しく反省が行われているようです。

新型インフル:帰国者対策重視で対応遅れ 厚労省まとめ
【清水健二】
毎日新聞 2010年2月26日 20時52分

 しかしながら、追跡自体は感染源特定や感染力の推定などのために今後とも必要です。今回の関西での集団発生は、どうやら無症候性の感染者から起きたのであろうと推定できているのは、皮肉なことにこの追跡調査があったからでもあります。

 都道府県等の窮乏化した財政の中で保健所の人員をどう確保していくのかは、重要な問題です。

 もちろん、これを機に地方厚生局等の地方出先機関を肥え太らそうという主旨であるなら、それはスジが違うとしか言いようがありません。

法令遵守と患者死亡

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年02月26日 15:05

 このブログで何回か取り上げてきた、いわゆる奈良県・山本病院事件での肝切除患者死亡事件で、手術助手を務めた医師が留置場内で死亡されました。

 ご冥福をお祈り申し上げます。

留置管理は「適正」 山本病院事件・容疑者死亡
asahi.com 2010年2月26日

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またまた患者死亡で医師逮捕

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年02月06日 12:58

 以前、NHKの報道に関して当ブログのエントリとしました奈良県郡山市の山本病院事件ですが、詐欺罪で実刑判決を受け、控訴中である同院理事長が、元同院医師の一人と共に、業務上過失致死罪の疑いにて奈良県警察本部に逮捕されたそうです。

 医療行為に伴う業務上過失致死容疑での逮捕については、その必要性などについて議論のあるところです。そして、その容疑の内容は、全国の外科医全てに対して破壊的影響を与えるます。医療崩壊を一層進め、まもなく、大学病院ですら必要な手術が受けられなくなります。

奈良診療報酬詐欺:山本被告と医師逮捕、患者出血死関連で
【上野宏人、大森治幸】
毎日新聞 2010年2月6日 10時13分(最終更新 2月6日 12時33分)

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日本では歩け、歩け!

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2010年01月23日 20:47

 まずは新聞記事のご紹介から。

一歩あるけば医療費0.0014円節約 厚労省試算
asahi.com 2010年1月23日15時6分

 メタボ検診とは全く逆の考え方に基づいた記事です。

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MRIC:臨時 vol 346 「事業仕分けと御用学者」

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年12月03日 23:25

 11月17日午後、1時間以上遅れて始まった国立保健医療科学院の事業仕分けで、
驚いたことに医療政策の研究者の個人名が上げられて事業の是非を巡る議論が行われ
ました。

(以下、下記でお読み下さい。)
http://medg.jp/mt/2009/11/-vol-346.html

地域医療と地方空港

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年10月21日 00:52

 ローカルな話題で恐縮です。

 札幌市の中心部から北東約6キロに、丘珠空港(札幌飛行場)があります。1500mの滑走路が一本の小さな官民共用飛行場です。プロペラ機の定期便が運航されており、北海道内の函館・釧路・根室中標津・女満別・稚内の5つの飛行場と札幌市内を結んでいます。

 観光シーズン等はそれなりに利用されているのですが、各便とも普段はあまり満席になることもありません。

丘珠撤退、市議会に説明…全日空「方針撤回難しい」
(2009年10月20日 読売新聞)

 ということで、ANAがこの空港から撤退し、市内からJRで36分の千歳空港に集約化の方針を打ち出しています。

 実は、この小さな空港から行き来する小さなプロペラ機達が、北海道の地域医療の一端を支えています。このままなら廃止はやむを得ないというのが航空会社の判断のようですが、その影響を最小化する努力がされる必要があるのだろうと思います。

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現場を知らない者が母子の生命を危険に陥れる

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年08月14日 15:56

総合周産期センター:「母体救命」要件に 整備指針改正
【清水健二】
毎日新聞 2009年8月14日 2時30分(最終更新 8月14日 3時05分)


 記事が忠実に発表内容を表現できているとしての話ですが、人命を何とも思わない冷酷な政策がここにはあります。

> ベッド数に応じて下限が決まっていた看護師数も「必要な適当数」と改めた。

 NICUにベッドがあること以上に、ケアに当たる看護師のいることが大切なのに、そしてNICUでは今でも看護師不足で危機的状況にあるのに、今よりさらに人手が薄くなっても患児を引き受けろというのでしょう。

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社会的信用の毀損:他人事のNHK

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年07月07日 15:13

 またまた続報です。

NHKニュース
診療報酬不正受給 病院閉院へ
7月7日 14時33分
http://www3.nhk.or.jp/news/t10014102241000.html#
(リンクはすぐ切れるだろうと思います)


 遂に病院は閉院となりました。

 「…病院としての社会的な信用を失った。…」

 さて、NHKが繰り返した不当かついい加減な報道は、この病院の社会的信用に対してどのような影響を与えたというのでしょうか。

 確かに医療法人の理事長と病院事務長が逮捕されたということ自体、病院の社会的信用を大きく毀損したことでしょう。ですが、警察に逮捕された人間だからといって、NHKがあることないこと言い立てて良いというわけではありません。

 NHKの記者は全く他人事ですが、いい加減な報道を繰り返してこの病院の信用を大きく損なったたことの責任感が記事から全く感じられないのはいったいどうしたことでしょうか。

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死亡診断書の書式:NHK記者は見たことがないのか?

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年07月04日 00:47

 一昨日のエントリの続報です。

NHK ニュース
病院 うその死亡診断書作成か
7月2日 18時1分
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014016471000.html#
(リンクはすぐに切れるだろうと思います。)

「…手術室でカテーテルを使った心臓の検査を受けている最中に出血して死亡しましたが、病院は、死亡診断書に、男性が病室で体調が悪化して死亡したという記載をしたということです。…」

 医者でも死亡診断書を書いたことがない人は珍しいだろうと思います。一度でも書いた人であれば、院内の死亡場所を手術室やカテ室や検査室なのか、あるいは病室なのかを記載することは通常しないということはすぐに分かるでしょう。

[PDF]死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル 厚生労働省大臣官房統計情報部・医政局
http://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/dl/manual.pdf

 当然に死因は記載しますが、死亡した部屋の種別まで記載するということはそもそも不自然なのです。死亡場所の記載は、医療機関の場合はその所在地までなのです。部屋まで書くということは異常事態です。病死及び自然死の場合は通常行われません。

 記事文面からはNHKの独自取材であった様子が伺われます。しかし、やはり医者に聞いてみるという手続きが行われたのかどうかが疑わしい記事です。

 また、こんなことは医師免許を持っていれば、本来は当然に知っておくべき知識で、死亡診断書を書いた経験の有無の問題どころか、医学部の学生でも教わっている程度のレベルの低い誤解です。

 ところが、この報道に関係したNHK記者は知らないだけでなく、医者に聞いてみるという当然の手続きを端折っているようです。

 このニュースを視聴した国民の皆さんは、病室の種別の書かれていない死亡診断書を手渡されたとき、医者や医療機関に深刻な疑念を抱くことになるでしょう。

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負荷心電図というものがある:警察とNHKは知らない

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年07月02日 15:38

 NHKの報道です。

NHK ニュース
薬投与後に診断し検査の疑い
7月2日 12時27分
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014004491000.html
(リンクはすぐに切れるだろうと思います。)

「…患者に対し心拍数をあげる薬を投与したりルームランナーのような装置の上を走らせたりしたうえで、心電図をとって狭心症や不整脈などと診断し患者から検査の同意を取り付けていたということです。…」

 この検査を負荷心電図と言い、日常、多くの医療機関で普通に行われています。不正でも何でもありません。

 こんなことは医師免許を持っていれば専門外であっても当然に知っておくべき知識で、現場経験の有無の問題どころか、医学部の学生でも知っている程度のレベルの低い誤解です。

 ところが、この報道に関係した警察官とNHK記者は知らないだけでなく、医者に聞いてみるという当然の手続きを端折っているようです。

 今日、このニュースを視聴した患者さん達は、明日から医者や医療機関に深刻な疑念を抱きながら負荷心電図の検査を受けることになるでしょう。

【追記有り】

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国民一般に訴えかけてこそ意味があるのでは

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年05月24日 11:35

 以前、タミフルの承認取り消しと回収を求める動きがあり、マスコミでも非常に大きく取り上げられていました。

[PDF]承認取り消しと回収を求める要望書
NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)
2007年3月26日

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Re: やっぱりわからない外来管理加算(2)

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年05月01日 18:30

 外来管理加算が国民の外来受診回数を減少させるための方策であることはわかっていただけたかと思います。では、なぜに再診料そのものの増減ではなく、別途の加算として設計されねばならないのかについて考えてみましょう。

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Re:やっぱりわからない外来管理加算(1)

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年04月30日 18:17

 堀米さん、こんにちは。

 再診料と○○管理料や××診療料の問題は、日本の診療報酬制度の構造に由来するもので、なかなかに対策立案は複雑になります。

 これら点数の目標自体は簡単で、医療機関側については算定の頻度に制限を加えることによって受診回数を減らす方向での努力を強いるというものです。

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損得勘定をしっかりと

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年04月28日 15:32


 車を全く運転しないのに自動車保険に入る人はほとんどいないでしょう。

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パブコメ「臨床研修の見直し(案)について」を提出しました

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年04月16日 16:53

 いつも大変お世話になっております。

 今般取りまとめられました「医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令の一部を改正する省令及び関連通知の一部改正(案)について」につきまして意見がありますので、下記の如く提出いたします。


***

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社会が求める外科(第109回日本外科学会定期学術集会)

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年04月03日 12:19

 福岡に来ています。

 表題の通り、日本外科学会が福岡国際会議場ほかで開催されています。

 最後にスクラブしてから既に3年以上経った元外科医の自分ですが、表記のような副題のついた外科学会総会ですので、これは出ないわけにはいかないだろう、というわけです。

 昨日深夜に博多について、今朝からの参加です。

 朝一のセッションの一つ、特別企画1「危機に瀕する外科医療を救うために」では、今枝宗一郎先生(JR東京総合病院研修医)が歴々衆の中で堂々と自説を主張されていらっしゃいました。

 今枝先生のご発表は、研修医の目から見た外科医療の危機への対策の提案を、世代論を用いて語るというものでした。フロアのベテランの先生からも「全面的には同意できないが、ご指摘はよく分かる」とのご発言を頂戴していました。

 若い先生が臆せず堂々と主張を展開する様子を見るのは、実に気持ちのいいものです。

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読売新聞 小林泰明記者

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年03月11日 08:57

 これほど明らかな誤報を打った以上、ジャーナリストの社会的責任として釈明すべきでしょう。できないというのであれば、辞職し、ジャーナリストの世界からも足を洗うべきです。

ロス手術高3死亡 心臓外科医を書類送検
(小林泰明)
(2009年3月10日 読売新聞)

(キャッシュ)


「ただ、警察はすべての医療事故を書類送検するわけではない。重大な事故でも、反省し、再発防止策が取られていれば、書類送検されないケースもあるという。」

【参考】
新小児科医のつぶやき
2009-03-11 送検を考えてみる

バナナについて

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2008年10月07日 22:27

 自分は子供の頃からバナナが大好きです。しかしながら、学者、医者の端くれとして申し上げられることは、以下の2点だけです。

1.いわゆる朝バナナダイエットの効果についての大規模な無作為化比較試験(RCT)の研究論文は、今のところ見当たりません。従って、いわゆる朝バナナダイエットが有効だと断言する根拠はないと考えます。RCTが実行可能な領域であり、早急な検証が待たれます。

2.バナナは様々な美点のある美味しい果物ですが、糖尿病を患っていらっしゃる場合など、一度に大量に食べることが推奨できない方々がいらっしゃいます。たとえば高血糖に至って糖尿病性昏睡等に陥る危険すらあり、いわゆる朝バナナダイエットを行うかどうか、また行うとしても一度に食べる本数などについては、予め主治医の先生とご相談される必要があると考えます。

…以上です。

医療事故調 第3次試案へのパブコメ

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2008年06月08日 03:10

 わざわざ厚労省のホームページからダウンロードしたパブコメをOCRで文字起こししてブログに掲載してくださっている方がいらっしゃいます。「僻地の産科医」先生です。

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JMM 読者投稿編:Q:910への読者からの回答

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2008年05月19日 23:45

                              2008年5月13日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JMM [Japan Mail Media]                  No.479 Extra-Edition
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 読者投稿編:Q:910への読者からの回答
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Q:910】

 4月から「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」が始まり、いろいろな混乱が起
こっているようです。後期高齢者医療制度ですが、高齢化社会の医療制度として、合
理的なものだと言えるのでしょうか。

                                  村上龍
----------------------------------------------------------------------------

 ■読者投稿:中村利仁


 制度立ち上げ時の事務作業の拙劣さが報道され、すっかり悪評が定着した後期高齢
者医療制度ですが、制度本体の問題点を検討する報道は未だあまり多くありません。

 ところが、この制度の合理性を巡る議論は2年前に既に終わったはずの話です。専
門家の間でということであれば、さらにそのちょっと前に終わっています。国会内で
の取り引きや審議も為されました。それなのに特に与党代議士の過半が、ただ小泉改
革の勢いに引っ張られたというだけでなく、本当にどういう内容なのかを全く理解し
ていなかったらしいということが報道されるにつけ、報道内容を疑うと同時に、もし
本当だとしたらどう考えればいいのか、ちょっと途方に暮れている気持ちがあります。

 後期高齢者医療制度自体は、それなりの目的と合理性を持ちます。正確に言えば合
理的と言いうる立場というものがある、ということになるかと思います。

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JMM 読者投稿編:Q:901への読者からの回答

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2008年03月17日 21:24

                              2008年3月11日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JMM [Japan Mail Media]                 No.470 Extra-Edition3

【Q:901】

 経済合理性の観点から考えて、医療費を上げずに、地域医療の疲弊と崩壊を防ぐ方
法というのはあるのでしょうか。

                                  村上龍
----------------------------------------------------------------------------

 ■読者投稿:中村利仁


 御質問は、医療への支出を現状に抑えるか、あるいはむしろ削減することによって、
一般的な医療サービスの供給がニーズに対して充分な水準にあるように維持する経済
合理性な方法があるか否かということになるだろうと思います。

 回答としては、可能性はあるが有効性が証明された方法はあまり多くない、という
事になるだろうと思います。

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愉快犯

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2008年02月10日 11:43

 地域医療の崩壊が各地で進んでいますが、これをネット上の掲示板やコメント欄で積極的にあおり立てて楽しんでいる一群がいるようです。

 悪質です。地域住民にとっては死活問題ですのに。

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JMM読者投稿:「医療格差」の解決に必要な考え方とは?

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2007年06月29日 18:45

====質問:村上龍============================================================

Q:816
 参院選の各党のマニュフェストには、「医療格差」への取り組みが盛り込まれるようです。医師・看護師の不足、公立病院の閉鎖など医療における地域格差の解決には、どのような考え方が必要なのでしょうか。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 読者投稿編:「医療格差」の解決に必要な考え方とは?

 ■ 読者投稿:中村利仁

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JMM読者投稿「医療の産業化」について

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2006年10月13日 19:25

====質問:村上龍============================================================

Q:732
 10月1日付の読売新聞は、ある東大教授の「医療の産業化」をテーマにした小論を掲載していました。財政負担が軽く、かつ経済格差を生じない医療の産業化というものがこの社会に存在するのでしょうか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■読者投稿:中村利仁

 以下、医療政策・医療経済の研究者の間では常識に類するところからお話をさせていただきます。

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助産師は足りているか?

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2006年08月31日 12:47

 まず、人口動態統計から、出生場所の推移をグラフ化した。

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医療サービスにとって医療費とは何か

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2006年07月28日 18:43

 サービス業の特徴には、共通して、非貯蔵性、不可逆性などが上げられます。医療サービスも例外ではありません。

 医療サービスは医療者と患者さんとの間で生産されると同時に消費されます。予めヒマなときにサービスを作って貯めておくことはできません。また、一度提供した医療サービスを、患者さんから取り返すことも不可能です。景気循環の元となると言われる不良在庫は、サービス業の世界では存在しえないのです。

 であれば、一国の経済のようにある程度閉鎖された系では、医療に限らず、充分なサービス提供者がいて、サービスを必要とする人がいるのであれば、外部不経済のない限り、これを制限することには経済的合理性がありません。そして、医療サービスに希少資源が移動しても、ほとんど外部不経済は生じないことが予想できます。

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医療は水に浮かぶ船か?

投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2006年07月10日 15:21

 こんにちは。
 外科医出身の研究者の中村です。医療政策、医療経済、医業経営を専攻しています。

 最近、医療というのは社会という水に浮かぶ船のようなものかと考えています。

 いくらよい医療体制を作ろうと思っても、水に船を浮かべる余力がなければうまく行きません。あまりに海が荒れてしまえば、船は木の葉の如く沈んでいきます。また、医療という船がいくら良いものでも、神ならぬ身の人間が作り出す以上、どこか欠けたものとなることは避けられません。沈まぬ船は望むべくもありませんから、これをどう上手に漕いでいくかが国民や政策立案者に問われています。

 船に乗り込んだ医者、看護師をはじめとした医療者、事務員や経営者、あるいは政治家や官僚にとっては、効率のためにはできるだけ多くの患者さんを運びたいところですが、あまりに積みすぎれば船は容易にひっくり返ることとなります。天候や海の荒れ具合を見ながら、適切な喫水を塩梅して船出する必要があります。

 自分の仕事は、船の周りをぐるぐると回りながら、船が沈みかけていないか、あるいはあまりにも積み荷が少なくないかを観察するようなものかも知れません。

 よろしくお願いします。

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