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「正体不明」の3800億円―柔道整復師の年間保険請求額、医療費議連での議論

 「整形外科医が行う運動器などのリハは年間5600億円。一方で柔道整復師による捻挫などへの施術には3800億円が使われている。これをどう見るか」「柔道整復師への保険給付費が日本の医療統計のどこに入っているのか、何度厚労省に聞いても分からない。正体不明の数字だ」「接骨院も整形外科も、患者にとっては両方に『先生』がいる」―。腫物に触るように扱われ、医療界の"ブラックボックス"とされる柔道整復師の保険請求問題が、にわかにできたばかりの民主党の医療議連で話題に上がった。(熊田梨恵)

 先月末に発足した民主党の国会議員から成る「適切な医療費を考える議員連盟(桜井充会長・参院議員)」は3日に会合を開き、日本臨床整形外科学会などからヒアリングを行った。「事業仕分け」で年間収入が「4200万円」と示された整形外科医の「現状」に対する反論が主な内容だったが、国会議員との意見交換では思わぬ方向に話題が逸れた。医療界では誰もが腫れ物に触るように扱う、整形外科医と柔道整復師の間にある問題だ。
 
 接骨院などにいる柔道整復師が行う、急性期の打撲や捻挫、応急手当としての骨折や脱臼への施術は保険請求が認められているが、通常の診療報酬請求手続きとは違い、療養費の「受領委任払制度」での手続きになる。この制度が問題で、桜井会長が議論中に指摘したように中身のチェックができないとして「不正の温床」になっているとの批判が多い。この受領委任払い制度での保険請求額は2006年度には約3200円と推計され、保険請求の範囲を拡大解釈した不正請求問題が報道でも取り沙汰された。このような制度が必要になったのは、制度が始まった1936年当時は整形外科医が不足しており柔道整復師による施術が必要だったなど、さまざまな歴史的背景があると言われている。
 
 また、この制度では、患者は医療機関と同じように自己負担額を支払うだけになるため、通常の保険請求との仕組みの違いが分からず、整形外科「医療」ではなく柔道整復の「施術」を受けているという区別がつかないとして医療界から批判が上がっている。さらに、柔道整復師による慢性疾患への施術は生命に危険が及ぶとして、日本整形外科学会は02年に、業務範囲の順守や受領委任払制度の廃止を求める要望書を当時の厚生労働大臣に提出していた。
  
 このほか、業界団体の利権問題もささやかれる。厚生労働省は03年に柔道整復師らが「ほねつぎ」「接骨」などを広告できるよう制度改正の準備を行っていたが、「『慢性期疾患は柔道整復師の保険適用ではないことを明示することを義務付けるべき』等の慎重な御意見」(厚労省ホームページより)があったことなどから、見送られていた。

 国内で働く柔道整復師は約4万4000人(08年厚労省調べ)で、接骨院の過当競争や、養成校卒業生の就職難などの問題もある。整形外科医療だけでなく、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師など業界的に近い団体も様々ある。

 柔道整復師に関するこれらの問題はあまりに複雑で利権も絡むため、医療界の"ブラックボックス"と言われている。
 
 
 議連での意見交換で、柔道整復師に関するディスカッションをお伝えする。

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